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コーギーとお昼寝

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最後だと分かっていたとして

三連休は呉のところで過ごすつもりでいたのに、ちょっと前倒しになりそうだと聞いたので急遽休みを交代してもらってきょう行く事にした。
「呉!」
愛しい人の名前を呼ぶとその目にすこし光が戻って来て小さな声で名前を呼んでくれた。
「どうしてここに?土曜日に来るんじゃ……」
「休みを交代して貰ったんだ」
「無理を言っちゃったかな」
ポツリと呉が僕を見てつぶやく。
「大丈夫だよ、みんな分かってるから」
東予や桜島・次屋も呉と会って話せるのはこの三連休が最後だろうという覚悟はしていた。
広畑も仕事に大きな支障が出ない限りどこで誰と会おうと咎めない、と言っていた。
だからちゃんと交代して貰った上で来てるのだから大丈夫だ。
「周南、」「うん?」
呉が僕を撫でてきた。
働き者の無骨な手はちょっとざらついていて、でもすごく温かい。
「すきです」
「うん」
「出逢った時から今日のいままで、周南が好きです」
愛しい人の愛の言葉を脳髄の隅々に至るまで染み込ませるように、呉は繰り返し愛の言葉を告げてくれる。
呉の製鉄所としての機能はきょうで終わり、解体が始まればきっともう会うことも声を聞くこともできない。
だからせめて溢れるほどの愛を乞うのだ、

____
呉周南の、最後かもしれない日のはなし。

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それぞれのパブリックビューイング

*短編集です
*ワールドカップチリ戦パブリックビューイングの話

・釜石にて(シーウェイブスと釜石製鉄所)
4年前、この街にやってきたワールドカップの事を今も時々夢に見る。
目前で繰り広げられたワールドクラスの試合に心震わされたあの日がまたこの場所で再現されようとしている。
パブリックビューイングに合わせて行われるイベントの設営を終えると、パブリックビューイング用の画面のテストが始まる。
建物の壁をスクリーンにして試合を投影するので機械の調子を見る必要があるのだ。
「大きい画面だなあ」
そうつぶやいたのは釜石製鉄所その人であり、その首元には日本代表のタオルが巻かれている。
「目前で行われる試合の迫力には負けますけどね」
「でも、みんなで同じ試合を見る楽しさは味わえる」
4年前のようにみんなで集まって試合を見るのが、お互い楽しみなのだ。

・府中にて(サンゴリアス+ブレイブルーパス)
4年ぶりに味わう賑わいの中、先輩が「こっち!」と俺を呼ぶ。
「先輩また良い席確保して……とりあえずビールとおつまみ3つ買っといた」
「いくら?」
「おつまみは3つで1400円、ビールは800円。おつまみは俺ももらうから1200円で良いよ」
「100円玉ないから1500円あげよう、残りはお駄賃ってことで」
1000円札と500円玉を手渡されたので「ありがとう」と受け取った。
おつまみの冷やしきゅうりを齧りながら選手のトークショーに耳を傾けていると「4年なんてあっという間だよなあ」とつぶやく。
「ほんとにね、でもこの4年で色々変わりもしたじゃん」
「日本がティア1入りなんて想像出来なかったもんな」
先輩が実にしみじみとそう呟く。
この4年で日本ラグビーがどれだけ進んだかを、この大会で世界にみせつけるのだ。

・横浜にて(TKM+イーグルス+ダイナボアーズ)
「パブリックビューイングに来て欲しい」とイーグルスくんに頼まれた時、本当に私でいいのかしら?とすこし悩んだ。
確かに横浜市民として地域のパブリックビューイングに出ることには意義がある。
しかしイベント慣れしていない私が行って迷惑をかけないかという不安が付き纏っていたのだ。
けれどその気持ちはすぐに打ち消された。 2人はイベント運営に必要な指示を行政さんからすぐに貰って動いてくれ、私が迷わず動けるように支えてくれた。
「今日のイベントは思い切り楽しめそうね」
「当然です、パブリックビューイングって楽しいイベントですから」
ダイナボアーズさんが私たちの分のお茶のボトルを持ってきてくれる。
キックオフまで、あと10分。

