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コーギーとお昼寝

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サマードレス

「さく姉本当にこれくれるの?!」
「……周南が好きそうだと思って買ったものだから」
桜島―僕の一番上の姉に当たる人―が、大阪で買って来たというパステルブルーのサマードレスに歓声を上げるとほんのわずかに口角を下げて満足だとほほ笑んだ。
久し振りにこちらまで遊びに来てくれただけで十分なのに、その上お土産まで持ってきてくれるなんて本当にありがたい限りだ。
「今度デートするときに着よ「でも買ってあげた私へのお礼にはならない」
間髪を入れずに告げられた言葉の意図は、今ここで着て見せろということ。
このドレスを今ここ出来ることがお土産を買って来たお礼になるということだ。
「……着替えてくるね」
「ん」
洗面所に移って先ほどまで着ていたロングTシャツとジーンズを脱いで、サマードレスに着替える。
そろそろムダ毛も全部剃らなきゃなあなんて考えるけど今日はめんどくさいからいいや。
薄化粧を落として同系色の青を基調にしたメイクに変えれば準備完了だ。
(ついでに写真も呉に送っておこう)
自撮りを加工無しで送れば後で返事が来るはずだ。
「出来たよー」
リビングの戸を開けて見れば、姉の表情の満足度がさらに上がる。
「今日も可愛く出来たでしょ」
「120点満点」




桜島と周南習作。

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君津老師と焼き小籠包

「您好、君津老師」
すらりとした体つきの育ちの良いオリエンタルな面立ちをした中山服の青年の来訪に思わず目を丸くした。
「……宝山?なんでいきなり」
「仕事で少し東京に来る用事があったんですよ、お邪魔して構いませんか」
宝山製鉄所はその設立から現在に至るまで君津製鉄所が深く関わった施設であり、俺にとってはまだ弟子とも呼べる存在である(ウジミナスも弟子ということにはなってるけど一応向こうの方が年上なので色々複雑なのだ)
「俺は良いけどあんまり綺麗じゃないぞ?」
昨晩遊びに来ていた千葉と鹿島に荒らされた部屋は2人をこき使ってあらかた片づけはしたものの、まだ完全に綺麗になった訳じゃない。
「大丈夫です、突然来たのは僕の方ですから」
「なら良いけど……その手にある袋は?」
その手に一緒にぶら下がっていた冷蔵用の袋を指さすと「生煎饅頭(焼き小籠包)です」と返ってくる。
「生煎饅頭か、上海にいた頃何度か食ったなあ」
「最近は日本でも手に入ると聞きましたが生煎饅頭は上海のが一番ですよ、東京のは所詮ニセものです」
「日本で食える奴もあれはあれで美味いんだけどな」
「台所お借りしても?せっかくなので焼きたてをご用意しようと思って準備して持って来たんです」
「自由に使ってくれていいぞ」
宝山がさっそくフライパンを借りて小籠包を焼き始める。
出会った時はまだぶかぶかの宝山服を纏った小さな子どもの姿をしていたが、いまや中国屈指の鉄鋼企業として日本の製鉄業に立ちはだかる壁になってしまったことを喜びたいような嘆きたいような複雑な心持ちになる。
しかしこうして俺の前にいるときは昔とさして変わらないままで、ニコニコと小籠包を焼き龍井茶を淹れてくるので可愛いものだと思ってしまう。
「前にプレゼントした中国茶道具使ってくれてるんですねえ」
「たまーにだけどな」
「ちゃんと大切に使われてる色をしてるから分かりますよ」
上海で宝山の面倒を見ていた時に覚えた中国茶は時折千葉や鹿島に乞われて淹れる程度だが、手入れとして個人的に淹れることもあった(道具は使うことが最善の手入れだと言うのは釜石の弁だ)のが道具そのものに出ていたのか。
「あ、生煎饅頭もそろそろかな」
そう言ってさっそく皿に盛って茶と共に目の前に並べられる。
「……なんというか、完全に俺が客人扱いだな」
「敬愛する君津老師とお茶をしたかったので」
「そうか」
なら仕事の方で俺たちに優しくしてくれと言いたくもなったがたぶん無理だろう。
「让我们吃吧(いただきます)」
「请吃很多(どうぞたくさん食べてください)」
焼き小籠包をレンゲに乗せて割ると美味しそうな匂いと共に透明なスープがじわりと広がってきて、あの頃のしんどい思い出がよみがえる。
「あの時はお前の上司に振り回されてひどい目に遭ったな」
「そういう時代でしたからね。さあ、冷める前に食べましょう」




