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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

大きなナナちゃんの下で

久しぶりに名古屋の街中まで出たら、名古屋駅前のナナちゃん人形が作業着になっていた。
「でっか……」
見覚えのある感じの作業着ナナちゃんに思わず足が止まった。
でも、なんでナナちゃんがJFEの作業着なんだろう?
知多さんに聞くのが一番いいかな?と思ったが思い出す。
(そう言えば僕、知多さんの個人的な連絡先知らないや)
仕事上の連絡先はわかるからそっちで聞けばいいんだろうけど、微妙に仕事ではない事聞いていいのかな?と悩んでしまう。
そもそも同業種同県内の事業所ではあるけど知多さんと特別仲が良いわけでも無い。
(メールならいい、かな?)
そう思って通行の妨げにならない場所でメールしてみよう、と思って道の端に向かう。
すると『知多製造所の80周年』という文字が目に飛び込んできた。
「それでかあ」
思わず納得の声を上げると、メールの内容を変えようと決めた。
季節の挨拶はそこそこに本題はシンプルに。

『ナナちゃん人形見ました、80周年おめでとうございます』

これを機に少しは仲良くなれるかな。そんな気持ちでメールを送信した。

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名古屋と知多。ナナちゃん人形を見に行きたかった(願望)

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ただの夏の日

会社のイベントでお祭りに参加することになった。
特段こういうイベントが好きな方ではないので面倒に思うこともあるが、皆が楽しそうにしている空気をぶち壊す事をするほど幼稚ではなかった。
それにこれは四年ぶりの祭りだ。 多くの人がこの夏祭りを望み、この夜を楽しんでいる。
ぼんやりと屋台のご飯を食べながら祭りの景色を眺めて過ごしているとふいにこえがする。
「もうすぐ花火の時間ですよ」
そのとき、パンと破裂音がして光の筋が夜空へ昇っていく。
まっすぐに伸びる光の筋が一輪の光の花へ咲いていく。

(……ああ、いい花火だ)
繰り返し花火が開いては消えていくのをぼんやり眺めて、その夜をただ見つめて過ごしていた。

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直江津の話。製鉄所さんは時々地域のお祭りにもいます。

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君とならやけ酒も楽しい

「ん゛あ゛ー゛!゛せっかく仕事休んで東京まで来たのにうちも君津のとこのかずさくんも負けるとか!」
鹿島が荒れ気味にそう叫ぶ。
気持ちは分かるがジョッキで机をドンドンするのはやめて欲しい。
「しょうがないだろ、勝負事は時の運だしな」
「なんかヤマハに負けたのもちょっと悔しいんだよねえ、サッカーならうちが勝てるのに!」
「別競技の話すんなよ……あとつまみ次何がいい?」
「軟骨食べたい」
「はいはい」
タブレットで手早く注文を出し、ついでに俺もレモンサワーを追加する。
かずさマジックの敗戦はやはり悔しい、悔しいのだが。
「こうやって試合の話しながら酒飲むって事自体が十分楽しいんだよな」
「それはそうだけどねえ……来年は日程ズレても俺かずさくんの応援行こうかなあ?」
「来るんなら歓迎するぞ」
今年は応援に来たメンツも多くて会って話をする楽しみを思い出せた。
「鹿島、」
「うん?」
「俺も来年はお前んとこの野球部応援いくわ」


