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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

夏の初めに大掃除

リーグワンが終わり、季節は本格的な夏へ差し掛かろうとしている。
一区切りついたので大掃除をしようと言う話になり、今日は掃除道具片手にあっちこっちを拭き掃除することになった。
「やっぱ汚れって溜まるもんやなあ」
一年分の汗と泥の染み込んだダンベルを拭いたタオルは一瞬で真っ黒になり、選手たちの努力を感じさせてくれる。
今年のシーズン結果はとてもいいと言えるものでは無い。
けれど努力の痕跡はここにある。
「この辺のダンベル拭き終わりました?」
「一番下の段の奴は全部拭き終わったとこやね」
「じゃあこれでダンベル磨きは終わりですかね」
一緒にダンベルを磨いていたスタッフがそう言うので「まだトレーニングマット洗ってへんやろ」と返す。
もうすぐ梅雨でもあるし、マットがカビたら大変だ。
雑巾を新しいものに変えた後、トレーニングマットに洗剤を混ぜたぬるま湯をかけてタオルで徹底的に拭き上げる。
こちらも汚れが随分染みついていて、毎日消毒液で拭いてるのにまだ汚れたのかと驚くしかない。
(一応マット外したら床も吹き上げといたほうがええかな?)
ふたりがかりで大きなマットを拭きあげると今度は消毒液で全体を消毒し、最後は陰干しして完成だ。
ポケットのスマホを確認すると、ライナーズからラインが来ていた。
『俺これから北海道なんやけどお土産要る?』
何故いま北海道へ?と一瞬首を傾げたが、そういえばライナーズが毎年出てるセブンスの大会の会場が北海道だったなと思い出す。
(今の時期ならメロンがええかなあ)
『夕張メロンのスイーツ頼むわ』
個別ラインを閉じてツイッターの方を見るとファン感謝祭などの情報があっちこっちから流れてくる。
「こういうの見るとシーズンオフ始まる感じやなあ」
シーウェイブスが県庁行くついでに盛岡冷麺食ったり、ブレイブルーパスが優勝パレードで大はしゃぎしたり、ブラックラムズが選手の家族にバカでかいカステラ送ったり。
次のシーズンに向けた骨休みの景色を眺めていると、ちょっと楽しく思える。
「洗濯物干すんでどいて貰っていいですか?」
「あ、ごめんなあ。手伝うわ」
布系の小物たちを物干し竿にかけながら、俺は季節の節目を感じている。


(掃除終ったら、何しよかな?)

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スティーラーズとシーズンオフ。
公式がお掃除してたのを見て思いついたネタでした。

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時間と水は流れてく

このところずっとバタバタしていたが、ようやくまとまった休みが取れたのでのんびりすることにした。
近所のうどん屋に行くと店主が随分年老いていて、角にあったコンビニが閉店してることに気づいた。
(当たり前ですけど、変わるんですよね)
その中で自分だけが置いて行かれるような気分になりながら、結局己の足はいつもの仕事場へと向けられる。
「八幡さんきょう休みじゃなかったんですか?」
「散歩してたら足が向いてしまいましてね」
私がそう告げると戸畑はやれやれと言う顔でため息をついた。
「そういうことなら、久しぶりに所内ゆっくり回ってきたらどうですか?このところ外向きの仕事ばかりだったでしょう?」
「そういえばそうですね」
戸畑に後を任せると製鉄所の中へと入っていく。
己の体そのものである風景はほとんど変わることなく、ただただ轟音をかき鳴らしながら生産活動を続けていく。
そうして歩き続けた先では高炉がもくもくと煙を吐いていた。
「♪ 焔延々波涛を焦がし 煙もうもう天に漲る……そんな時代もあったんですよね」
市歌に誇りとして歌われたこの高炉ももうすぐ役割を終える。
いまや高炉など製造設備としては無用の長物と分かっていても、やはり己の身を切るのは痛いし喪う事を切なく思う。
けれどそうする事でこの会社を立て直してきたのだ、切られてきた人々のことを思えば己の身を切ることも必要な事ではある。
そうして身を切って作り出した金をUSスチールへ投げ込むことで私たちが日米の鉄鋼産業の覇者となる。

(……大丈夫、この投資は成功する)

変わりゆくことは悪ではない、その変化を善とするか悪とするかは私の能力が決める。
この国の鉄を150年近く背負ってきた身としての責務をこれからも果たし続ける。

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八幡さんのはなし。USスチールのこととか、八幡の高炉廃止とか。
作中で八幡さんが歌ってるのは旧八幡市歌

