忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

春シーズンはばたばたと

*春の小ネタシリーズです

・英語が覚えられない話(サンゴリアス+レッドドルフィンズ)
「そう言えばスクラムユニゾンによる国歌動画って見ました?」
練習試合後の食事中、レッドドルフィンズがふいにそんなことを言い出した。
「あー……国歌を覚えて歌おうって奴だっけ」
「はい、せっかくなんで僕も覚えられるだけ覚えようかと思ってるんですよね」
「ああいうのなあ、覚えられる自信ないんだよなあ」
苦笑いでそんな言葉をこぼすと「まだ半年あるから大丈夫ですよ」とにこやかに返される。
半年で海外の国歌覚える根性があるってすごいなあ、と思わず遠い目になる。
「それに府中はホストタウンじゃないですか!ね?」
「……それは、あの動画の歌唱担当が自分とこの選手のお兄さんだから推してるとかじゃないのか?」
「まさかぁ」
果たしてその言葉に他意があるのか、今の俺には読めないのであった。

・たいわんいきたいわん(シーウェイブス+釜石)
「お疲れさん」
手を振って迎えに来てくれたのは釜石さんだった。
毎年この時期に地元テレビ局主催で行われる試合は初めての国際試合となり、試合も見事圧勝となった。
「はい、」
釜石から盛岡まで見に来てくれたのかと思うとこころがほっと温まる。
このあとは今日の試合相手と共に食事をする予定になっているのでともに帰ることはできないが、こうして声をかけてくれるだけで十分だった。
「今日は圧勝だったな」
「向こうに救われた部分も多いですけどね」
「それでもお前さん、国際試合なんて20年ぶりとかじゃないか?」
「ですかね」
「それを華やかな勝利で飾れるってのはめでたい事じゃろう。ま、これで今日は明るく仙人峠越えが出来るな」
楽しそうにそう伝えるとその人は他のファンと共に己の家へと帰っていく。
その背中がいつもより明るくて、ああよかったと思うのだ。

・新大阪にて(レッドハリケーンズ+シャイニングアークス)
「別に見送りに来なくてもいいんですよ?」
薄ら不機嫌そうな声でシャイニングアークスがそんなことを言う。
この間幕張メッセで顔を合わせた時もそうだったが、こいつは俺の前ではいつもこういう顔しかしない。
「親の命令やからな」
「……ほんとおじい様も妙にセットにしたがりますよねえ」
「同じNTTだからやろ、知らんけど」
「そうですか。見送りなら新大阪近辺の美味しいものでも奢ってくださいよ」
「何言うてんねや、この辺オフィス街やぞ……とりあえず豚まんでも食うとけ」
「じゃあ豚まん5つ、持ち帰りで」
「へーへー」
元々大阪に呼んだのはこっちの方なのでしゃあないと言いながらチルドの豚まんとあったかい豚まんを買っておく。
一つは自分用、もう一つはこいつ用である。
「ほれ、新幹線乗る前に食うとけよ」
暖かい出来立て豚まんを一つ押し付けると途端にいぶかしむような顔になる。
「……千葉に来た時ディズニー連れてけとか言う気ですか?」
「言うか阿呆!」

・おいちゃんもネットに慣れたい(スティーラーズ+ライナーズ)
『Twitterってどないしてやるん?』
唐突に電話をかけて来たライナーズが切り出したのはそんな言葉だった。
「……そんなんレッドハリケーンズに聞けや、あいつの方がそう言うの詳しいんと違うか?」
『あいつ忙しゅうておじーちゃんに構う暇ないとか言うねん、可愛げないわあ』
「ほんなら自分で何とかせえや」
俺だってもう年齢で言えばじじいの領域で特別ネットの事は詳しくない。なので突然頼って来られても困る。
『お前しか頼れそうな奴おらへんねん、今度カレーパン奢るから、な?』
「……しゃあないおっちゃんめ」
『お前もおっちゃんやろ』
「おっちゃん同士頭捻って何とかしたろ、な?」
とりあえず調べてからそっち行くわと告げれば「おーきになー」とゆるい返事が来る。
(……まったく、どこから手ぇつけるかな)
SNSに全く触れていないネット音痴にどこから教えてやるべきかと思うと少し憂鬱で、小さくため息が漏れた。
後日、広報担当の若い奴が全部やってくれたーというお知らせと共に秒速でTwitterに慣れていく姿を目撃するのはまた別の話である。