君津と宝山。

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山頂の孤独

「そういやなんでお前代表権の譲渡まだしてないの?」
レールにまつわる打ち合わせを終えて帰りの新幹線まで暇つぶしにと称して立ち寄った開店直後の角打ちで、ふいに此花がそんなことを聞いてきた。
「何でって……だいたい新日鉄という会社の顔を誰に譲るんですか」
「君津か戸畑あたりにもう譲って隠居してもいい頃合いだろ」
「隠居って、あなた未だ仕事してるでしょう」
「ものの例えだよ」
「そうですか」
「で、なんで譲らないんだよ」
此花はよほどこの話に興味があるらしく、にやりと笑いながらハイボールを飲んでいる。
もうここまでくると答えるのも面倒だ。帰りたい。
「……特に理由はありませんよ」
それは率直な言葉だった。
言われてみれば確かに今の八幡製鉄所八幡地区は製鉄所としての機能のほとんどを戸畑に集約したため製鉄所としての機能は薄れており、私もまた近年は上や国の使い走りの方が仕事として多かった。
ならば君津や戸畑あたりに顔役を譲ってもいいのだがそれを考えたことは一度もない。
「ないのかよ」
「しいて言うなら、私以外に新日鉄の顔役が出来ると思えないって思ってるからですかね」
「まあ、確かに官営様の跡継ぎの名前は一人で背負うにゃ重すぎるけどなあ」
「重すぎるって?」
「素直な感想」
いつか、私がその存在を保てずに消えた時誰がその名前を背負って舞台に立つのだろう。
「……私と釜石が消えた時、会社も消えるんですかね」
「まさか」



八幡と此花

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あの日彼女は希望だった話

「小倉さん、お客さんが喫煙所に来てますよ」
「……喫煙所?」
「小倉さんに会いに来たって言うんですけど、小倉さんなら戸畑の本部事務所にいるって言ったら煙草吸って待ってるから来たら伝えるようにとって言って喫煙所行っちゃったんです」
顔馴染みの職員の様子からして、大方あいつだろうと予想がつく。
やれやれという面持ちで溜息を一つ漏らして「喫煙所行ってくるけん、後は頼んだ」と注げて喫煙所に向かう。
灰皿とベンチだけの喫煙所で新聞片手に座り込んでいたのは予想通りの相手だった。
「よう、久しぶり」
「……やっぱ此花か」
「やっぱって何さ」
「喫煙所で俺を待つ奴なんてお前しか知らん」
「あー、和歌山はいまは吸わないし八幡は煙草呑みだけど人を待つときに煙草は飲まないもんなあ……消去法的にあたしか」
納得したように此花が頷く。
せっかくなので俺の方も一服しようかと煙草に火を灯した。
「……お前さ、八幡や戸畑と一緒にされた事まだ恨んでるか」
「今更な話っちゃ」
「そうだけどお前をうちに迎え入れるとき言った事裏切っちまったなあって」
「『お前に世界を取らせてやる』……か」
「世界どころか日本一も取れなかったしなあ」
住友金属が新日本製鉄と合併した時、住金は国内3番手だった。
他にもあの合併では色々あったので此花なりに思うところがあるのだろうという事は常々感じていた。
「……和歌山がシームレスパイプの技術力で世界に認められとる、それで一応世界を取るって話は果たしたと思っとった」
「お前さんがそう思ってくれてるなら良かった」
此花は本気で世界を取りたかったのか、と今更ながら思い知らされる。
『八幡製鉄もUSスチールも、全部なぎ倒して世界を取る』
そう大ぼらを吹いた此花の手を取ったのは俺自身の意志だった。
浅野の旦那も安田さんもいないが、此花が俺を必要とした。ならばこの女と生きてやろうと、心から思って手を取った。




