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コーギーとお昼寝

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ビクトリーロードを歌えなかった夜に

スタジアムに響くのは勝利ではなく、努力をたたえる歌が響く。
明るくもないが寂しくはないほろ苦い響くが味の素スタジアムを包み込んだ。
「……正直、イケるかなって思ったんですよね」
カメラを片手にしたイーグルスが隣で呟いた。
今日はサンゴリアス・ブレイブルーパス・イーグルスと自分の四人で観戦に来ていたが、イーグルスはずっとカメラを手に選手たちをカメラで追いかけ続けていた。
「しかし、これが今大会最後の日本代表戦じゃないかとも思ってた。そうだろう?」
「はい。でもまあ現実はそう思うほどうまく行かなくて寂しいもんですよね」
スポーツチームであると同時に日本代表戦を切り抜くカメラマンでもあったイーグルスがそう寂しく笑う気持ちは分かる。
しかし、寂しく笑わずとも自分たちも同じ想いなのだ。

「帰ろう、外にサンゴリアスとブレイブルーパスが待ってる」

ビクトリーロードではない歌が響くスタジアムに長居するのはつらい。
同じ酔いならば敗北の悲しみよりも勝利の喜びの方がいい。
「……そうですね」
イーグルスはカメラを仕舞うとゆっくり帰り路を歩きだした。



ブラックラムズとイーグルス。ベスト4入りの壁は厚かったね……。

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勝利の道の果てを

ビクトリーロードをほろ酔い気分で歌い始めたサンゴリアスに思わずため息が漏れる。
前半を見終えた時点で自前で持って来たビールを切らしたからとウィスキーを飲み始めたのにもう二つ目の瓶を空にしようとしている。
「ロシア戦といい今回といいがぶ飲みしすぎ」
ハイネケンのカップでタワーを積んだロシア戦の時もひどかったが、今回もよくまあ飲むものだ。
「松島が4トライ目ねじ取った日ぐらい心地よく呑ませてくださいよ」
「お前その勢いでうちの買い置きを空にする気だからだめ」
テレビを4K対応に変えたからうちでゆっくり見ないかと誘ったのは俺だけど、だからと言って人んちの買い置きの酒を空にしていいとは言ってない。
「まだウィスキー残ってるじゃないですか」
「それ高い奴だから駄目、焼酎ね」
「うちの会社は焼酎出してないんですけどー?」
「いいでしょ。焼酎のペプシ割で我慢してよ」
そう言って残っていた安い焼酎をペプシで適当に割って薄切りのレモンをひと切れ突っ込んで出してやれば、納得いかなさそうに唇をとんがらせてきた。
「それに、このサモア戦勝ったからって予選プール脱出成功したわけじゃないんだから」
「まだスコットランドが残ってますもんね」
「そうだよ……そうだ、スコットランド戦でお前自慢の松島が4トライもぎ取ったら焼肉食いに行こう、食い放題」
「乗った!横浜だし見に行にいけるじゃん!今ならまだチケット行けるかもしんないしもぎ取ったら二人で試合見に行って、松島4トライもぎ取ったら焼肉ね!」
サンゴリアスが嬉々としてチケットを探し始めるのを見守りながら酒辛いペプシを飲み込む。
勝利の道を走り続けてきた日本代表はその果てを見にいけるだろうか。俺が愛し、見送った仲間たちが見せてくれた勝利の果てを見に行きたいと願う。
このビクトリーロードの果てで、笑うのは俺たちだ。




ブレイブルーパスとサンゴリアス。
勝利の道を往けば笑える日が来るんですよ、そう思いながら声援を送るばかりです。

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歓喜に震える指先を

エコパスタジアムに鳴り響く歓喜の声がいまも脳裏を離れない。
帰り着いたジュビロの家でスポーツニュースを見れば確かに日本が勝ったのだと再認識する。
すると指先が震えていることに気付いた。怯えではない。恐怖でもない。これは喜びの震えだ。

「ほんとに勝ったんですよね、あのアイルランドに」

ジュビロが感嘆の声を漏らしながらスポーツニュースを見返す。ああ、本当に日本はあのアイルランドに勝ったのだ。あの接戦を制したのは他の誰でもない、日本代表なのだ。
愛すべき桜のジャージが静岡で起こした番狂わせはジュビロやシャトルズの心を震わせていた。
「……再放送、明日あるもんで見て行ってから帰ろまいか?」
シャトルズがジュビロにそう聞けば「いいですよ」と答える。
祝杯をあげるためのつまみを並べたテーブルには未開封のアイリッシュウィスキー。
「それは?」
「サンゴリアスくんから先週届いたんです、『次のアイルランド戦で日本が勝ったらこれで祝杯あげよう』って」
蓋を開けてウィスキーグラスに氷も入れずに注げば琥珀の宝石のような輝きが飛び込んでくる。
「あ、水割りにするの忘れた」
「これでやろまい。ストレートでも一口ぐらいならいいじゃんね」
「そうだな」
そう告げればジュビロは水割り用のボトルと氷を机の上に置き、やおらウィスキーを注いだグラスを取る。
アイルランドに勝ち切った日本代表にちなんで、いっそこれを一口で飲み干してやろうか。そして次の勝利の願掛けとしよう。


