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コーギーとお昼寝

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ラストゲームの前に

ゴールデンウィークにもなると日差しはすっかり夏模様になり、水分補給を忘れたら倒れそうなほ
どに暑い。
「ヒート君、お疲れ様」
「パールズ!試合前日なのによく来てくれたね!」
紫外線対策の日傘を差しつつ涼しげなロングワンピースを纏ったパールズは今日も光り輝くほどに可愛らしい。
「男子の試合を見るのもいい勉強になるからね」
「じゃあパールズのいい手本になれるよう頑張らなきゃ」
「イチャイチャしよるなあ」
そう呟く声の方を振り向けば、スティーラーズが呆れたような眼で俺たちを見ていた。
「……イチャイチャじゃないし」
「空気が甘かったからあれはイチャイチャやと思う。ま、あんまりイチャイチャしとると勝ち点一点貰えんから気ぃつけな~?」
カラカラと笑いながら俺をからかうので「分かってるよ!」と言い返すも、本人に効果はなさげだった。
「パールズは明日試合ってネットで見たわ。頑張りや~」
「もちろんです!スティーラーズさんも良ければ女子の試合一度見に来ませんか?」
「俺明日は用事あるからなあ、神戸で試合あるんなら見に行ってもええんやけど」
「ネット配信ありますよ!YouTubeで見られますからぜひ!」
しっかり自分の試合も売り込むパールズに「しっかりした子やなあ」とスティーラーズが苦笑いを零す。
うん、うちの彼女は強くてかわいくてしっかり者で最高なのである。
「せや、そういや俺型紙のワークショップ見に行きたいんやけどテントどこかわかる?」
「伊勢型紙ワークショップ?あれ事前予約してないと参加できない奴だけど……」
「いや、申し込んではおらんけどうちでのイベントの参考に様子だけ見せて貰おうかなあって」
「そういう事ね。俺もスタッフで参加する予定だったし、パールズも様子見に行く?」
「行く!」
パールズの目が好奇心に輝き、スティーラーズもせっかくだし色々見ていきたいという興味に満ちた眼差しをしている。
こういうのを見るとホームとしていろいろ見せてあげたい気持ちがむくむくと湧いてきた。
「じゃ、試合前に色々満喫してこ!」
今日は最後のゲームという事で色々イベントを詰めてある。
おもてなしにはちょうどいい日だし、試合もそれ以外も全力で楽しんでもらおうじゃないか!


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ヒートとパールズとスティーラーズ。
三重コンビを出すとすぐいちゃいちゃする謎。

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夏の始まり

「暑い……」
一歩外に出ると強い日差しが降り注ぐ。
地元はようやく桜が終わったというのに、北九州はもう夏へ足を踏み入れつつある。
「水分取りや」
キューデンヴォルテクスは飲み物のボトルを渡してきて、それを容赦なくぐびぐびと飲むと冷えたスポーツドリンクが体にじんわりとしみわたる。
「急に暑くなるときついよなあ」
「本当にな。それにトップリーグんときはこの時期にはもうシーズン終ってたから慣れないんだよな」
「あー、それはわかる」
ゴールデンウィークにも試合をやる事で試合を見に行きやすくして動員を増やすのがリーグの目的だろうが、こうも暑い日にラグビーをやる事にいまいち慣れないのだ。
(むしろ震えるほどに寒い日のほうがラグビーやる側は楽な気がするんだがなあ?)
こういう寒くない季節のほうが見に行くのが楽なのは承知の上でやる側の事を考えてしまうのはどうしようもない。
「今シーズンはどうやった?」
「まだシーズンを振り返るには早いだろ」
「だって試合終ったらお互いそれどころやないやん」
現在、順位的にはうちもこいつも降格がけっぷちでありここで勝たないと入れ替え戦に回ることになる。
降格せずに生き残りたいのはお互い様であるし、入れ替え戦確定となると振り返る余裕が無いのも事実だ。
「……入れ替え戦に行きたくない理由でも?」
「ルリーロと試合するんならD2がええわ」
可愛がっていた後輩の忘れ形見のような存在の名前を挙げてそう呟く。
「俺だって降格したら地元のファンに合わせる顔がない」
「そりゃそうか」
「おう」
シーズン終了に向けて、少しでもいい成績を残さないといけないのはお互いさま。
だからこそお互い負けてなどいられないのだ。
「今日もいい試合にしような」
「お土産は勝ち点だとなお嬉しいんだがな」




