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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

名残

試合や練習のないときは東花園の駅にいる。
駅員として難波行き列車を見送ると赤・黄色・臙脂の三台の自販機が目に入る。
黄色はサンゴリアスの、臙脂はうちのマスコットが印刷された自販機で、もう5年くらいはこの並びだ。
「……レッドスパークスの自販機、まだ残しといてくれとるんやな」
この春にこの世を去ると告げて以降とんと音沙汰のない長身の男を思い出す。
まあ契約の都合とかで撤去されていないだけかもしれないが、こうしてまだあの名前がここにあることを喜ばしく思う。
レッドスパークスに久しぶりに連絡を取ってみようか、という気分になる。
携帯で自販機の写真を撮って『お前のとこの自販機は元気よ』という短いメッセージを添えて送りつける。
ついでにあったかい缶コーヒーでも買って、ぼんやり高架駅からの景色を眺めつつちびちびとコーヒーを飲む。
缶コーヒーを三分の二も飲んだころ、携帯がメッセージの到着を知らせてくる。
もちろん送り主はレッドスパークスだ。
『私も元気ですよ』
短いメッセージとともに自撮りが届く。
少し痩せたような気がするが表情の明るさは最後に会ったときと変わらない。
『ちと痩せたな、でも元気そうでええわ』
お前がここを去った後もこの自販機が名残りのように残り続けることを祈る。


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ライナーズとレッドスパークス。
東花園駅の自販機にまだスパーキーがいると聞いた感動で書いた……

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海風に乗せて声援を

夕食のサンマを焼いているとスティーラーズが「電話終わったで」と告げる。
「どうだった?」
「まあ多少気落ちするもんはあったっぽいな、でもまあしゃーないって感じやったわ」
七輪で焼いたサンマの匂いが晩秋の風に乗って鼻腔をくすぐる。
「シーウェイブス、さんまの具合はどうじゃ?」
「もう少しですかね」
「スティーラーズも寒くないか?」
「いや、平気ですわ」
釜石さんが「ならもう少しで米も炊けるから」と言って台所に戻る。
今日はスティーラーズと釜石さんと自分という取り合わせで夕飯をご馳走になるついでにポルトガル戦の中継を見ることになった。
「なんか今日は色々あったわ」
「本当にな、取材もあったし明日の試合準備もあるのになあ」
苦笑いをしながらサンマの焼ける香ばしい匂いを嗅いでいるとお腹が空いてくる。
「今日の試合のスタメン、お前のとこからだと誰が出るんだった?」
「スタメンやろ?りょーへーさんだけやな。ぐーくんとイシちゃんベンチやから。リーチさんの復帰で話題全部持ってかれたよなあ」
「そりゃーあの人は別格だしな」
ひっくり返した感じからしてもう頃合いだろうか。
大皿にサンマを盛り付けると「美味そ」とスティーラーズが呟いた。
ちゃぶ台には副菜の野菜たちに豚汁の鍋、そして炊き立てごはんの詰まった炊飯器。
「ちと狭くてすまんな」
釜石さんが苦笑いしつつ小さめのどんぶりに白米を盛ってくれる。
「いや、昔みたいでこれはこれで俺は嫌いやないですけどね」
「ならいいんだが。まだキックオフまで時間もあるからこの間の敗戦を振り返りながら今日の試合の事でも考えるか?」
「さすがにそれは飯が不味くなるんでちょっと」
「じゃあポルトガルの試合を見よう、あんまりポルトガルラグビーって知らんし」
「ほんならそうしましょ。いただきます」
「「いただきます」」
応援の活力を得るためサンマに箸を延ばす。
数時間後、潮風に乗せてはるか遠くのポルトガルへ思いを届けるために。



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シーウェイブスとスティーラーズと釜石おじじ。
ポルトガル戦は日本時間きょう26時キックオフ!明日予定がある人は無理せず寝よう!
あと日曜日(14日正午)は二人の試合もあるのでよろしくね。

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さよならの代わりに

アスリートがアスリートで居られる時間は短い。
それは自分の感覚でたとえるなら桜が咲いて散るような儚さで、時にそれを見送り時に違う形で残ってほしいと頼んだ。
それでもここを去る人の事を止められたことは一度だってない。

「トムさんもどうせならうちで復帰してくれたらなー……」

液晶画面の向こう側。
日本ラグビー界への電撃復帰とシャイニングアークスへの入団を報告すその人は、俺が泣きながら見送った人だった。
本人から電話でアークスんとこに行くと報告されたときは正直ちょっと泣いた。
あんまり悲しくて『日本のラグビー恋しなったんならうちで復帰したらええやん』という事も出来なかった。
だってわざわざスタッフだけやのうて俺にも報告してくれたんやぞ?俺何の権限もないのに。つまりそれは本人なりの誠意な訳で。
そんなもん見せつけられたらもう何も言えへんやん、俺。
うちとの契約解除文章を出して一時間も経たんうちに入団会見やるシャイニングアークスの根性は正直どうかしてると思うけどな?まあ俺がギリギリまで出したなかっただけやけど。
臙脂と青のユニから青と黄色のユニフォームへ。それだけなのに全然違う人に見える。
今更泣いても仕方ない。ただせいぜい、シャイニングアークスの所で大事にされてくれという祈りを込めてこうつぶやくのみだ。




「シーユーアゲイン、ミスター・トンプソン・ルーク」

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ライナーズの独り言。しゅーひがさんの記事読んでて思いついたネタ。

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がおにゃっ!

