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コーギーとお昼寝

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春めく日々に

*小ネタです




・希望の花咲く日(シーウェイブス)
東では春の足音響く季節になっても未だこの街は冬の色が抜け切らない。
そんな今日この頃であっても、間違いなく春は近づいている。
自転車を漕いでスタジアムへ行った帰り道、真新しい駅舎に佇んでいると遠くから警笛の音が響く。
「……もうすぐだなあ」
あの日閉ざされた鉄路は再びつながり、釜石の街からこのスタジアムまでが結ばれる日はもうすぐだ。

・変わりゆく明日(ブレイブルーパス)
久しぶりに本社の方へ行ったので、帰り道に国立競技場へ寄り道した。
「国立競技場もう結構出来上がってるな」
ポケットから携帯を引っぱり出してサンゴリアスに写真を送るが返事はない。まだ仕事中なんだろう。
半年後のワールドカップと一年後のオリンピックを控え、ちょっと来ない間に東京も様変わりしてしまうものだとこういう時つくづく思い知らされる。
(そういや、秩父宮も建て替え決まったんだよなあ)
秩父宮の建て替え開始はオリンピック後だから2020年シーズンが最後の秩父宮での試合になる。
時代は巡り、街は変わる。みんなも変わってしまう。
それを見守ることを春風の中で噛み締めた、午後の日。

・出会いも別れも(レッドスパークス+キューデンヴォルクス+ブルース)
「ぞれ゙で゙も゙寂゙じい゙も゙の゙ば寂゙じい゙ん゙で゙ずヨ゙~゙~゙~゙~゙~゙~゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙」
ぐずぐずと泣き喚くレッドスパークスをキューデン先輩がよしよしと慰める。
降格が決まったレッドスパークスはこの春、主力が退団していきそれがよほど寂しいようだった。
「すぐ再昇格すればいいだけの事だろ?」
「うう……」
ぐずぐずと泣き喚くのを慰める先輩の人柄の良さと言ったら本当に神の所業である。
「……寂しいのはお前だけじゃなか、」
「ブルース?」
「早よトップリーグば戻ってきんしゃい」
寂しいのは、お前だけじゃないのだ。

・何度でも逢いたい人(スティーラーズ+シーウェイブス)
「6月、こっち(神戸)でのレジェンドマッチ決まったで」
電話越しにそう伝えると『去年の夏にもやったのに?』なんて意地の悪いことを言う。
「ええやん、神戸来てくれたらええプリン奢ったるから」
『……プリンで釣れると思うなよ?』
「でも会場でプリン配ったりするぐらいには好きやろ?」
『スポンサーだからな』
「ついでに去年優勝チームのプレシーズンマッチもつくんやで?」
お徳やんと言ってやればお前なあと呆れたようなため息が漏れる。
今は生きてる世界が違えど、同じものを見て味わってきたお前が特別な相手であることを早く自覚して欲しい。
「とにかく、6月16日にノエビアでな」

・3月16日(サンウルフズ+シーウェイブス)
春の日差し降り注ぐ秩父宮にビックユニフォームが設置され、サポーターは思い思いに言葉を描き込んでいく。
「ヒトコミュニケーションズサンウルフズ、か?」
「はい」
「こうしてちゃんと会うのは初めてだな、釜石シーウェイブスだ」
ラグビー選手としては小柄なその人は年下の僕への手土産を手に挨拶にやってきた。
そう言えば今日の試合は釜石復興関連のイベントも同時開催だったことを思い出し、このところの報道で少々ナーバスになっていたことに気付かされた。
「ビックユニフォームのコメント、良いものばかりだった。よく愛されてると実感できたよ」
「……ありがとうございます」
「これだけ愛されていて、なおかつ今日の試合に勝てればSANZAARも方針変えるかもしれないな」
その言葉は絵空事のように空疎に響いたけれど、いまはただ希望を信じるしかない。
辛くて痛くて苦しくとも前に進む、それがラガーマンだから。

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春めく日々の一コマ

*小ネタ集です


・お引越し
「あんた、ほんとに熊谷に来るの?」
「いちおうね」
アルカス熊谷はその返事を聞いて実に不愉快そうに表情を小さくゆがめた。
「引っ越すにしてもまだ場所探しとか打ち合わせとかあるからだいぶ先だけど」
「あんたがほんとにお隣さんになるとか地味に嫌ね」
「一緒に熊谷をラグビーで盛り上げる人出が増えたぐらいに思えばいいでしょ」