・清水にて(レヴズ+アザレア)
前半終了が近づいた頃、隣に座るアザレアがうつらうつらとしているのに気づいた。 時計を見れば時刻は9時半を回っており、いつもなら眠りにいている頃合いだと気づく。
「アザレア、眠くない?」
「ねむくない……」
不機嫌そうに答えているのを見ると眠気と試合を見たい気持ちとでせめぎ合っているのを感じる。
寝させてしまうという手もあるけれど、まだ精神も肉体も幼いアザレアはむしろ意固地になって寝ない!と言い張る気がする。
「ねえ、アザレア。もう少ししたらハーフタイムに入るから眠気覚ましにお茶飲みに行こうか」
こんなに小さい子の夜ふかしなんて本当はよくないだろうけど、今日は特別。
2人でカフェインの入った静岡茶を飲んで眠気を覚ましたら後半の試合もアザレアと楽しめる。
「アザレアものむ」
その答えと同時に前半終了のブザーが鳴り響いた。


・東大阪にて(ライナーズ)
花園ラグビー場はもう夜の9時過ぎだと言うのににぎやかに華やいでいる。
キューデンヴォルテクスやレッドハリケーンズも呼んだけどあいつらは家でゆっくり見たい、と言うので今日は1人だ。
こうも賑やかな場所に1人だと何とも言えない寂しさが湧いてくる。
「小腹空いたわあ」
そう言ってもおやつをくれる奴はいない。
売店に足を向ければ大行列で、仕方なく並べば家族や友人と前半の試合内容を語らう人が多く見受けられる。
(……こう言う時、1人の寂しさが身につまされるわあ)

・姫路城にて(スティーラーズ)
試合終了直前、帰りの誘導のため椅子から立ち上がると夜の姫路城が目に入った。
試合前はそれどころじゃなくて気づけなかったがこのパブリックビューイング会場からはライトアップされた姫路城がよく見える。
(ライナーズとシーウェイブスにでも写真送ったろ)
写真を撮ってラインで送ろうとすると、ライナーズから『きょううちのマシレワがすごかったよな』と言うメッセージ。
『うちのぐーくんも頑張ったやろが!』
やっぱり姫路城の写真はシーウェイブスにだけ送ったろ。


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ワールドカップを待ちわびる

今日は午前中で仕事を切り上げて買い物に出ることにした。
関東と違いこの辺は台風の影響は少なそうだが、楽しみのために万全の準備は欠かせない。
「お、シーウェイブスか」
「ああ!こんな時間鉢合わせるなんて珍しい」
立ち寄ったスーパーで卵をにらんでいたシーウェイブスに声をかけると、いつもの水産加工場の仕事が悪天候で休みになったので雨が降る前に買い物に来ていたらしい。
「で、卵にらんでどうしたんじゃ」
「一個当たりの値段で六個入りを買うか、使い切ること重視で四個入りを買うかで悩んでたとこです」
「いま卵も高いからなあ……六個入り買うから半分持ってくか?」
そう聞くと表情が一気に明るくなって「是非!」と返ってくる。
六個入りの卵をかごに入れると「かご持ちますよ」と言うので、ついでにかごを預けることにした。
「ああそうだ、シーウェイブス必要なもん奢ってやるから荷物運び頼むぞ」
「いいんですか」
「今ポイント貯めててな、まだボーナスも残っとるからお前さんの日常の買い物ぐらいなら問題なく奢れる」
そう告げるとかごに牛乳を入れていた。現金な奴め。
さらに冷凍野菜や切らしていた日用品などをどんどんかごに入れていくシーウェイブスに、呆れ半分仕方なさ半分で見つめているとふと酒コーナーで足が止まる。
ちらっとシーウェイブスがこっちを見た。
飲みたさと遠慮が入り混じる気持ちを読み取ると「今回のワールドカップスポンサーに課金するか」と口にする。
「生ジョッキ缶6缶セット買うから3本もってけ、あとうちに貰った日本酒が二升あるから一升もってけ」
「じゃあ、遠慮なく」
そんな話をしながらレジへと向かうと平日昼間にしてはレジが混雑している。
2人分にしては買い込みすぎた荷物を抱えたシーウェイブスが「釜石さん買いすぎでは?」と聞いてきた。
確かにシーウェイブスがかご1つで収まっているのに対して、自分はかご2つと多めになっている。
「土日は天気悪そうだし、テレビでワールドカップ三昧しようかと思ってな」
「開幕戦からずっと見る感じで?」
「もちろん、フランス対ニュージーランドは見たいし日本対チリも楽しみだ」
「それならこの量にもなるか。でもどうせならパブリックビューイング来て欲しいですけどね」