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君津と鹿島と都市対抗

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偶像は涙腺を持たない

『代わりに様子見てきてよ』という電話と一緒に電子マネーを送金されたので、休日だというのに車を走らせている。
目的地は鹿島の暮らす社宅の一室。
(此花も甘いよなあ……あいつがミスったからってどん底に落ち込むタイプには見えねえけど)
鹿島が昨日大きな事故を起こして落ち込んでそう、という心配は分かるが俺と違ってすっぱり切り替えてそうな気がする。
まあ落ち込んでいないわけではないだろうし、今頃事故の原因究明に必至だろうから陣中見舞いという事にしよう。
少し前に飲みたいと言っていたスタバの新作フラペチーノを片手に事務所の扉を叩く。
「あ、君津さんご安全に。どうかなさいましたか?」
「鹿島の陣中見舞いに来たんだけど」
「今日ちょっと調子悪いらしくて自宅のほうにいるみたいです」
「わかった、あいつの家行ってみるわ」
事務所から車で10分。
社宅にある鹿島の部屋のチャイムを鳴らすとゆっくりと鹿島が現れた。
「元気そうだな」
「落ち込んでいらんないからね」
鹿島の足首には包帯が巻かれており、どうやら影響が足のほうに出てるらしい。
(災害や事故とかで設備が壊れると体に不具合出るのめんどくせえよな)
自分も身に覚えがある体の不具合にほんの少し同情しつつ陣中見舞いのフラペチーノを渡す。
「あ、これスタバの新作じゃん!ありがとね」
「それと此花が心配してたぞ、電話で代わりに俺に様子見に行ってくれって頼んできたし」
「……大丈夫だよ、今の俺はみんなに愛される最高の俺だもん」
鹿島はフラペチーノを手に笑うが、その笑顔には僅かな無理を感じた。
昔の自分は愛されていなかったとでも言うようなニュアンスに違和感を抱きつつも、そこを突っ込むのは無粋なように思えてあえて口にはしなかった。
「しばらくは事務所行くのもしんどいから連絡あるときはオンラインでお願いできる?」
「分かった、千葉にも言っとくわ」
「ごめん、俺仕事の続きあるから戻らなきゃ」
「じゃあまた今度な、足大事にしろよ」
立ち話を遮るように扉が閉まる。
確かに今日はいつもよりも気が弱っている気がするが、そこに俺が立ち入っていいのかも分からない。
車の扉を開ければまだ冷房の冷気が残っていて、話していた時間の短さを感じさせた。
自分の分にと買った檸檬のフラペチーノはやけにすっぱかった。

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君津は優しいなあ、とフラペチーノを片手に思う。
甘味の奥にレモンの酸味が効いたそれを飲みながら仕事用PCを流し見る。
(……別にこの事故で俺が死ぬなんてことはないだろうけどさ?)
幼少期から刷り込まれた愛されないという不安と恐怖はこういう時になると首をもたげてくる。
胸の奥に秘かに残る不安と恐怖と愛されるための努力で埋めてきたけど、こういう時はどうも駄目だ。
「心底愛されてみたいなあ」
そんな独り言は梅雨の晴れ間に空に吸われていった。


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君津と鹿島の話。

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さよなら銀河鉄道

もう夜だというのに遠くから汽笛の音がした。
「何の音だ?」
「SL銀河じゃないですか?きょうラストランらしいですよ」
従業員が何度か見たことのある観光列車の名前を挙げた。
確かにSLは時折見かけていたが今日が最後なのだと言われるとちょっと寂しく思える。
「SLがなくなったと思ったら最近は観光用で持て囃されて、時代の変化の速さにびっくりするな」
「釜石さんはSLしかない時代からここにいる訳ですもんね」
「物の移り変わりは早いな。
ただ、同時に不便だと言って捨てたもんをまた拾い上げたりするから人間ってのは不思議だよな」
一度は主役の座から降ろされたSLが観光用と言う名目で復活し、またここを去っていく。
それは人間のエゴであるがそのエゴによって生まれて生かされているのも事実。
「その拾い上げる行為もまた愛ってやつだと思いますよ」
思い返せば自分もまた人間の愛で瀕死の淵から拾い上げられ、こうして生きてきた身の上だ。
それを愛と呼ぶのなら自分は確かに愛に生かされている。
「また、そのうちここで汽笛が聞ける日が来るのかもなあ」



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釜石おじじとSL銀河ラストランの話。

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