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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

出張帰りのひとやすみ

慣れない出張、慣れない仕事の疲れが地味に蓄積しているように思う。
新潟駅のベンチで腰を下ろしながらスマホで時間を確認していると釜石さんから電話が来た。
『名古屋?今大丈夫か?』
「大丈夫ですよ。ちょうど帰りの新幹線待ちです」
『ならちょうどいいな。お前さん八幡に仕事終わりに本社来るよう言われてたろ?』
「そうですけど、何かありました?」
『あいつ急に永田町に呼び出されてな、だから今日本社に来てもあいついないんだ。だから今日は直帰してゆっくり休んどけ』
そう言われるとちょっとびっくりして、一瞬言葉に詰まってから「良いんですか?」と聞いてみる。
釜石さんは『本社の奴が明日代わりに報告してくれるだろ』と軽く答えてくれる。
「分かりました」
電話を切るとうちの職員さんに何があったのかと聞いてくるので、事情を伝えると納得して本社の人にも伝えられる。
もう6時前だし、今から新幹線で東京着いても遅いから直帰でも良いのかもしれない。
予約した新幹線まではまだ40分くらいはある。

(……前教えてもらったとこ、行ってみようかな)

*****

新潟駅の駅ビルの中には日本酒好きの楽園と呼ばれるお店がある。
「名古屋さんもここ知ってたんですね」
同じように行ってみたいとついてきた職員さんが不思議そうにそう聞いてくる。
「この間中村さんに教えて頂いたので」
酒好きの職員さんの名前を挙げると「あー、あの人」と納得してくれる。
早速小さなおちょこで人気のお酒を飲んでみると、お米の甘さや旨みがふわっとやってくる。
(あ、おいし……)
小倉さんほどお酒に強くないし、此花さんほど好きでもないけれど、美味しいお酒は好きだ。
(そういえば釜石さんもお酒割と強いよなあ)
下戸の多い名古屋企業勢の中で僕が割と酒が飲める方なのは、同じ血を分けて貰ったせいなのかもしれない。
違う日本酒も試してみるとこっちは酸味が強くてスッキリしている。僕の好みではないけどこれはこれで美味しい。
「新潟出張、大丈夫でした?」
「大変でしたけどとっても勉強になりましたよ」
「鉄分入りスイーツとかヤバかったですよね」
「あれはすごかったですよね、スノーピークさんのお話も製品に活かしたいですよね」
ああだこうだと喋りながら日本酒を飲んでみると疲れがゆっくり溶けていく。
(出張帰りの楽しみってこういうのなんだろうなあ)


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名古屋さんの新潟出張。名古屋製鉄所の職員さんが燕三条のイベントに行ってたと聞いて。

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水出し茶を手に

久しぶりに宝山が日本に来ると言うので、今朝から水出し茶を準備して待つ事にした。
白牡丹の茶葉をミネラルウォーターのボトルに入れて半日置いておいたので淡くお茶の色もついている。
「你好,好久不见了(こんにちは、お久しぶりですね)」
「我已经很久没有来这里了,宝山(こちらこそ久しぶりだな、宝山)」
立ち話も何だからと部屋にあげてから一番によく冷えたお茶を出せば「白牡丹の水出しですね」と薄く笑う。
「今日も暑いから水出しがいいかと思って。でもなんで日本に?」
「君津老師にはちゃんと話しておきたかったので」
再びお茶に口をつけてから切り出されたのはある事実だった。
「弊社と日本製鉄はこの度提携を終了する事になりました」
「……そうか」
「あの人にとって今の中国は市場として魅力が無いんでしょうね。会社としての付き合いは多分これで終わりでしょう」
宝山が来日したのはたぶんそれ絡みの話し合いなのだろう。
いずれそういう事はあるだろうと思いつつも、兄弟同然であった宝山とほぼ会えなくなるだろうことは淋しく思える。
(まあ八幡と宝山が決めた事だし俺がどうこう言う権利も無いけどな)
この寂しさを例えるなら、子の独り立ちを見守る親だろうか?まあ俺の親であるはずの八幡は個人としてはあんまり俺に情を掛けてる印象ないけど。
「別にこれが今生の別れではないので、また東京に来る時には個人として遊びに来ますよ」
「それは知ってる、ただ少し会う機会が減るのが寂しいってだけだ」
「元から多くないですけどね」
困ったように笑いながらよく冷えたお茶に口をつける。
空になったグラスにお茶を注いでやれば宝山は嬉しそうに笑う。
名目上の繋がりが消えたところで、半世紀かけて作られた関係性が消える訳でもない事は幸いなのだろう。
「まあ、なんだ。お前も頑張れ」
「当然です。そうだ、お土産あるんですよ」
カバンから中国茶のお茶請けを出してくるので「谢谢」と受けとった。



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君津と宝山の話。日鉄が中国から手を引くらしいと聞いて。
この二社はガチで殺りあってない印象あったので寂しいけどまあしょうがねえわな……と言う気持ち。

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妹が泊まりに来たもので

「なんか随分買い込んでません?」
近所のスーパーで遭遇した職員の人が俺にそんなことを聞いてきた。
「明日水島と福山さんが泊まりにくるから買い置き多めに買っとこうと思って」
「へえ、鹿島さんとか君津さんじゃないんだ」
あの2人は他社だけで時々遊びに来てそのまま泊まる事が多いからみんな慣れてるけど、水島と福山さんはだいたい近くのホテルを取るから泊まりに来ることはあまりない。
「君津は直接行けるしねえ」
「直接……そっか、明日社会人野球の1回戦ですもんね」
「野球見に来たのはいいけど宿取り損ねたらしくてさ」
色々言いつつ荷物を放り込んだらもうカゴがいっぱいになってきたな、と思ったら職員さんが自分のカートに載せた空いてるカゴをくれたのでありがたくいただく。
「まあ水島も、水島を大事にしてくれてる福山さんも、別に嫌いじゃないしいいんだけどね」
「兄妹仲良くていいですね。じゃ、俺行きますね」
そう言って別れてから、そうかな?とちょっと考える。
よその兄妹仲については良く知らないけど君津の妹分だった東京は君津のとこに時々泊まってた記憶がある。
(まあ仲良いって言われる分にはいいか)
そう考え直してアイスのコーナーで水島の好きな箱アイスを放り込んだ。


