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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

風邪の話

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37度0分。
緩慢な動きで確認した体温は微熱のようだった。
メールで職員に確認を入れてみると、どうも空調設備の不具合が出たとかで仕事への支障は出ないが不具合の出た範囲が広いので修理には丸一日かかりそうだという。
身体が重くて、もう何もする気になれない。
(……葺合がそばにいてくれたら良かったのに)
そう思いながらそっと目を閉じた。

****

「……みや、西宮」
私を呼ぶ声がしてゆっくりと目を開けると、尼崎がいた。
此花と同じ瞳の色をした彼はひどく心配そうだ。
「あまがさき?」
「そうだよ、尼崎だよ。此花が『西宮に電話入れてるのに繋がらないから様子見に行け』って言われたの」
「ああ……余計な心配かけてごめんなさい」
「体調悪い?」
「設備が調子悪いみたいで、どうもその余波が私の方に来てるみたい」
「そっか。千葉くんとか水島ちゃんとか電話入れたら?」
「向こうは向こうで忙しいから……明日には体調も戻ってるだろうし」
それは本心だった。
千葉も水島もうちの大切な主力なのだから、すぐに治る程度の不良で余計な心配をかけさせてもしょうがない。
「西宮って、そういうトコは似てるよね」
「……誰に?」
「葺合さんに。ほら、あの人も人に弱み絶対見せないぞって感じだったからさ」
「頑固さは川鉄の伝統なのかしらね」
「そうかもね、俺今日は暇だし葺合や此花の代わりぐらいにはなるよ」
「大丈夫よ」
尼崎の声掛けで、少し気が楽になった。
「本当にどうしようもなくなったら電話するから」
「うん」




西宮と尼崎。実は隣人な二人のはなし。

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スポーツの秋です!

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ゆるっとした小ネタです


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節目の夜には

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「この後ご飯食べに行きません?」
ふと思い出したようにそんな言葉が和歌山の口をついた。
「ご飯ですか?」
「ちょうど昨日が新日鉄住金5周年だったでしょう、その記念です。釜石さんと呉さんにも声はかけてあります」
「……釜石が行くなら行きますけど、どこか予約でも?」
「もちろん」
和歌山はにまっと口角を上げてほほ笑んだ。

****

和歌山が選んだのは都内の高級すき焼き店の座敷席であった。
海沿いに立地していることもあり、海鮮は飽きているからこその選択なのであろう。
一番の上座を与えられた釜石の横に私が腰を下ろし、その向かい側に和歌山と呉が座る。年功序列順らしい。
さっそく目の前で野菜と肉が割り下で煮込まれだす。
「ああそうだ、お酒全員ビールでいいですか?」
「おう、八幡も良いよな?」
「私もビールで」
「……自分はノンアルコールで」
「了解です」
お酒と軽いつまみを持ってきてもらい、早速乾杯となる。
特別ビールが好きな訳ではないが何となく一杯目はビールと言う妙な刷り込みがある。
「にしても、和歌山も良く覚えてましたね」
「記憶力はイイ男の必需品ですから」
冗談交じりの切り返しに「そう言うものなんですかね」とぼやく。
「ああ釜石、二杯目要ります?」
「おう、次は南部美人が良いな。呉も遠慮せんでいいぞ」
「昨日呑み過ぎを周南に叱られたばかりなので遠慮しておきます」
呉がたいそう可愛がっている女装趣味の少年の名前を挙げてそう言うので「ならしょうがないな、」と言いながら早速日本酒を注文する。
ついでに和歌山もマイペースにレモンハイを注文しており(と言うかこんな高級店にレモンハイなんてあるのか?)なんだかもう既に無礼講の気配がする。まあ、あまり堅苦しい食事会だと呉が委縮してしまうだろうから多少無礼講なほうが気楽でいいのかもしれないが。
私と釜石は先付けと前菜をつまみながら酒を飲み、和歌山は呉に周南の話を振っている。同じように愛するものを持つ間柄として聞いてみたいことでもあるのだろう。
「……うちも随分賑やかになったよなあ」
「賑やかと言うのは?」
「昔は二人ぽっちだったのに、住金連中がいて、神鋼がいて、川鉄やNKKがいて、日新もいて、お前や君津に至っては海外にまで弟子が出来て……」
「まあ昔よりは賑やかになりましたよね」
「まったく、寂しくなるのはうちばかりか」
近年の釜石は、どちらかと言えば寂しい事や哀しい事の方が多かった。
それでもあの土地に愛され必要とされて生きる存在である以上、それを裏切ることは微塵も頭のうちに無いようだった。
「……私がいますよ」
すき焼きはまだ煮えそうにない。




八幡と釜石と和歌山と呉

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生きたがりな彼女

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「この間、八幡に自分の仕事ぐらいちゃんと定めろって怒られたのよね」
姉さんがぽつりとそんな言葉を漏らした。
グラスの氷はだいぶ溶けていて、そう言えばこれでもう7杯目のスコッチだと思いだした。
「あいつならそう言うだろうね」
此花さんが軽く笑いながら、グラスにウィスキーを注いできた。
「お水取ってきますね」
「いやいいよ、私が取ってくるから加古川が聞いてやんな」
此花さんがそう言ってふらふらと台所に向けて歩き出した。
妙にハイペースな姉さんに合わせて此花さんも相当飲んでいるはずで、足取りはどこかおぼつかない。
「八幡に言わせれば、私は『意地汚い』そうよ」
「私はそう思わないですよ」
「死ぬときは潔く死ぬものだって、今どきそんな事言う奴がいることに驚きだわ……ねえ、加古川。あなたも覚えてるでしょう?19951月17日を」
その日付はきっと神戸の人間ならば誰もが忘れられない日付だ。
当然私もその日の記憶ははっきりとある。
「ええ」
「死は、いつだって私たちの背後に張り付いている。『話好きが暖炉に背を向けるように、 人は死と背中合わせになっている』」
「ポール・ヴァレリーでしたっけ」
「ええ。私ね、八幡と言う人間の人間性だけはどうしても好きになれないの。八幡は、死を知らないもの」
「……死を知らない?」
「死ぬという事を皮膚感覚として分かってない。本質的に日本国のことと、釜石のこと、まあ釜石は個人としての感情だからビジネスはまた別でしょうけど、それ以外の大抵のことは心底どうでもいいと思ってる。ああいうところだけは、私個人の感情として好かないわ。まあ単純バカだと思えば愛嬌はあるけれどね」
「でも、ビジネスとしては切らないんですね」
「個人の感情と生存戦略は別よ。

……加古川、神戸製鋼の火は永遠に絶やさないでね。たとえ世界中の高炉の火が落ちて、鉄鉱石が地上から消え失せても、神戸製鋼の火はこの神戸の街で煌々と燃える炎であるべきなの」

姉の手が私の手に掴まれる。
その目に燃えるのは命への執着であった。
(そうか、私は神戸製鋼という命を引き継ぐ炎なのだ)
たとえ自らの死が訪れようとも、神戸製鋼と言う名が存在する限りその存在が消え失せることはない。
「わかってます、」
この誰よりも生きることに執着する人の名を、私は永久に背負うのだ。





コベルコ姉妹の話。
BGM:ぼ/くたちがやり/ました

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おじいちゃん息してない

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ただのゆるゆる室蘭釜石の会話


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