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コーギーとお昼寝

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友情の外側

「あの人、ほんと最後まで私になんにも言わないで逝っちゃったわよね」
姐さんがぽつりとシードルを飲みながらつぶやく。
平尾さんのドラマを2人で見ながらあの頃を思い出せば、そう言いたくなる気持ちもわかる。
「姐さんも聞いて無かったんか」
「今にして思えば私に言ってしまえばあなたにも伝わってしまうと思ったんでしょうね」
「……俺らに言うてくれても良かったのになあ」
人とは違う時間を生きる自分と姐さんは人を見送ることには慣れていた。
それにあの人には信頼されていたと俺も姐さんも思っていたんだろう、そうでなければずっとうちのチームに関わり続けるようなことはないと信じていた。
「本当よね。まああの人からすれば人間じゃない私やスティーラーズに伝えたら空気が変わるとでも思ったんじゃない?」
「あの人の発想やなあ」
こんな事今言ったところで本人からの返事はない。
だから愚痴ばかり漏らしながらドラマのあの人によく似た姿を見つめるしかできないのだ。



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スティーラーズと神戸ネキ。 スペシャルドラマ「友情」見ました……?

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秋花火

打ち上げ花火は空気の澄んだ秋が一番美しい、と教えてくれたのは誰だっただろう。
だからその美しい花火をファンと一緒に楽しむ企画が出てきた時になんとなくイーグルスに花火の誘いを掛けた。
『お気持ちは嬉しいんですけどその日は練習試合後なので体力的にちょっと……』
(練習試合か、練習でも試合後の疲れは尋常じゃ無いしな)
なら仕方ないと諦め『分かった』と返信をしたのが今月の頭。
そして当日になってみると、家族や友達連れで見に来る人々をほんの少し羨ましく思う自分に気づいた。
(誰も都合がつかなかったのは如何しようも無いからなあ)
あの後、近しい身内に話を振ってみたが誰も都合があわなかったので今日は一人だ。
花火を見に来る選手スタッフも家族連れが多く、一人でぼうっと花火を待っているのは自分くらいだ。
一人でも二人でも花火は花火だが一人でいると浮いている感じが否めない。
小腹を満たすのに購入した唐揚げをビールで流し込んでいると、スマートフォンが着信を知らせてくる。
(テレビ電話?然もイーグルスからか)
不審に思いつつも電話をつなぐと『こんばんわー』と手を振ってくる。
ベッドで寝そべっているらしいイーグルスに「急にどうした?」と聞いてみる。
『大した事じゃないんですけどぉ、声が聞きたくなりましてぇ』
普段よりも甘え気味の言葉遣いや微かに赤い頬を見て気づいた。
「試合後に酒でも飲まされたか?」
『ブルーシャークスくんがごはん奢ってくれたんですけどねぇ、水と焼酎水割り間違えて飲んじゃいまして~』
「其れでか」
『おうちまでは自力で帰ったんですけどそういえば今日デートの約束あったなーって、でも飲んじゃったから車使えないのでお電話しました~』
イーグルスは下戸ですぐに酔っぱらってしまうので滅多に酒を飲まないが、この調子なら本当に間違えて一口二口飲んだ程度なのだろう。
ほろ酔いの表情でゆるく笑うイーグルスがかわいいので少々表情が緩む。
「今日は多摩川の花火大会でな、イーグルスが暇ならうちで一緒に見ないかと誘ったんだ」
『そうだったんですねえ』
「ああ、」
言葉を続けようとした瞬間、花火の打ちあがる音がする。
咄嗟にスマホのカメラを切り替えて花火が上がるのをカメラに映し出す。
秋の澄んだ夜空に大輪の花が咲くとイーグルスが『たーまやぁー』と嬉しそうに声をあげた。
周囲にいるファンや選手スタッフも花火に感嘆の声を上げ、嬉しそうにスマホのシャッターを切っている。
『はなび、きれいですねえ』
ふわふわとした声の酔っぱらいがそう呟く。
選手やファンとみる花火は美しい。
でもライバルであり可愛い後輩と一緒に見る花火はまた違う美しさがそこにあった。



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ブラックラムズとイーグルス。
公式の花火鑑賞動画から思いついたネタでした。

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君だけのいない庭

合宿地がジャパンベースになったのは偶然だった。
予算とか仕事の予定の都合を勘案したらここになったってだけのこと。
(でも、ここにレッドスパークスがおらんって不思議な感じするな)
かつてレッドスパークスの暮らしていた場所を協会が買い取って、合宿用施設に建て替えられてまだ半年ちょっと。
どこかの物陰を覗いたら『バレちゃったですネー』なんて笑ってそうな気がしてしまう。
それをブルースが『隠れきれとらんかったたい』なんて叱りつけて、それを自分がまーまーなんて言いながら二人を宥めるのだ。
ちょっと前までは日常的にあった光景は、もう見れない。
ここはもうレッドスパークスの家ではなくてラグビー協会運営の合宿施設なのだ。