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届かなかった夢舞台

こうしてグラウンドの外から試合を見るのは久しぶりだった。
国立競技場3階席は選手が遠すぎてもはや豆粒にしか見えないのが難だが、ここしか取れなかったのだから仕方ない。
「ワイルドナイツも来てたんだ」
「ずいぶん遠い席取ったね」
「決勝はグラウンド脇で見るつもりだったから」
俺と同じく席を取り損ねてこんな遠い席になったらしいサンゴリアスは大きな保冷バックを開き、キンキンに冷えたビールを取り出した。
しかも隙間に保冷剤まで入れており、ビールへの執念を感じさせてくる。
「一つ飲む?」
「くれるなら貰う」
「どーぞ」
自社製缶ビールを俺に寄越したサンゴリアスは、その手で別のクラフトビール缶を取り出すと保冷ホルダーに入れて栓を開けた。
そのまま勢いよくぐびぐびと呑むと「はー……」とつぶやいた。
「いい飲みっぷりだね」
俺もそう言いつつ缶を開けてちびりとビールに口をつける。
「そりゃね、今年こそは決勝出るつもりだったし」
「俺もどっかではそうなる気がしてたんだけどね」
ここ数年は決勝常連となっていたから、きっとどこかで油断してしまったのだろう。
己の油断と力不足がこの現状を呼んでしまった。
「今年は自分が緩んでるってみんなに叱られた気がする」
それはここ数年で一番酷い成績でシーズンを終えたサンゴリアスの紛れもない本音なのだろう。
同時に俺やサンゴリアスが勝ちにくくなっているという事はリーグワン全体の水準の向上を意味しており、これまでよりも厳しい世界が広がることを意味している。
「サンゴリアス、」
「うん?」
「来年は、国立で逢おう」
俺が言えるのはただ一つ、叶うかどうかも分からない事を承知で約束をすること。
来年も常勝軍団であり続けようという誓いを立てる事だ。
「……うん」
その誓いの代わりに乾杯を捧げた。




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サンゴリちゃんと野武士さんと国立の片隅
Twitterに乗せたその頃のブレイブルーパス先輩とスピアーズも置いときます

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締めラーメンの夜に

「22年ぶりの勝利って恐ろしい数字よね」
うちの姐さんがそう呟きながらタバコを揉み消す。
ワイルドナイツとの飲みを終えたあと、締めラーメン奢るから付き合えという姐さんに呼び出されて立ち寄った中華料理店で姐さんはそう呟いた。
「ようやっと二強時代が終わって新しい時代が来るっちゅーことやないですか?」
「まあそう言われればそうなんだけどね、ただ22年って長いわよね」
「それはそうですけどねえ」
「ほんと、昨今は色んなことが変わって行くわよねー」
姐さんは困ったようにラーメンを啜り、時々冷えた水に口をつける。
俺に日銭を与えてくれている鉄鋼業もつい先日大いに揉めていた合併話がまとまり、また新しい変化が起きることは目に見えている。
「そうですねえ」
「あなたの活躍が私の生きがいなんだから、来年はもっとがんばりなさいね?」
「来年こそは秩父宮やのうて国立招待しますよ」
そう言い切ると姐さんは満足したように「努力しなさいね」と笑った。


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スティーラーズと神戸さん

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ファン感謝祭の片隅で

「シーウェイブス、遅くなってすまんな」
「参加者プレゼントど……え?」
そう声をかけてくれた親の後ろに、当然のような顔をしてついて来ていた八幡さんに「えっ」と声が漏れた。
「なんで八幡さんが?」
「ようやくまとまった休みが取れたので釜石の所に来たら、ファン感謝祭に行くって言うのでついて来ただけですよ」
「客が一人増える分にはよかろう?わしも去年のファン感は来れなかったから今年はどうしても見に行きたくてなあ」
タイミングによってはそういう事もあるかと思えば納得する。
八幡さんがうちの親にべったりなのはいつもの事だが、向こうから積極的に邪魔してくることはほとんどない。
「まあそういう事なら……」
「釜石、ビール飲みませんか?」
八幡さんがさっそく指さしたのはべアレンの生ビールコーナーだ。
折角の休みだというのに気温の割に湿度も高いからそりゃあビールでさっぱり行きたくもなるのが人情だ。
「お、行くか!じゃあまた後でな」
「はい」
いちおうイベントが終わったら飲めるよう家で冷やしているビールもある。
(今は運営の仕事優先!)
自分にそう言い聞かせつつ、参加者プレゼント配りに精を出すのであった。

*****

イベント終了後、八幡さんから突然こんなことを聞かれた。
「あのイベント中のクイズ、素人には結構難易度高めじゃないですか?」
「スポンサー企業クイズですか?」
「うちで働いてりゃ鉄鋼スラグぐらいなら見分けつくじゃろ」
「ですよね?」
そう言って顔を見合わせていると、八幡さんがはあと大き目のため息をついた。
「……この街から高炉が消えてもうだいぶ経つんですから、釜石の所の職員でも知らない人がほとんどじゃないんですか?」
言われてみればそれもそうだ。
高炉廃止からぼちぼち40年は経つのだ、高炉の仕事を知らない職員が過半数になる。
「それもそうだけどな?鉄の街背負ってるんだから、多少は鉄の事分かって貰わないとなあ?」
うちの親はほろ酔いでニヤリと笑い、八幡さんは呆れたように「まあそれはそうですけど」とつぶやいた。
「でもテックスエンジの製品クイズは本当に難しかったよなあ~」
「釜石はエンジニア部門にノータッチですからね、むしろテツゲンのレタス食べ比べも見ただけじゃ分からなかったですけど」
「わしは食えばわかると思うがなあ」
ああだこうだとどうでもいい話に盛り上がる2人を見ていると、ちょっとうらやましくなる。
ほんのちょっと友が恋しい気分になりながら俺は2人を見守る陰になるのであった。



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シーウェイブスと釜石+八幡
今日のファン感のクイズがむずすぎるというネタでした。

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