「次の日本代表の勝利を祈って「「乾杯!」」」

今も歓喜に震える指先でぐっとグラスを握り締めてグラスを叩けば、涼しげな勝利の音が聞こえた。


ヴェルブリッツとジュビロとシャトルズ。
アイルランド戦、最高だったね……

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今宵のビールはほろ苦く

はあーっと深い溜息を洩らした俺と後輩はもう一度大画面に目を向けた。
日本代表応援に盛り上がるパブリックビューイング会場は人が早くも減り始め、日本代表の寂しいスコアが映し出されている。
「そんな都合よく奇跡は降りてこないかあ」
サンゴリアスが深いため息とともにぬるくなったハイネケンを飲み干し、地面に置いた。
俺の方も残っていたハイネケンを飲みながら可愛い後輩をなぐさめた。
「でも前哨戦だしね。実際福岡なんて怪我とは言え10分と経たずに引っ込めたじゃない」
「まあそうですけどね」
「本番は9月20日、そうでしょ?」
俺がそう告げれば、ああそうかと呟く。
「もう10日ちょっとなんですねえ」
「そうだよ、俺たちの府中にワールドカップが来るんだから。まずはそっちを精一杯応援しなきゃ。年明けにはリーグ戦、夏にはオリンピックだよ?」
「ほんと、そう考えるとバタバタですよね」
今夜のビールはほろ苦い結末を迎えた。
けれど、これから先の大舞台できっとうまいビールが飲めるはずなのだ。



「だから、走り抜こう」

俺たちの本番へ。


ブレイブルーパスとサンゴリアス。

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北の大地の空と風

「はー……なんかえらい疲れてもうたわぁ」
ラグビークリニックが終わり、木陰にライナーズさんがバタンと横たわる。
「合同のラグビークリニックなんてそう滅多にあるものじゃないですしね」
「ほんまそれなぁ」
「せやかて若い子らは勉強になったんやないですか?」
「……レッドハリケーンズは若いからええけど俺みたいなおいちゃんには厳しいわぁ」
北国での合宿中に地元の子供たち向けのラグビークリニックをやろう、と言い出したのは誰だったか忘れたがこうして大人数で集まって行う事はそう多くない。
まして同じ大阪住みのレッドハリケーンズとライナーズさんが一緒になる事はあっても、神奈川に住む自分がそこに同席するなんて普通はあり得ないことだ。
「飲み物頂いてきましたよ」
ジュビロさんがドリンクの入った容器を人数分持ってきてくれて「ありがとうございます」と受け取った。
「あ、おおきにー!」
「いえ」
「こういう時は最年少が積極的に動きなはれって言われんかったん?」
「動ける人が動いたらいいんですー」
大阪コンビがわいわいと言いあうのを止めるべきか放置すべきか分からないジュビロさんを尻目に、自分は冷えたドリンクに口をつけてほうっと小さく一息ついた。
何度来ても北海道は良い。風は心地よく、食事も美味しい。
「……そう言えば、」
「ダイナボアーズなんかあったん?」
「いえ、もし良ければこの後懇親会をしようとスタッフが話していたのを思い出して。スピアーズさんには先にお話ししたんですが」
懇親会というよりもチームの枠を超えた飲み会のようなものをやりたいと漏らしていたことを思い出し、たぶんこのメンバーなら数人は来てくれそうな気がした。
「懇親会?!肉と酒はあるん?!」
「もちろん」
「ほな行くわ!おいちゃんも行くやろ?」
「おう、なんか野菜でも持ってこかな」
「僕も参加させてください」
「わかりました」
ドリンクはいったん蓋を閉めてすっくと立ちあがる。
こうしてみんなでワイワイと食事をするのは昔から好きなほうであったし、善は急げと昔から言う。準備は早くからしておくに越したことはないだろう。
「準備できたらご連絡しますので」
軽い会釈と共にそわそわした気分で足を走らせる。
ラグビーも、それに合わせる食も良いものだ。ましてこの心地いい北海道の風の下なら、なおさらに。




ダイナボアーズとライナーズとレッドハリケーンズとジュビロ。
なんか北見で一緒にラグビークリニックしてたというのが面白かったので。

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