拍手

PR

柏餅しかない休日

ラグビーの試合が無くても練習と仕事は付きまとう。
そしてこの連休を使ったイベントもあっちこっちで盛りだくさん、となるともはや休みとは言えなくなる。
「……疲れた」
「このミラクルセブンも同じだよ……」
ふふふと死んだような声を上げたシャイニングアークスとグリーンロケッツがうちで死んだように寝ころんでいた。
家に帰ったら、昨日畳返しをして綺麗になったばかりの畳に横たわる男二人は普通に心臓が悪い。
合鍵の隠し場所バレてるから引っぱり出して侵入したんだろう。
「ほんとにお疲れなんだねぇ」
福岡で買って来たとんこつラーメンのセットと焼きたて餃子を出してあげると、むくりと起き上がって食べ始めた。
「このミラクルセブンは仕事と練習しかなかったんですよ?!練習がオフでも仕事は通常運転!うちの姉は仕事休みでずっと寝てたのに!」
「そっちはまだいいじゃないですか、仕事と練習だけで。うちなんか幕張のイベント行ったらレッドハリケーンズいたんですよ?!極力顔合わせないようにはしてましたけどその気疲れと言ったら!」
(よくもまあ食べながら器用に怒るものだなあ)
こういう時は何も言い返さないでおくが吉だし、俺は冷蔵庫のお漬物やバカガイ(船橋近辺で採れる貝だ)の酒蒸しや菜の花の辛し和えをどんどん並べていく。
そしてそれが吸い込まれるように二人の胃に入っていく。食欲は無限大だ。
「お米食べる?」
「「食べる!!」」
(……まだ食べるんだ)
このままだと俺の分がなくなってしまいそうだ。
今朝炊いて急速冷凍したご飯をとりあえず三人分解凍して、一つは自分用に確保した、
さっきコンビニで買って来た柏餅、あとはもうこれで勘弁してもらおう。
「ねー、もうデザートの柏餅しかないんだけどいーい?」
「このグリーンロケッツは酒盛りしたいんだけど」
「いいですね、明日は練習も無いですし仕事も休ませてもらいましょうか?」
……10連休出来なかった二人の無念はまだ続くらしい。




スピアーズとグリーンロケッツとシャイニングアークス。10連休もみんな大変です。

拍手

君の名を叫ばせて、

ああ本当にそうなってしまったか、と言う虚無感が静かに胸の奥に降り積もった。
サンウルフズのスーパーラグビー脱退の公式発表は日本中のラグビーファン全てを虚脱状態に陥れるには十分だった。
あの幼子も、同じように彼に声援を送っていた仲間たちも、この知らせを聞いたのだろうか。
ブーっと低いバイブ音が鳴り響いたので「もし?」と取ってみれば相手は可愛い町田の後輩だった。
『……サンウルフズの件聞きましたか』
「ああ」
『いちラグビーファンの発言として聞いて欲しいんですけど、あんまりじゃないですか?』
錯綜する報道を見た限りではどうもサンウルフズとそのファンや選手の扱いはあまりにもなおざりなもので、純粋にラグビーが好きであるこの後輩の姿を知るものとしてはその気持ちには深く同情した。
(あの子もシンガポールの空の下で聞いているだろうか)
自分達にとってあの子は可愛い最年少のようなものだったし、それを抜きでも実に魅力的で素直に応援したいと思えるチームでもあったのだ。
あの子は代表強化の道具でもお荷物でもないプロ意識をはっきり持つ魅力的なチームだということを分かって貰えなかったのがあの子の唯一にして最大の不幸だったのかもしれなかった。
『こんなの、あんまりだ』
「……ああ」




事務機ダービーに自分の心情代弁してもらったみたいな感じで申し訳ないんですけど許してくれ、これだけはまだ消化し切れてないんだ……

拍手

春めく日々に

*小ネタです




・希望の花咲く日(シーウェイブス)
東では春の足音響く季節になっても未だこの街は冬の色が抜け切らない。
そんな今日この頃であっても、間違いなく春は近づいている。
自転車を漕いでスタジアムへ行った帰り道、真新しい駅舎に佇んでいると遠くから警笛の音が響く。
「……もうすぐだなあ」
あの日閉ざされた鉄路は再びつながり、釜石の街からこのスタジアムまでが結ばれる日はもうすぐだ。

・変わりゆく明日(ブレイブルーパス)
久しぶりに本社の方へ行ったので、帰り道に国立競技場へ寄り道した。
「国立競技場もう結構出来上がってるな」
ポケットから携帯を引っぱり出してサンゴリアスに写真を送るが返事はない。まだ仕事中なんだろう。
半年後のワールドカップと一年後のオリンピックを控え、ちょっと来ない間に東京も様変わりしてしまうものだとこういう時つくづく思い知らされる。
(そういや、秩父宮も建て替え決まったんだよなあ)
秩父宮の建て替え開始はオリンピック後だから2020年シーズンが最後の秩父宮での試合になる。
時代は巡り、街は変わる。みんなも変わってしまう。
それを見守ることを春風の中で噛み締めた、午後の日。