・出会いの春に
金曜日の昼下がり、僕の妹分になるであろう子が見つかったという連絡を受けて定時明けに足早に尋ねに行くことにした。
「……この子が、アザレアスポーツクラブ?」
つつじの花のごとき淡いピンクの髪によく馴染む桜色の頬をした3つか4つばかりの幼い少女はすうすうと小さな寝息を立てて眠っている。
この子がこれから健やかに伸びてこの街でラグビーボールを追いかける仲間になるのだ。
「よろしくね、アザレア」
仲間の増えた喜びを込めて僕は小さくその頬を撫でたのだった。

・冬の終わり、別れの日
シーズンが終われば俺の元を去る仲間たちについての仕事が増える。
「今年の退任者は八人か」
ふうっと小さくため息を吐きながらも、きょう退任を発表した監督の事はやはりどうしても気にかかった。
まだあの人は若い。退任の理由は平成の最後に優勝を逃したと言う事実の重さなのか、それとも違う理由があるのかは分からないが人は来ては去っていく。
去っていく選手たちや過去に固執すれば重荷になるばかりだ。
「……今年は何人来るかな」
気分を切り替えるように退任者のリストを閉じると、次に来るシーズンのことだけを考えた。

・狼は太陽に吠える
スーパーラグビーの季節は春と共に南半球からやってくる。
シンガポールでの初戦の敗北は手痛いけれど、明日に控える国内初戦の準備は捗っている。
(……大丈夫、勝つぞ)
トップリーグのチームたちの上に自分は立っている。
姿かたちこそ幼くも自分は日本代表を支える柱なのだ。
晩冬の東京の陽の下で美しい勝利の星を掲げる準備なら、もうできている。

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夜更けには酒瓶を

「やっぱフィジカルで押されると辛いよなあ」
テレビを消したサンゴリアスが深い溜息を吐きながら何杯目かのコークハイを飲み干した。
試合を見ながら飲んでいたウィスキー瓶はもう底を突きかけていて、最後のウィスキーをグラスに注ぐと炭酸水で割って飲み始めた。
「まあそればっかりはね。今日の試合はミスも多かったし、次の国内開幕戦に不安を残した感じはあるよね」
スーパーラグビー2019年開幕戦を日本代表が黒星で飾るまでをテレビで見るのは中々つらいが、さすがに仕事を放り投げてシンガポールくんだりまで行けないのだからしょうがない。
でも現地に行ってあの試合を見るのも悔しい気もするので悩ましい。
「ほんと今回の試合は見ててしんどかった……」
「ボロボロの試合ははたから見てるより自分でする方が気楽ってのはあるね」
「ホント連係ミスの多さがなあ、後半のシンビン(※選手にイエローカードが出て10分間退場になること)も痛かったし」
「でもスクラムの組み方変えたのと、スーパーラグビー経験浅めの選手が多かったからそれも大きかったのかもね」
「あー、それはあるかも」
モリモリ食べてぐびぐびと酒を飲み干すさまを見ながら今日の試合のクダを巻く。
それもまたラグビーを見る楽しみであるのかもしれない。
「ぼちぼち仮眠取ろうかな」
「仮眠?」
「2時からフランスリーグ見たいから」
「ああそっか、じゃあ俺もそうする」
携帯のタイマーをセットして仮眠の準備を始めたサンゴリアスに合わせ、俺も仮眠用の布団を引っぱり出す。
まだまだラグビーと酒の夜は終わらない。




ブレイブルーパスとサンゴリアス。スーパーラグビー開幕戦、残念でしたね……

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22度目の冬

最後のホーンが鳴って勝利が決した時、こんな思いで聞くホーンは何年振りだろうと思った。
1998年以来21年ぶりのタイトル獲得であると気づいて長かったと思い知らされる。
「サンゴリアス、」
「日本選手権獲り逃したからカップ戦こそは!って思ったのになあ」
「悪いな」
「別にいいよ、優勝おめでとう」
祝福の握手が差し伸べられ、軽く握り返す。
厚く硬い掌はラグビーをやるものにのみ与えられたラガーマンの手をしている。
「あと、どこか美味しいお土産を買えるところ知らないか?渋谷か品川辺りで」
「普通に東京バナ○とかで良くない?」
「……シャトルズへの手土産なんだ、酒が良い」
少し前に降格の憂き目に遭って未だ薄暗さが拭いきれない片割れの名前を出すと、妙に納得したようになるほどねと小さく呟いた。
「なら品川の駅から少し離れたところに東京産の日本酒扱ってる酒屋があるよ」
「そうか、あとで地図送ってくれるか?」
「はいはい」
じゃあねと言って去っていく去っていく背中を見ていると、ふと思い出したようにサンゴリアスが立ち止まった。
「……ああそうだ、

来シーズンこそはタイトル獲るから」

若者の目は次の情熱と野望に燃え、その目の美しさに笑ってしまう。
「望むところだ」


ヴェルブリッツとサンゴリアス。カップ戦優勝おめでとうございます!