「……ほんと、あいつら俺より先に死によってなあ」

普通なら年長の自分が先に死ぬべきだったろうに、自分よりも遥かに若かった二人はここを去ってしまった。
下手に何かを口走る程若くはない、だけど年長者としてそれくらいの文句は許されたっていいだろう。


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キューデンヴォルテクス先輩の話。
先輩が今日からジャパンベース合宿と聞いたら書かずにいられなくてだな……

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雨の日にはコーヒーを

秋雨の音で目を覚ますと、時刻はもう10時過ぎだった。
ワールドカップを見た後に寝たせいで起きるのが遅くなっても、今日は休日なので叱られる理由がないのは幸いだった。
いつものようにお湯を沸かし冷凍パンをトースターに入れて、今日の豆を選ぶ。
(……ブランビーズさんに貰った豆にするか)
この間の練習試合の時、お土産としてキャンベラで人気のコーヒー豆を貰った。
サンゴリアスも札幌での試合の時に同じようなものを貰っていたらしいので、きっと配っているのだろう。
一人前の豆を電動ミルで細引きにしているとポットのお湯が沸いた。
ステンレスのフィルターに粉を入れてお湯を注げばコーヒーの香りが湯気とともに立ち上る。
(此れのお陰で飲みたいときの手間が少し減ったな)
フィルターの在庫確認をしなくて済むようになったのが地味に大きい。
コーヒーが入った頃にはパンも焼けている。
焼きたてのパンには昨日の残りのトマトとレタスとチーズを挟み、ドライフルーツ入りヨーグルトの小鉢を合わせる。
ちょっと遅めの朝食にしては充分だろう。
「頂きます」
手を合わせてパンに手を伸ばす。うん、いつも通り美味い。
タブレットでニュースをザッピングしていると思い出すことがあった。
(そういえばライナーズ対レベルズ戦はどうなったんだったか)
ふと思い出して調べるとライナーズは負けていた。そういう事もあるか……。
しかしレベルズと楽しそうにしてるので慰めは不要そうだ。
他の面々もワールドカップ帰りの選手を出迎え、リーグ開幕の準備を進めている。
「我も頑張らねばな」
そう呟いてタブレットを閉じた。



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ブラックラムズ先輩の休日

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北の大地の散歩道

試合の遠征とはいえ、せっかく北海道まで来たので後泊して散歩しようと最初から決めていた。
(これで月曜仕事じゃなけりゃなあ~!)
有休使うって手もあったけど、貴重な有給はタイミングを見極めて使いたいと思って結局申請しなかった。
昨日は昼にラーメン、夜にサッポロビールからの締めパフェ。今朝はスープカレーを食べてとうきびをつまみ、お昼はジンギスカンと食いたいもの全部食ってきた(もちろん観光もした)
そうして札幌を満喫して、最後にやることと言えば。
「お土産だよなあ」
札幌遠征の話をしたら『うちの妹にお菓子買って来てくれないか?』って先輩に頼まれてたから部レイブルーパス先輩とうちの親兄弟の分は確定。
ブラックラムズ先輩にも釜石遠征行くって言うから瓶ドン頼んじゃったので買っていくべきだろう。
誰に何を買っていくか?と言うのは案外難しい。
「ブラックラムズ先輩はまあコーヒーに合わせるわけだし、ロイズかなあ」
ポテチにチョコをかけたやつをかご3つ放り込む。あ、2つはうちの家族の分ね。
あの人は食い物の嗜好が割とわかりやすくてコーヒーに合うものなら割と喜んでくれるんだよな。チョコとカレー系はコーヒーに合うしどこにでもある。
「問題は先輩なんだよなあ、先輩の妹さんとかよく知らんし……」
先輩には血の繋がりはないけど可愛がってる妹さんがいる。確かブレイブルーヴ、だっけ。
顔は合わせたことあるけどあんまり話したことはないんだよなぁ。
それに先輩って嗜好が酒と肉に寄ってて甘いものを自主的に食べる人でもないから、先輩の妹さんの嗜好が全く予想できないのだ。
うろうろとお土産物コーナーを見て回ると、サーモンチップスなるものが目につく。
「へえ、チップス状の鮭燻製……ワイルドナイツ好きそうだな」
先輩はつまみは最悪塩でいいって人だからつまみにこだわらないけど、ワイルドナイツは結構つまみ系が好きらしく飲みに来た時にちょっといい乾物とか出すと喜ぶんだよな。
誰かが飲みに来た時にさっと出せるおつまみにもなりそうだ。
「これも買ってこ……うん?」
先輩からラインの着信があって開いてみれば『お前に頼んだお土産の件だけど、うちの妹が食べたがってたお菓子分かった』と言い出した。
『教えて』
『ハスカップジュエリーってやつ』
『テレビで見たことある、売り切れてたらハスカップ系の別のやつでいい?』
『それで頼む、あと俺に酒を』
了解のスタンプを送ってから小さくため息が漏れた。
「……ここで自分のお土産は酒って指定するのが先輩だよなあ」
とりあえずサッポロクラシックと地ビールでいいかな。



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サンゴリアスの札幌遠征。お土産は大体実在してます。

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