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コーギーとお昼寝

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きみと踊れば

じくじくとした背中の火傷の痛みのせいで、お風呂に入れる気がしない。
「大丈夫か?」
日鋼室蘭が心配そうにこちらを見てくる。
仕事の隙間隙間に顔を出してくれた片割れにして兄たる存在に力なく笑いかける。
「無理すんなよ。とりあえず汗拭く用の濡れタオルあるけど、使うか?」
「ありがと」
よっこいしょーと体を起こし、ぐりぐりと体中の汗を拭う。背中側は届かないので拭いてもらう形だ。
多少はこれでさっぱりしたので何とかなりそうだ。
「あとは火傷の軟膏塗るんだっけ?」
「うん、塗ってくれる?」
人間ではない俺たちに薬は大した効果はないけれど、痛いものは痛いのでこうして痛み止めなどの薬を貰うこともある。
優しく軟膏を塗って貰えば少しはじくじくとした痛みも落ち着いてくる。
「……釜石には悪い事しちゃったなあ」
「なんでだ?」
「だって今日鉄の記念日じゃない?せっかくの誕生日に水差されたってなりそう」
「釜石だってそこまで心狭くないだろ」
「八幡もさ、今年こそは釜石のとこに行くつもりだっただろうし」
こういう事を考えるとどうにも申し訳ない気持ちになる。
9月の鉄鋼スラグ流出事故で高炉の改修をしたばかりだっていうのにこの火事だ、今頃八幡も本社でてんやわんやだろう。
「それも上に立つ人間の仕事だよ」
「……ならいいんだけど」
「まあこういう日は色々物思いにふけりがちだし、踊るか!」
「なんでそうなるの?!」
パソコンを開くと愉快なワルツが流れ始め、僕の手を取ってくる。
そのリードに合わせて小さな部屋でめちゃくちゃに踊りだせば、だんだん楽しくなってきた。
次は激しめのタンゴ、さらにポップなダンスチューンまで、めちゃくちゃに踊っていくうちに気も晴れてくる。
そうやってめちゃくちゃに踊って疲れた体は5曲もやると休養を求めてきた。
「お腹空いた」
「だな、そろそろ夕飯食おうか?」
やり方はめちゃくちゃだけど、気分転換にはなった。

(きっと僕が弟である限り兄には勝てないのかもなあ……)

そんな事を、ふと思った。

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室蘭兄弟のお話。
室蘭製鉄所の火事、被害者ゼロで鎮火してよかったです……。

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