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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

何でもない日のティーパーティ

「またええケーキ買うてきましたね、記念日でもないのに」
小皿に乗せられたのは艶やかな春苺の乗った苺のモンブラン。
ケーキに刺さった小さなカードには北野にある人気のケーキ屋の名前が記されており、いつもよりいいものを買って来たのだという事はすぐに察せられた。
「あら、記念日じゃないと高価なケーキを買っちゃいけないとでも言うの?」
「別にそういう訳やないですけど、こういう高いもんは加古川さんやいつもの女友達らと食うたほうがええと思いますけどね」
「加古川の分は残してあるわ、それに今日は『何でもない日おめでとう』って気分だったのよ」
「……ほんならいいですけど」
マグカップになみなみと注がれた温かな紅茶は、いつもよりも心なしかいい香りがする。
(いつもよりええ茶葉開けたのか、ちゃんと水買うて淹れたのか……まあええか)
一口飲み込んだブラックティーのほのかな苦みと香りでケーキの甘さを静かに味わっていると、ふいに口を開いた。
「つくづく思うけど、生きてるからこそこういうお茶も飲めるのよね」
「そうですねえ」
「排球団や野球部が生まれた日もめでたかったけれど、生まれて苦しみながらも生き延びて迎えた今日もきっと同じぐらいめでたいと思うの」
ふいに姐さんの口から零れた兄弟たちの名前に、一瞬手が止まる。
生きられなかった兄弟たちのことをその口から聞くのは久しぶりのことだった。
「……もし、私のためにあなたを死なせることがあったら私を恨んでね」
「たぶん恨めないと思いますけどね」
亡き後輩のことを思い出しながら、そんな台詞を漏らした。



「それでも、今日まで生き延びたことを祝った方がええんとちゃいます?」


神戸ネキとスティーラーズさん。

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ジントニックと東京の夜更け

シーズンオフは退屈だ。
仕事が嫌いな訳ではないけれど、ラグビーをするために生まれた訳なんだからそれをやらないことがとにかく退屈なのだ。
ワインでも飲もうかと思ったけれどやっぱりいいかと諦めて戻してしまう。
ポケットに突っ込んであった携帯が低い音で着信を知らせてくる。
『サンゴリアス?』
「なんだ、ブレイブルーパス先輩か」
『それが先輩に対して吐く台詞?』
「いえいえ、でご用件は?」
『ドライジン貰ったんだけど一緒に呑まない?』
「行きます」
『じゃあ今から来てよ、あと割り材もよろしく』

****

そうして尋ねた部屋には、イーグルスとブラックラムズさんもいた。
「おつかれさまー」
「久方ぶりだな、サンゴリアス」
「ブラックラムズさんもお久しぶりです、イーグルスも」
割り材の入った袋を机に並べれば、あっちこっちに散らばったレコードやCDのなかでレコードプレーヤーの前に座り込むブレイブルーパス先輩がそこにいた。
その傍らにはジントニックの入ったグラスがぽつんと置かれていた。
「……なにしてんですか」
「次なに流すかなって」
「今日はクラブナイトがテーマの飲みらしいですよ」
「へー、それで割り材持ってこいって言ったんです?」
「そういうこと。サンゴリアスも好きなのあったらかけて良いよ」
足元に散らばっていたレコードを一枚取って再生させてやれば、今では懐かしくなったロックの名曲が流れ出す。
「懐かしいですねえ」
「最近の曲じゃないか?」
「僕にとっては懐かしい曲なんですよ」
これならクラブナイトにはぴったりの歌だろう。
「踊ります?先輩」
「サンゴリアスが踊りたいなら」




ただ東京組をキャッキャさせたかった。
あんでぃもりのクラブナイトは東京組の歌だと思うんですよね。

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なぜなにスーパーラグビー

ゆるっとした小ネタ。
書いている人がまだ新米なので間違い・勘違いも含まれている可能性がございます。


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春近く

大都会にも春の気配が近づいている。
ふらっと立ち寄ったビルの片隅にその少年はいた。
「調子はどうだ、サンウルフズ」
「サンゴリアスさん、お仕事サボっていいんですか」
「俺がいなくても父さんたちはちゃんと会社回してくれてるから大丈夫だよ」
それに俺たちなんぞは父さんからすればいてもいなくてもそんなに大差ない、ということは敢えて伏せておいた。
手土産代わりに持って来た甘めの缶コーヒーを差し出してやれば遠慮がちに受け取ってくる。
「開幕戦準備に追われてバッタバタですよこっちは」
「土曜日にホームだもんなあ、よく頑張ってて偉い偉い」
髪を軽く撫でてやれば不満そうにその手を押しのけて「……トップリーグの皆さん全般的に僕のこと年下扱いしますよね」とぼやいた。
「スーパーラグビーにおける日本代表って言われても実際年下だしな」
「まあそうなんですけどそれはそれで大変複雑というかですね……」
「じゃあ今季は全勝して俺たちをアッと言わせてやれよ、みんなで見にいくつもりだしな」
にっと笑ってやれば「……当然です」と呟いた。




サンウルフズとサンゴリアス。
開幕戦見に行こうかなあとぼんやり考えてはいるけど見に行かないで終わりそうな予感。

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便りは来ない

目が覚めて一番最初に目に入ったのはいつもつけているお守りと黒い石。
いつも寝るときは枕元に置いているのだから当然と言えば当然のことだろう。
ピンと張りつめた冬の朝の空気に抗ってお守りと黒い石を首に飾る。
おはようさん、と囁くような筑豊訛りが響く。
「……配炭か」
この声は半世紀以上前に死んだ友人の声であった。
そう言えばこの石は彼が死んだときに形見として拾った石炭のかけらであったことを思い出す。
半世紀という月日の中で朧気になっていく友人を忘れるのが恐ろしくてこうしてあの日拾った石炭をネックレスにしたのだ、それすらも忘れてしまうとはつくづく嫌になる。
彼の元にいた選手数名がうちに来たとき、彼の記憶や声の一部がこちらに移されたらしく時折こうして彼の声を聴くことがあった。それも記憶にある限りここ5年ぐらいは聞いた記憶が無かった。
頭の中の掠れた断片的な記憶が再生させているものなのか、それともそれ以外の何かなのか。それすら判別がつかない。
彼のことを忘れるべきじゃない、と小さく自分に言い聞かせて布団から出ていく。
この石の意味すら忘れてしまったら、きっと君のことはどこにも残らなくなってしまうから。



キューデン先輩の話。

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