・出会いも別れも(レッドスパークス+キューデンヴォルクス+ブルース)
「ぞれ゙で゙も゙寂゙じい゙も゙の゙ば寂゙じい゙ん゙で゙ずヨ゙~゙~゙~゙~゙~゙~゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙」
ぐずぐずと泣き喚くレッドスパークスをキューデン先輩がよしよしと慰める。
降格が決まったレッドスパークスはこの春、主力が退団していきそれがよほど寂しいようだった。
「すぐ再昇格すればいいだけの事だろ?」
「うう……」
ぐずぐずと泣き喚くのを慰める先輩の人柄の良さと言ったら本当に神の所業である。
「……寂しいのはお前だけじゃなか、」
「ブルース?」
「早よトップリーグば戻ってきんしゃい」
寂しいのは、お前だけじゃないのだ。

・何度でも逢いたい人(スティーラーズ+シーウェイブス)
「6月、こっち(神戸)でのレジェンドマッチ決まったで」
電話越しにそう伝えると『去年の夏にもやったのに?』なんて意地の悪いことを言う。
「ええやん、神戸来てくれたらええプリン奢ったるから」
『……プリンで釣れると思うなよ?』
「でも会場でプリン配ったりするぐらいには好きやろ?」
『スポンサーだからな』
「ついでに去年優勝チームのプレシーズンマッチもつくんやで?」
お徳やんと言ってやればお前なあと呆れたようなため息が漏れる。
今は生きてる世界が違えど、同じものを見て味わってきたお前が特別な相手であることを早く自覚して欲しい。
「とにかく、6月16日にノエビアでな」

・3月16日(サンウルフズ+シーウェイブス)
春の日差し降り注ぐ秩父宮にビックユニフォームが設置され、サポーターは思い思いに言葉を描き込んでいく。
「ヒトコミュニケーションズサンウルフズ、か?」
「はい」
「こうしてちゃんと会うのは初めてだな、釜石シーウェイブスだ」
ラグビー選手としては小柄なその人は年下の僕への手土産を手に挨拶にやってきた。
そう言えば今日の試合は釜石復興関連のイベントも同時開催だったことを思い出し、このところの報道で少々ナーバスになっていたことに気付かされた。
「ビックユニフォームのコメント、良いものばかりだった。よく愛されてると実感できたよ」
「……ありがとうございます」
「これだけ愛されていて、なおかつ今日の試合に勝てればSANZAARも方針変えるかもしれないな」
その言葉は絵空事のように空疎に響いたけれど、いまはただ希望を信じるしかない。
辛くて痛くて苦しくとも前に進む、それがラガーマンだから。

拍手

春めく日々の一コマ

*小ネタ集です


・お引越し
「あんた、ほんとに熊谷に来るの?」
「いちおうね」
アルカス熊谷はその返事を聞いて実に不愉快そうに表情を小さくゆがめた。
「引っ越すにしてもまだ場所探しとか打ち合わせとかあるからだいぶ先だけど」
「あんたがほんとにお隣さんになるとか地味に嫌ね」
「一緒に熊谷をラグビーで盛り上げる人出が増えたぐらいに思えばいいでしょ」

・出会いの春に
金曜日の昼下がり、僕の妹分になるであろう子が見つかったという連絡を受けて定時明けに足早に尋ねに行くことにした。
「……この子が、アザレアスポーツクラブ?」
つつじの花のごとき淡いピンクの髪によく馴染む桜色の頬をした3つか4つばかりの幼い少女はすうすうと小さな寝息を立てて眠っている。
この子がこれから健やかに伸びてこの街でラグビーボールを追いかける仲間になるのだ。
「よろしくね、アザレア」
仲間の増えた喜びを込めて僕は小さくその頬を撫でたのだった。

・冬の終わり、別れの日
シーズンが終われば俺の元を去る仲間たちについての仕事が増える。
「今年の退任者は八人か」
ふうっと小さくため息を吐きながらも、きょう退任を発表した監督の事はやはりどうしても気にかかった。
まだあの人は若い。退任の理由は平成の最後に優勝を逃したと言う事実の重さなのか、それとも違う理由があるのかは分からないが人は来ては去っていく。
去っていく選手たちや過去に固執すれば重荷になるばかりだ。
「……今年は何人来るかな」
気分を切り替えるように退任者のリストを閉じると、次に来るシーズンのことだけを考えた。

・狼は太陽に吠える
スーパーラグビーの季節は春と共に南半球からやってくる。
シンガポールでの初戦の敗北は手痛いけれど、明日に控える国内初戦の準備は捗っている。
(……大丈夫、勝つぞ)
トップリーグのチームたちの上に自分は立っている。
姿かたちこそ幼くも自分は日本代表を支える柱なのだ。
晩冬の東京の陽の下で美しい勝利の星を掲げる準備なら、もうできている。

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