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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

洒落にならない嘘はやめましょう

年度初めの仕事はどうしてこんなに憂鬱なんだろう、そんな気持ちを込めたため息が思わず出てきたのはきっとみんな同じだろう。
四月一日の夕方、少し無理して定時で上がったあとにふとLINEの着信音が響いた。
そこには見知らぬ女性と並ぶ結城さんの写真と共に、結婚しましたと言う挨拶が並ぶ。
「は?」
思わず取りこぼしそうになったスマホをぎゅっと握りしめ、もう一度画像をしっかり検分するがタチの悪い悪戯の可能性をいまいち感じられない。
(……やっぱり本当っぽいな?)
この見知らぬ人は福井県福井市だと言うが、そもそも接点あったっけ?と思わず確認すると姉妹都市なのだという。
「あ゛ー゛……」
正直結城と言う人のみならずあの土地の人間が自分以外の誰かを愛するイメージが持てなくて、だからこそ今ものすごく俺はモヤモヤしている。
土地としてはともかく個人としては絶対に俺以外の人を愛さなさそうな人が、タチの悪い嘘だとしても俺以外の誰かと結婚するなどと言って欲しくなかった。
「これが嘘なら明日思川に投げ捨ててやる……」
「すいません120%嘘です」
ひょっこりとどこからか出てきた結城さんが逃げようとしたので反射的に襟首を捕まえると、思い切りコブラツイストをかける。
「あだだだだだだた!!!!!すいませんちょっと嫉妬して欲しくてやりました!!!!!というかラーメン祭りに向けてプロレス技練習してるからって私使うのはだだだだた!!!!!」
俺のモヤモヤと怒りを込めたコブラツイストによる悲鳴はその後10分近く役場前に響いていた。


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エイプリルフールの結城小山。
基本的に小山さんって結城さんからの愛を信じてそうだよねと言う幻覚。

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嘘つきなプロポーズ

「結婚してくれませんか」
私が送ったメッセージに結城さんは「エイプリルフールですか」と返してきた。
その察しの良さがありがたいような、今だけは気づかないでいて欲しかったような、複雑な心境のまま「そうですよ」と返した。
「私だからギリギリ洒落になるだけで他の人……鯖江とか、坂井とかあなたの近隣だったら本当に洒落にならないやつですからね?わかってるでしょうけど」
文字だけだと言うのに好かれて嬉しいような困ったようなニュアンスでそんな事を言うので、せっかくならばと聞いてみた。
「せっかくなのでエイプリルフールっぽく結婚画像作りませんか」
そこからかれこれ3分弱、返信が途絶えてしまいやはり無かったことにするべきか?と思った矢先に「いいですよ」と答えが来る。
嘘でも好きな人と夫婦ごっこができる喜びがじわじわと広がってきて「今画像作りますね」と返事をしてパソコンに取り込んだ手持ちの写真を広げる。
そこから1番具合が良さそうな写真を一つ選んで、ハッピーウェディングと結婚の挨拶文を流し込む。
これをスマホに移して結城さんに送れば「ありがたく使わせてもらいますね」と返事が来た。
その画像を誰に、どんな目的で使うのだろうか。
ぼんやりと考えながらふと窓の外を見る。
今日だけは結城さんと夫婦ごっこが出来ることを喜びたいような、偽物であることが悲しいような、そんな気持ちを誰も聞くことはなかった。



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エイプリルフール結城←福井

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盛岡の散歩道

待ち合わせの盛岡駅待合室に着くと、レッドハリケーンズが展示物に目を輝かせていた。
「お、シーウェイブスお迎えありがとな!」
「気にせんでええぞ。元々前日入りの予定だったから同行者がつくぐらい大した手間でもないし」
「にしても駅にこんな掲示してあるのええよなあ」
少し前から掲示させて貰っているうちの展示物を横目にそう呟く。
レッドハリケーンズは大阪という土地柄、競合するスポーツチームも多いし宣伝するにも色々苦労もあるのだろう。
「お前さんもまだやれる事はあると思うがなあ」
「ほんならええんやけど」
「県立博物館のラグビー展先でいいか?」
このラグビー展のために前日に盛岡に入る予定だったのを、レッドハリケーンズが『観光案内して!』と言うので当初の予定より出発時間を早めて盛岡駅まで迎えにきたのである。
「俺小腹空いとるから先メシがええんやけど」
「博物館が盛岡の中心部からだいぶ離れとるから博物館先の方が都合が良くてな、腹減ってるなら福田パン寄るか」