(やっぱり、あの日この女の手を取った俺は何ひとつ間違いじゃなかったな)


此花と小倉

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関西女子とショコラな話

『今年のバレンタインチョコ、届いたかしら?』
「届いたから電話してるんだよ」
『あらそう』
小さな箱には手作りのチョコレートケーキが2切れとホットチョコレートスプーン(金属製のスプーンの先にチョコレートがついている奴だ)が1つ。
神戸からのバレンタインプレゼントである。
「にしても2切れって他の奴にも配ったのかい?」
『もちろんよ、6号サイズで3ホールも焼いたのよ』
「……にしても神戸が料理って全然イメージ無いよねえ」
『随分な言い草ね、一度あなたに教えたじゃない。トルタ・カプレーゼの焼き方』
神戸は今は仕事のほとんどを加古川に譲っており(代表権だけは移していないようだが)生活においても加古川の方が何かと神戸の世話を焼いている印象があるが、言われて思い出した。

それはまだ、西宮と葺合が阪神製造所と呼ばれて一緒に暮らしていた頃の話だ。
「葺合にバレンタインのチョコを贈りたいと思うんだけど」
神戸の家でのいつものお茶会の最中、西宮が少し前からはやり始めたイベント名をあげると、神戸が「いいわね」とほほ笑んだ。
「バレンタインねえ……別に無理に流行に乗らなくても良いんじゃない?」
「別にそう言うんじゃなくて私がやってみたいなあって思っただけで!」
どこか慌てたように早口で色々と口走るけれど、要は年度末で忙しい時期ではあるものの大好きな葺合と恋人らしいことが出来たらという新婚らしい願望であった。
「まあ西宮がやりたいならやればいいよ」
「此花、あなた西宮の夫みたいなこと言うわね……」
「素直な感想口走っただけだよ」
神戸がチョコレートタルトの作り方を教えると言い出してそのまま台所へと連れて行かれ、ついでに加古川も参戦してのお菓子教室が始まったのである。
「イタリアのカプリ島って知ってる?」
「名前くらいはいちおう知ってるけど……なんで?」
「その島のお菓子でトルタ・カプレーゼって言うのがあってね、それがすごく美味しくて簡単なのよ。少し前に三宮のイタリアンで食べたんだけれど、すごく美味しかったからお店の人にレシピを聞いて最近よく作ってるのよ」
確認の目線を加古川に向けるとこくりと深く頷いた。
少しげんなりしてるようなのでもしかしたら、神戸と一緒にずっと一緒に食べているのかもしれない。少しだけ加古川には同情した。
西宮の方はグルメな神戸がお気に入りという時点で興味が惹かれるらしく、さっそく適当なチラシの裏紙とペンを準備して作る気満々だ。
嬉々として作り方を説明する神戸とそれを興味津々で記録する西宮に、私と加古川は少しのため息を漏らした。
「……姉さん、一度ハマるとずっとそれを作り続けるんですよね」
「なんか分かる気がする」
「最近トルタ・カプレーゼが常備されてることが多くて正直しばらくチョコレートケーキは要らない気分なんですよね」
「まあ本人たちが楽しそうだと止められないしなあ」
「そうなんですよね」
きゃっきゃと言いながらアーモンドとチョコレートで作るトルタ・カプレーゼを焼き上げ、後日葺合がバレンタインとは何ぞやと私に聞いてきたんだったか。

そして、現在。
「……まさかこれトルタ・カプレーゼ?!」
『今年は普通のチョコレートケーキよ、加古川の希望でね』
「そうかい、まあいいや。神戸、happy St. Valentine's Day!」
『Same to you!(あなたもね!)』




神戸と此花と西宮のバレンタイン話。
関西女子トリオにはキャッキャして欲しさある

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