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コーギーとお昼寝

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最後のゲームは目前に

*短編集です

・ミラクルセブンは諦めない(グリーンロケッツ+ヒート)
「う゛あ゛ー……」
試合終了の瞬間、張りつめていた神経がぷつりとほどけて脱力する。
どうにか掴み取った残留の可能性にどうやら相当やられていたみたいだ。
「グリーンロケッツ、何その声」
隣にいたヒートが呆れたようにそう聞いてくる。
「まずは1勝だなと思って」
残るためには勝利を積み重ねていかなくちゃいけない。
明日のアークスも、スピアーズも、みんなそれぞれもがいている中で何を言ってるんだと言われそうな事実だ。
でも勝利の積み重ねの上にしか残留の2文字は手に入れられない。
「俺だって昇格かかってるんだからね?」
「そりゃそうだけどさ」
「次勝って昇格するから」
まるでもう確定された事実のようにヒートが口走る。
「違うよ、このミラクルセブンが残るんだから」

・今日の友は明日のライバル(サンゴリアス+ブレイブルーパス)
「まさか花園で府中ダービーとはねえ」
先輩が呆れたような困ったような声でビールを飲み干すと「ほんとだよね」と苦笑いをする。
今年3度目となった府中ダービー。
せめて秩父宮開催ならなあと言いたいところだけど、なっちゃったものは仕方ない。
「まあ花園も久しぶりだから良いけどさ」
「そういや俺も久しぶりかも、あそこの芝の上行くの何年ぶりだろ?」
「ライナーズが降格する前が最後じゃないか?」
お好み焼きを肴にビールを飲みながらこうして普通に話していても、明日はライバルとしてあの芝の上で出会う。
「楽しみだね」

・赤い風は夢を見た(レッドハリケーンズ)
分かっていても寂しいわあ、と呟いてみたところで事実は変わりようがない。
金曜日の夜に改めて見返すD3降格の審査結果にため息を履いてみる。
「ちゅーか、これでシャイニングアークスのドアホが降格したらどうするんやろうな?」
おじいさまと両親の判断は絶対、審査会の結果も覆る事は無い。
けれどまだどこかでこれが夢だったならと思ってしまうのは自分の心の弱さだろうか。
「……まあ、さっさと戻ったればええだけやろうけどな」
シャトルズがそう宣言したように自分もそれを夢見るぐらいは許される。

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夢が散れども二人は生きる

「腑に落ちんな」
いつものように黒を纏ったブラックラムズのじーちゃんがそう呟いた。
本当ならファンがつどっていたはずの秩父宮はお詫び文が張り出され、来場してくれたファンには頭を下げるしかできない。
「俺かて腑に落ちんわ、要するに協会のミスやし」
「ミスは誰しも犯すものだが今回ばかりは同意見だな」
特に俺にとって今日は特別な一戦だった。
「きょうがD1でやる最後の試合やったのにな」
再編成によるD3への自動降格が決まっている身にとって、泣いても笑っても今日がD1でする最後のゲーム。
死ぬ訳ではないとしても最後の日にケチついたみたいでけったくそ悪い、というのは飾らぬ本音。
「非公式試合でも組むか?」
「それもええかもな」
魔法瓶から出てきたコーヒーを一口飲みながら、ほうっと軽く一息つく。
ちょっと怒りは落ち着いた気もするが今やるべきことは皆に詫びる事だろう。
「協会への文句は後回しやな」
「ああ、仕事は未だ有るしな」



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レッドハリケーンズとブラックラムズ。
今回の試合中止ホント……協会がクソ……(口癖)