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県立博物館は盛岡市郊外のダム湖のほとり、岩手山に見守られながら立っている。
「ホンマにラグビーの展示やってんねんなあ」
もりもりとパンを食いながらそう呟いたレッドハリケーンズに「これが見たかったんでな」と言い返す。
「てかコレ、ゴールデンウィーク明けまでしとるやん」
「この展示にうちも協力してるんでな。興味無いなら近くの公園でパン喰いながら待つか?」
「せっかく来たし見てくわ」
SNS用の写真を撮りながらてくてくと博物館の中を回っていく。
ガラスケースの中に飾られた在りし日の想い出や支えてきた数え切れないほどの存在が俺たちに目配せをして来る。
(……この積み重ねの上に生きてるんだな)
この在りし日の想い出に触れた人々が今の自分やラグビーにも目を向けてくれれば、きっとそれだけでラグビー界は明るくなるだろう。
一通りの展示を見終えて大きく深呼吸をして、北上川と岩手山をそっと写真に収める。
「次わんこ蕎麦行こ!」
「まだ食うんか……」
岩手山から吹く風はほんの少し甘い気がした。


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シーウェイブスとレッドハリケーンズ。今日は盛岡ゲームなので。

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白い恋

3月12日の朝になってふと思った事がある。
「スティーラーズにお返し、した方が良いよな?」
昨日、SNSにあげるつもりで撮影していた元選手のインタビュー動画の編集が終わっていない事が分かり急遽動画編集の得意なスティーラーズが代わりに編集してくれた。
元々合同で動画を作る予定があった事とちょうど当日がオフだったからできた荒業である。
近くにいたスタッフも「そうですよね」「お礼メールだけだと良くないですよ」という事で何か贈り物をした方が良いという結論に至った。
チームの総意としてお礼の品予算をひねり出すのでスティーラーズと一番親しい俺にチョイスを丸投げされた。
「とは言ってもなあ……」
貧乏チームなので予算はチームからの五千円に自分の小遣いを足して七千円ぐらい。まああまり高価な品だと気を遣うのでこれぐらいでいいと思う。
岩手から兵庫まで荷物を送ろうと思うと小さい箱でも千円を超えてしまうからあんまり大きいものや冷蔵品は送れない。
そしてもう一つ。俺は毎年バレンタインにスティーラーズから結構いいチョコを貰っている。
本人の『お前が美味しく食うてくれたらええねん』と言う言葉と、時期的な忙しさも相まってお礼のメールぐらいしかできていない。
「なんかいいもん送ってやりたいよな」
とりあえず地元の銘品などを見て回ると定番の品は大体一度贈ったことがあったり、予算的にきつそうだったりでかみ合わない。
そんな時、ふと目についたのが野田の塩クッキーだった。
三陸の海水を炊いて作られる塩を練りこんだクッキーはほんのりした塩気が甘さを引き立てて結構うまい。それにスティーラーズも神戸の製鉄所さんも確か紅茶党だったからこういうみんなで食べられるような焼き菓子はお茶うけに良さそうだ。
(そういやホワイトデーの贈り物ってなんか意味があったような?)
あれでいて色々と気にするタイプのスティーラーズであるので変に深読みされてはたまらない。
確認してみるとクッキーは友達でいましょうという意味だというので、とりあえずクッキーはスティーラーズ本人ではなくスタッフさん向けという事にしておいた。
意味の良さそうなお菓子としては飴とかマカロンとかバームクーヘンがいいらしいが、予算とスティーラーズの好みに合いそうなものはなかなか見つからない。
「……自分で作るか?」
既製品を買うより好みを知り尽くした自分が作る方が早い。
そう結論付けると、自分でも作れそうなものをさっそく調べることにした。

