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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

時間と水は流れてく

このところずっとバタバタしていたが、ようやくまとまった休みが取れたのでのんびりすることにした。
近所のうどん屋に行くと店主が随分年老いていて、角にあったコンビニが閉店してることに気づいた。
(当たり前ですけど、変わるんですよね)
その中で自分だけが置いて行かれるような気分になりながら、結局己の足はいつもの仕事場へと向けられる。
「八幡さんきょう休みじゃなかったんですか?」
「散歩してたら足が向いてしまいましてね」
私がそう告げると戸畑はやれやれと言う顔でため息をついた。
「そういうことなら、久しぶりに所内ゆっくり回ってきたらどうですか?このところ外向きの仕事ばかりだったでしょう?」
「そういえばそうですね」
戸畑に後を任せると製鉄所の中へと入っていく。
己の体そのものである風景はほとんど変わることなく、ただただ轟音をかき鳴らしながら生産活動を続けていく。
そうして歩き続けた先では高炉がもくもくと煙を吐いていた。
「♪ 焔延々波涛を焦がし 煙もうもう天に漲る……そんな時代もあったんですよね」
市歌に誇りとして歌われたこの高炉ももうすぐ役割を終える。
いまや高炉など製造設備としては無用の長物と分かっていても、やはり己の身を切るのは痛いし喪う事を切なく思う。
けれどそうする事でこの会社を立て直してきたのだ、切られてきた人々のことを思えば己の身を切ることも必要な事ではある。
そうして身を切って作り出した金をUSスチールへ投げ込むことで私たちが日米の鉄鋼産業の覇者となる。

(……大丈夫、この投資は成功する)

変わりゆくことは悪ではない、その変化を善とするか悪とするかは私の能力が決める。
この国の鉄を150年近く背負ってきた身としての責務をこれからも果たし続ける。

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八幡さんのはなし。USスチールのこととか、八幡の高炉廃止とか。
作中で八幡さんが歌ってるのは旧八幡市歌

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