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Adoの歌声を聞きながら

「まだおいは死んどらんぞ」
試合後に着ていたシャツを指差してブルースさんがそんな事を言う。
ブルースさんへの感謝を込めたThanksシャツが気に食わなかったらしく「間違えました?」と聞く。
「あくまでうちは活動休止やけん、5月以降に新しく面倒見るっち言うてくれる人が見つかればすぐ戻る」
この不景気真っ盛りの時代にできるのかも分からないことを口にする。
「さすがにそれは夢見過ぎじゃないっすか?」
「プロが夢見れんでどぎゃんするとね」
当然のような口ぶりでブルースさんが告げる。
(マジでこの人夢見がちのガキンチョのまま死んでくんだな)
親から一度切り離された時の絶望感は知っているけれど、ここまでくそポジティブに生きて行こうなんて思った覚えはない。
まあ今は良いんだけどね?親会社のくくりから外れることで得られた自由も気に入ってるんで?
「ブルーシャークス、おいにありがとうだの尊敬だの言う前に勝ち点よこせ」
「それは無理ですねえ」
すっかり癖になった人当たりのいい笑いに「へらへらしよるな」と叱られる。
うっせえわとがなり立てる歌手のようにまだこの人は足掻くのだろう、本当の死を迎えるその日まで。


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ブルーシャークスとブルース。
私の脳内青さんはこういう感じです。

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君に希望を、僕らに絆を

4月1日、金曜日の朝はずいぶんと肌寒かった。
暖かかったり寒かったりを繰り返す天気が嫌になりつつ、今日は練習着ではなくスーツでうちを出ないとならない。
「ワイルドナイツじゃん、スーツなんて珍しい」
ジャージをまとったアルカスがスポーツドリンク片手に向こうから歩いてきていて、走ってきたんだろうと察する。
「新会社の関係で呼び出されてるんだよ」
「独立したんだっけ?」
「パナソニック系のスポーツチームを全部まとめて一つの会社にしたんだよ、これからその顔合わせ」
「あ、そっか今日から新年度……」
「そういう事。昨日の非公式決勝戦の件も言われそうでめんどくさい」
「非公式決勝戦ってあれでしょ?あんたが庭先を貸してコロナで中止になった決勝戦と同じ組み合わせで試合した奴」
コロナで決勝戦が中止になった高校生たちのために同じ組み合わせで試合を行い、中継もしたあの件はいまだ賛否両論が分かれている。
一般メディアにもいくらか取り上げられているようでうちへの非難の声もある。
「正しいと思ってやったんなら否定も肯定も受け入れるしかないじゃん」
「まあね」
少なくとも俺は安全措置を行ったうえで正しいと思った事をした、そう思っている。
協会の判断を無視したという考えもあるしそれも受け入れなくちゃいけない事だろう。
「アルカスに肯定されると少しは気が楽になるな」
「そりゃーどうも。ほら、仕事行ってきなよ」
ぽんとアルカスに背中を押される。
その触れた手から肌寒い朝を超える元気をほんの少しだけもらうと「いってきます」と応えた。



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ワイルドナイツとアルカス。

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お米の国で待ち合わせ

「さっむ……さすが雪国は違うわ……」
思っていた以上の寒さに羽織っていた上着の前を閉める。
大阪ではめったに積もらない雪がまだ薄っすら残っているのはこの間の寒の戻りのせいなんかなあ、と考えたりする。
「レッドハリケーンズ!」
そう声をかけてきたのはがっつり防寒したスピアーズで、何故かスッピーくんもポケットからこんにちわしてる。
「完全防寒やないか」
「新潟の冬だからねえ、まあこの寒さも俺結構好きなんだけど」
試合を新潟でやると言い出したときは「何でそんな寒いとこ行かなあかんのや!」と言ってしまったが、こういう地方開催ゲームはラグビー振興のためだと言われると拒めない。
(だとしても寒いもんは寒いなあ)
ふうっと吸い込んだ冷たい空気がまだここは冬なのだと伝えてくる気がする。
「さて、レッドハリケーンズって日本酒はイケるほう?」
「嫌いやないけど今は飯の気分」
「ご飯かあ、お寿司とラーメンどっちにする?」
「新潟まで来てラーメンはないやろ」
「こっちのラーメンも美味しいんだよ?ま、レッドハリケーンズが言うならまずはお寿司だねえ」
そう言いながら歩きだしたスピアーズの背中を追いかける。
街角には地元のサッカーチームのポスターとともに今回の試合のポスターも散見される。
こういうのを見るとなんか歓迎されている気がして気分がいい。

(ちーっとはこの辺のラグビー振興に役立てるとええんやけどなあ)

まだ雪の残る街を歩きながら、そんなことを考えている。


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レッドハリケーンズとスピアーズ。
新潟での試合はBS日テレの中継もあるので是非どうぞ。

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