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ホワイトデー当日の昼下がり、電話を寄こしてきたのはスティーラーズだった。
『シーウェイブスお前マドレーヌなんて作れたん?!』
あの日作ったマドレーヌは無事スティーラーズの胃袋まで届いたようだ。
しっかり目の衛生管理とジビエ用の真空パック器のお陰で駄目になることなく無事に届いたようである。
「素人作で悪いが、ちゃんと信頼できるレシピ探して味見もしたから食える味にはなってたろ」
『惚れた相手の手作り言う時点で焦げても食えるけどな、味も初めて作ったんなら上等な部類やったし』
しれっと厳しめの評価が下ったが、それでもこうして喜んでくれたなら十二分に頑張った価値はあるというものだ。
(ここまで喜んでもらえるなら来年も試してみようか?)
まあ自分に余裕があれば、の話だが。


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シーウェイブスとスティーラーズの遅刻ホワイトデー。

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冬空ティータイム

神戸が『明日暇ならお茶しましょ』と言うので、ホイホイついて来てしまったら会場がラグビー場だった。
ひな祭り仕様のグッツ配布を受ける神戸を尻目に、私と西宮は普通に困惑していた。
「なんでお茶しようって言われてスタジアムに……?」
「最初は家でも考えてたんだけど、今日ホームゲームなのに関係者席がちょっと入り良くないみたいでね。入場者数は多い方が良いと思って」
私も西宮もサッカー観戦は時々行くから慣れてるからいいものの謎にだまし討ちされた気分で溜息しか出ない。
「まったく、スタジアムに行くなら先に言ってくれれば……ねえ?」
「そうですよ。チャントの練習とか全然してませんよ?」
「今日は普通に楽しんでくれればいいの。必要なものは全部持ってきてるし大丈夫よ」
そう言いながら神戸が鞄から赤いタオルマフラーやひざ掛けを私と西宮に貸し付けてくる。
神戸の用意してくれた席にマットを敷き、その上からひざ掛けをかけてさらに膝乗せトレーまで渡される。
「そのバックめちゃくちゃ入ってません?」
「収納力あるのよこれ」
そんな事を言いながら神戸は鞄から魔法瓶とティーポッドとカップが出てきた。
サッカーの試合と違って入場時の手荷物検査がないから持ち込んでも問題ないんだろうけど、だからって普通ティーポット持ってくるかね……?
「今日は桃の節句にちなんで桃風味の紅茶用意してみたの」
ひな祭りと言えば桃という事でそのチョイスなのだろう。
紅茶が注がれたカップを受け取れば紅茶のかぐわしい香りの奥に白桃の甘い香りが混ざっている。
試しに一口飲むと熱々で寒空の下にじんわりとしみわたってきて美味しい。
「おかしはひしもち風のフルーツサンドイッチと白酒風味のスコーンよ」
洒落た紙箱入りのサンドイッチとスコーンを受け取る。 またこれも手の込んだ力作だ。
「……これ、加古川に食べさせなくていいの?」
「加古川には明日あげるわよ。あの子昨日夜勤だったらしくて今日来れないって言うから」
ひし形のサンドイッチを口につければイチゴやキウイの果汁じんわりと染み出してきて美味しい。
「スコーンとっても美味しいです」
「そうでしょ?」
西宮も嬉しそうにスコーンをかじり、暖かい紅茶を飲む。
「じゃ、今日はうちのスティーラーズ応援してあげてね?」
「それがこのお茶のお礼になるんなら安いもんだよ」





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此花ネキと神戸ネキと西宮ちゃん。
ちなみにこれを目撃してたスティーラーズも同じものを後日頂いてます。

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