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釜石とシーウェイブス。 ラグビーワールドカップは日本時間きょうの深夜開幕です

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ふたりでひとつ

千葉で事故が起きたという話を聞き、情報の確認のため急いで様子を見にいくことにした。
事務所で事故のことを把握して電話でうちの事務所側へ連絡すると千葉くんがいないことに気づく。
『千葉くんはどこですか?』
「実は事故の時に倒れてしまわれて、今は医務室の方にいらっしゃいます」
そう聞くとありがとうと軽く頭を下げると急いで医務室へと駆け込んだ。
消毒液の匂いに満ちた医務室の扉を開けるとベッドに横たわる千葉くんの目がこちらに向いた。 「京浜さん……?」
『倒れたって聞いたけど大丈夫?』
走り書きでそう聞くと「実は事故現場が高炉だったせいで軽い心筋梗塞みたいになっちゃって」と言いながらへらりと笑う。
事故現場は銑鉄をトーピードカーに乗せる場所だったと聞いている、場所が高炉に近いので心臓に異変が出たようだった。
『しばらく無理しないでいいからね』
「京浜さんが気にすることでもないでしょ、まあしばらくあの高炉使えないだろうけど他は生きてるし……」
『設備は修理すればすぐ動くけど肉体は案外脆弱だから無理すると他にクるわよ』
この辺の経験は渡田を見て知っている。
私たちの肉体は人間の肉体とそう変わりがないから、心臓をやられたとなると肉体にかかるダメージの大きさは計り知れないのだ。

『私たちはふたりで東日本製鉄所だもの、千葉くんが出来ない時は私がやる。それが分業だと思わない?』

千葉くんがその言葉に目を見開いた。
私たちの付き合いはまだ20年ちょっとに過ぎないけれど、今見せたへらりとした笑顔が私を心配させないために無理にした笑顔だということくらいその20年の付き合いでわかる。
『だから、しばらく無理せずしっかり身体を休めて』 「京浜さん……」
私は大丈夫だからと軽く撫でると「身体治ったら頑張りますね」と答えながら心からの笑みがこぼれ落ちていた。


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京浜と千葉。千葉の事故を聞いて。

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大きなナナちゃんの下で

久しぶりに名古屋の街中まで出たら、名古屋駅前のナナちゃん人形が作業着になっていた。
「でっか……」
見覚えのある感じの作業着ナナちゃんに思わず足が止まった。
でも、なんでナナちゃんがJFEの作業着なんだろう?
知多さんに聞くのが一番いいかな?と思ったが思い出す。
(そう言えば僕、知多さんの個人的な連絡先知らないや)
仕事上の連絡先はわかるからそっちで聞けばいいんだろうけど、微妙に仕事ではない事聞いていいのかな?と悩んでしまう。
そもそも同業種同県内の事業所ではあるけど知多さんと特別仲が良いわけでも無い。
(メールならいい、かな?)
そう思って通行の妨げにならない場所でメールしてみよう、と思って道の端に向かう。
すると『知多製造所の80周年』という文字が目に飛び込んできた。
「それでかあ」
思わず納得の声を上げると、メールの内容を変えようと決めた。
季節の挨拶はそこそこに本題はシンプルに。

『ナナちゃん人形見ました、80周年おめでとうございます』

これを機に少しは仲良くなれるかな。そんな気持ちでメールを送信した。

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名古屋と知多。ナナちゃん人形を見に行きたかった(願望)

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