仕事と練習の合間の短い時間に打ち合わせをすることになった。
「シーウェイブスお疲れさん、元気しとった?」
『何とか無事にな』
「とりあえず確認したいんやけど、お前俺との試合の日にマスコット発表ってホンマなん?」
『ああ、ちょっと事情があって報告が少し遅くなったがそのつもりだった』
「あー……せやったらうちもコーロクン連れてこれるか考えんとな」
そうぼやきつつメモを取る。
コーロクンの予定もあるので色々詰めておく必要がありそうだ。
「というか、お前んとこに虎のマスコットおったやん。あの子らは?」
『なかぴーのことか。あれはもともとファンが自主的に準備してくれたマスコットで所属はうちじゃないぞ?』
「せやったん?!」
『所属は地元の薬局で、あくまでうちのサポーターだ。今度出すフライキーはうちの所属で選手志望だぞ?』
詳細の乗った公式サイトのページを送ってくれたので確認したら本当だった。
なんか試合会場で大漁旗振って応援してくれてるイメージしか無いわ、と思いつつ一通り目を通す。
「そういう感じやったんか」
『ああ。それにずっと手弁当で応援してくれたなかぴーにこれ以上無理はさせられんしな。
自前でマスコットを持ったほうがこの先活動の幅も増やせるし、グッツのレパートリーも増やせる』
「せやなあ、俺も需要あればコーロクングッツとか作ろかな」
『いいな。コラボグッツも機会があれば作れるな』
「マスコットどうしのコラボグッツか、女子受けしそうやしええな。今からやと少し急すぎて納期きついか?」
メモを取りながら『それは来年でええじゃろ』とシーウェイブスが言う。
まあさすがに急よな、という事でこれは来年以降に後回しにする。
『マスコット人気も侮れんものがあるよな。ラムまるくんとか』
「あー、アレすごいよな。あのデカいぬいぐるみめっちゃ目ぇ引くし次世代のサポーターの涵養に一躍買うてくれるもんな』
『うちもあれぐらい人気のマスコットにしたいし、デカいぬいぐるみ作るか検討してみるか』
「でも着ぐるみ作ったばっかやろ?意外にぬいぐるみもって高ぉつくって言うてたで」
『じゃあ検討程度にしておくか』
マスコットを巡る話し合いはもうしばらく続きそうだ。



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スティーラーズとシーウェイブス
新マスコット楽しみですね

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ただ騒がしき土曜の夜更け

土曜日の夜、家を訪ねてきたシャトルズとブルーレヴスがうちに来た。
「……本当に中継のためだけにうちに?」
「中継がWOWOWだけ言う理不尽のせいじゃんね、あん巻き持ってきた」
「僕は浜松餃子と地ビール持ってきたんで台所お借りしていいですか?」
「あー、うん。頼むわ」
手土産のあん巻きを受け取り、ブルーレヴスが足早に台所へ向かう。
今回の日本対アイルランド戦がWOWOWのみ中継のため、見れる環境にないブルーレヴズがテレビを貸してほしいと連絡してきた。
それに便乗するような形でシャトルズまでうちに押しかけて来たのだ。
「シアタールームって地下だら?先行ってるに」
「使用中の看板かけとけよ」
親兄弟で共に使ってるこの家には専用のシアタールームがあり、使ってるときは入り口に使用中の看板を掛けるのが決まりになっている。
今回はこのシアタールームで代表戦を応援する予定になっている。
台所で餃子を焼くブルーレヴズは嬉々としてフライパンで餃子を焼き、良い匂いがする。
「持ってきたビールまだ冷えてませんけど」
「いや、レヴズって今回の遠征に自分とこの選手いないよな?」
「それ言ったらシャトルズさんもでしょ。それに日本ラグビーは代表あってこそですからね、シンさんが育てたスクラムがどこまで通用するか見届けたい気持ちもありますし」
「確かにな」
日本代表はこの数年で大いに羽ばたいた。
アジア初のラグビーワールドカップは日本ラグビーが世界に通用することを証明し、これから強豪へ並び立とうとする気概を世界に示した。
プロチームはそのための人材のゆりかごでもあり、俺たちは日本ラグビーの見届け人でもある。
「まあそれはともかく、楽しみましょうよ。久しぶりに集まって飲みながら応援するんですから」
熱々の餃子がゆでもやしとともに大皿にドンと出される。
餃子とビールを肴に、日本ラグビーの羽ばたきを追うために今日は集まったのだ。
「そうだな、先にやってていいか?」「どうぞ」
大皿の餃子と冷蔵庫に冷やしておいた大瓶のビールとグラスを手に地下のシアタールームにおりていけば、部屋は紅白とラグビーに彩られている。
「準備できたに」
「先に一杯飲ろう」



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本日22時、日本対アイルランド戦!

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