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年末年始の断片

年末年始の短編集です。


・12月23日のはなし
最後のホーンが鳴ったとき、ああやはり自分はここに残れないのだと分かった。
「シャトルズ、いい試合だった。ありがとう」
昇格決定の興奮冷めやらぬダイナボアーズがこちらにそう告げてくるので、皮肉も祝福も口に出すこともできずにただ頷くのみに留めた。
兄弟同然に育ったヴェルブリッツは年末年始の仕事の多忙に追われてか一週間近く過ぎた今でも応援も慰めも寄越して来ず、ただいつものように刈谷まで来て飯を食った。それだけが救いだった。
(……トップリーグの舞台に帰る事だけを考えよう)
そしてダイナボアーズにもう一度泣きべそかかせてやるのだ。

・12月24日のはなし
『お好み焼き食いに行かん?』というライナーズからの電話で、クリスマスイブの街に繰り出せばそこにはふわふわと浮かれたレッドハリケーンズがいた。
「ようやっとトップリーグの舞台帰ってこれた~~~~~~!!!!!」
ついにスティーラーズのおっちゃんを関西ぼっち脱出させられると騒ぎながら抱き着いてくるのでよしよしと宥めてやれば既に吐息がソースとアルコール臭くて笑ってしまう。
「レッドハリケーンズお前飲み過ぎなんと違う?」
「ええやろ、ちったぁ浮かれさせてやりぃや。昨日の今日やしなァ」
ライナーズはいつもの笑顔よりも少し寂しそうに笑う。
(まったく、自分は昇格逃したくせに俺とレットハリケーンズの祝福先にしよって……)
たかだか1つ2つしか変わらない癖にこういう時だけは年上面してくるライナーズに今日はビールのひとつでも奢ってやろうと思って、ビールを頼もうと手を伸ばした。

・12月27日の話
「サンゴリアス、冷蔵庫パンパンじゃない?」
「クリスマスの残りですよ」
大掃除の手伝いを頼まれて空けた冷蔵庫に詰まったごちそうはすべて手作りのクリスマスディナーだという。
この量を全部作ったのだと思うとつくづく料理の上手い後輩だと実感して感嘆の声が漏れる。
「つくづくお前は料理上手だねえ」
「お酒に美味しい料理は必須なんで、どうせ年越しまでに食いきれないんでなんか持ってきます?」
「じゃあ後でいくつか持ってくわ」

・12月31日のおはなし
仕事も無事に収まり練習もない大晦日の夜更け、ぼんやりと除夜の鐘をききながらひとり年越しを待っていた。
(来年はワールドカップかあ)
待ち望んでいた祝祭がついに日本に来て静岡でも試合が繰り広げられると思うとワクワクする反面、長年指揮していた監督の退任とトップリーグ日程の大幅にずれ込むのは頭の痛い悩みでもある。
だけれど、きっと明るい一年になると信じて突き進むしかないのだ。
「……来年も頑張ろう」

・1月1日のおはなし
「グリーンロケッツ、あけましておめでとー」「明けましておめでとうございます」
スピアーズとシャイニングアークスがふわりと笑いながらうちに来たので「二人ともあけおめ~」と返す。
一緒に初詣に行こうという話をしたのは一昨日の夜、そしてふたりは約束通り車で我孫子まで迎えに来てくれたのである。
「そういや初詣ってどこ行くか決めたの?」
「うん、圏央道で香取神宮行って銚子でお寿司食べよーって」
「常磐道北上して筑波山に行きたいってスピアーズは言うんですけど、山の幸より海の幸の気分だったんですよね」
「アークスの意見なんだ、このミラクルセブンも海の幸に賛成!」
年の初めも腐れ縁の友人たちと過ごせるのは悪くない。いや、むしろ最高かもしれない。
「じゃ、海の幸に向かってレッツゴー!」

・1月4日の話
上手く食事が喉を通らずに無理やり流し込むと、はあと小さくため息が漏れた。
明日に控えた残留をかけた入れ替え戦のことばかりがずっと脳裏をよぎる冬の夜、外はちらちらと小雪舞う年明けすぐの北東北の景色が広がっている。
この5年ほどはずっと残留と降格の不安がよぎる己の弱さにはいつも自責の念のみがあった。
そのせいか、入れ替え戦が近づくとひどく神経質になってしまう自分がいた。
(せめてこの街と人を悲しませないことだけを、考えよう)
大丈夫、外の小雪も朝には止む。きっとこの街に勝利を呼べるはずだ。

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