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千葉と水島の話。明日の社会人野球はJFE東西が揃うらしいので。

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ままならぬ世界の隅っこで

「やっ!」と陽気な顔をした鹿島が突然遊びに来たので、「……またサボりか?」と思わずため息が出た。
「サボりじゃないよ、今日は夜勤明けの休みですー!つばさが今北海道に遠征行っててお土産くれたからお裾分けに来たんだけど」
「お前には夜勤明けの疲労がないのか?」
「しっかり寝たからない!」
さっき仕事を終えて家に戻ってきたばかりで疲れの抜け切らない俺は、めんどくさくなってとりあえず鹿島を家にあげることにした。
人んちの台所を我が物顔で漁っておやつを皿に出し、冷蔵庫のアイスコーヒー(結構いい奴)を勝手に開けてグラスに注ぐのを見ながらやれやれという気分になる。
「ちなみにお土産って?」
「三方六と赤いサイロ、これならコーヒーが合うと思ったんだよねー」
三方六をかじってコーヒーを飲むと「うん」と満足げに笑った。
「お前本当常に楽しそうだな」
「此花が『楽しいことと美味いものは多いに越したことはない』って言ってたからね」
住金のちいさな最年長の姿を思い出して、確かにそんなこといいそうだな……と謎に納得してしまう。
「それこそ世の中って納得いかないこと多いじゃん?しかもそれが自分自身のことなのに俺が決められない、なんてことも結構あるし。だからこそ楽しいことと美味いもんは常に多めに置いておけって言うのが此花の教えなんだよ」
鹿島の言う自分のことなのに自分で決められないと言うことにはそれなりに心当たりがあり、確かにそうかもなぁと思う。
(でもこいつ、アントラーズ売却の時に八幡をバットで殴りつけたんだよな……)
本社に行ったうちの元職員から聞いた話をする思い出すが、美味いものや楽しいことだけでは自分を宥められない日もあるのだろうと言い聞かせる。
「君津だってそんな日、あるでしょ」
「……まあな」
東京と最後に会った日のことを思い出せば、その言い分には納得するものがある。
「今日は誰かと美味いもん食いたい日だっだってことか?」
「ま、そんなとこかな」
そんな事を言いながら鹿島が三方六を1人で半分も 以上平らげたので「……俺の分ちゃんと残せよ?」と本気で告げると「まだもう一本あるよ」と言って差し出してきたので、俺も三方六を丸齧りするのだった。


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君津と鹿島と思うところある夏の日の話。

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火の消えた海辺で

久しぶりに広島に行く機会があって、ふらりと呉に立ち寄ることにした。
かつて製鉄所のあった海辺は空っぽの大きな空き地になり、その脇には立て看板が立っている。
立て看板やポスターによるとこの空き地に複合防衛拠点設置の話が出ているのだと書かれ、それは平和のまち広島に相応しくないとチラシは語り掛ける。
「日新製鋼の?」
そう声をかけたのはこの世を去った弟分によく似た顔の、けれど弟分よりもいくらか年かさの海の匂いがする人だった。
「ジャパンマリンユナイテッドさん?」
「おひさしぶりです」
「こちらこそ」
顔は何度か合わせたことはあれど、決して親しい仲でもなく何を語ればいいのか分からない。
いかんせんあの可愛い末っ子に似すぎていて、まるであったかもしれない未来の姿のようにも見えるのだ。
「製鉄所がなくなってずいぶんこの街の海は暗くなりましたよ」
それははっきりと想像できる。
高炉のある街の海は高炉の火に照らされていつも明るい事はよく知っている。
鉄屋の端くれとして神戸や尼崎の高炉から立ち上る明かりに憧れ、大きな企業になったらあんな風に夜の海を照らす高炉を自前で持てるのだろうかと問いかけたものだった。
けれどその高炉の火はもう消えて跡形もない。
「……たまに思うんですけどね、」
「はい」
「工場ってのは大きな話題にならない時がきっと幸せなんだと思うんですよ。
事故や縮小や閉鎖の話なんか出ないでただただ物を作って世の中の一部になってるときが、いちばんね」
その言葉には人生経験に基づいたじっとりとした湿度と重みが籠っていて、どこか僕を責めるような趣すらあった。
「ずっと、幸せな時間を続けてあげられたらよかったのにな」
夏の始まりの瀬戸内はじりじりと焦げ付くような日差しが降り注ぐ。
何を間違えたのか、何がしてあげられたのか。その問いに答えは出てこない。



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次屋とジャパンマリン呉。
以下ジャパマリ呉さんの裏設定(要反転)
ジャパマリ呉さんは元呉海軍工廠と同一人物で、実はこべネキの過去編にもちょこっと出てる。呉さんと顔がよく似ているのは海軍工廠の一部をそのまま転用して生まれた影響。ジャパマリ呉の感覚的には自分の半身持ってかれて生まれたちいさきいのちだけど、呉さんはあんまりその認識がない(知識とかぼんやりした前世の記憶としては理解してた)のであんまりピンと来てない。 現状この辺掘り下げる予定はないのであくまで裏設定です

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