「シーウェイブスって同郷のチームさんらと仲ええんやなあ」
試合後の飲み会を終えて駅まで送る帰り道、レッドハリケーンズがそんなことを呟く。
「県内で3つしかないプロスポーツチームだからなあ」
「少ないとこやとああなるんやなあ」
大阪はプロスポーツチームも多いのであの距離感はちょっと物珍しいのかもしれない。
今回は今度行われるスタンプラリーイベントの宣伝も兼ねて盛岡から来てくれたグルージャとビックブルズも交えての飲み会となり、色々と刺激を貰いあうことが出来て楽しかった。
「レッドハリケーンズもこういう集まり参加したことあるじゃろ」
「あるにはあるけど、あんな気の合う友人かって言われると微妙やなー」
「数が多いと気の合わない奴もいるか」
「せやなー」
飲んだ後独特のふわふわした気分で冬の終わりの道を歩くのは心地が良い。
ふと足を止めたレッドハリケーンズがある方向を見つめてから「なあ、アレ鹿?」と聞いてくる。
「鹿だな」
道の向こう側で植木をもしゃもしゃと貪り食う夫婦のシカだった。
「ホンマに町んなか普通に歩いとるんやなあ」
「昔はそんなに多くなかったんだけどな」
そういえばグルージャも初めて鹿を見た時に『こんな街中に鹿?』と悲鳴を上げてたのを思い出す。
あの2人はまだ若いし盛岡の街育ちだからこの街に来るたびに新しい発見に目を輝かせていた。
「もう釜石には何べんか来とるけど、まだ知らん事ってあるんやな」
「そりゃそうだろ」
「今回の手痛い敗北とかな」
レッドハリケーンズ的には色々思うところがあったようだ。
「でもわしもまだ知らない事は沢山あるぞ」
「降格の哀しみとか?」
ピンポイントでそこを言うな。
「もっとほかにもあるわ」
「なら、いつか教えたるわ。降格と昇格の悲喜こもごもをな!」
釜石駅前に着くと、くるっと踵を返して俺の顔を見る。
「次は俺が勝ち点貰うたるからな!泣いて帰ること覚悟しとき!」
「勝ち点とたこ焼きを手に帰りたいけどなあ」
そう言いつつ手を振って見送る。
遠くからラグビーのために来てくれる人は本当にありがたい。
「……そうだ、明日はビックブルズの試合に行くんだった」
良き仲間に恵まれた幸運を抱きつつ、今日はゆっくり寝ようと思った。
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シーウェイブスとレッドハリケーンズ
釜石行きたかったなあ(遠い目)