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シーウェイブスさんと宮殿先輩。今日の入れ替え戦がこわい……

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北のまちの春

新千歳空港から一歩外に出るとちょっと肌寒い春の空気が漂っている。
……いやここ数日の関東が暑かっただけかな?
札幌ドーム行きのバス停をうろうろと探していると「スピアーズやん」と声がかかる。
「あ、スティーラーズだ。同じタイミングで来てたんだねえ」
「土曜日入りでも良かったんやけど、姐さんからお使い頼まれとってな。ドーム方面行くんか?」
「うん。にしてもお使いかあ、俺もお願いしていい?」
「自分でやりや」
「俺土曜日もドーム行かなくちゃいけないから」
「手間賃取ってもええんなら引き受けたるわ。とりあえずドーム行きのバス停行こ」
スティーラーズはドーム行きのバス停へ歩き出す。
目的のバス停はずいぶんと空いていて、あと5分ぐらいでバスが来るらしい。
「にしても、土曜日もドーム行くってなんかあるんか?」
「土曜日にコンサドーレさんの試合あるんだけど、そこで日曜日の試合の宣伝するんだよ。朝からそれ用の打ち合わせあるから金曜日入りになっちゃってさ」
俺だけでなく一緒に来たスタッフさんたちも仕事終わりに直接飛行機で札幌入りだからちょっとお疲れ気味だ。
「はー、大変やな。手間賃500円でええわ」
「どっちにせよ手間賃取るの?」
「俺明日札幌じゅう回って姐さんのリクエストの品買うていかんとならんもん、追加で買うんやったらお代と別で手間賃貰わな割に合わんわ」
「どんだけ頼まれてるの……」
思わずスティーラーズの言う姐さんの姿を思い出し、彼女の無茶ぶりを想像して苦い顔になる。
うちの親はお土産とか期待する人じゃないから想像するしかないけど大変そうだ。
「リスト作ったらA4のコピー用紙がみっちり埋まるぐらいかな」
「うん、じゃあいいや。自分で買うよ」
遠くから目的のバスが来た。
トランクを引きずりながらバスに乗り込むと新千歳から札幌の街へと走り出す。
札幌はまだ桜が咲き始めたばかりのようでまだ春浅い北の町へ来たな、と思わせてくれる。
「神戸はもう葉桜やのになあ」
「うちの方ももう終わっちゃう感じだね」
ラグビーボールに呼ばれるように来た札幌で、俺たちはどんな試合をするのだろう。
「ねえ、もし時間に余裕があったら桜見に行こうよ」
「それもええかもなあ」



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スピアーズとスティーラーズ。

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あの子と芝の青

曇天のミクニワールドスタジアムにどこかかしましい雰囲気を感じるのは気のせいだろう。
(普通に大会の緊迫感もあるしな)
ナナイロプリズムがいるはずの場所をうろうろと捜し歩いていると「どうかされました?」と声がかかる。
濃いピンクと紫のロングヘアに三日月の浮かんだ瞳はおそらく≪こっち側≫の存在だろうと分からせる。
「きみは?」
「今年から参戦しました武蔵横河アルテミスターズと申します、あなた様は?」
「自分は九州電力キューデンヴォルテクス言います、ナナイロプリズム福岡に会いに来たんやけど……」
「でしたらもっと奥の方にいらっしゃいますわ」
指さす方には確かに見覚えのある選手やスタッフがおり、多分あの辺にいるのだろうと察せられた。
アルテミスターズに軽く会釈をして別れるとみんなの渦の真ん中に可愛い妹分がいる。
「あ!」
「おつかれさん。差し入れにスポドリ持ってきたからみんなでどうぞ」
大きいボトルのスポドリをスタッフさんに渡すと、ナナイロプリズムがその名の通りナナイロに輝く瞳をきらめかせて「あのね!」と前半の試合の事を語り始める。
その瞳の輝くさまを見ているとこの輝きを守れたらと心から思う。
ブルースやレッドスパークスのようにその瞳を一時でも曇らせることなく、ラグビーへの愛と希望に満ちた時間を一瞬でも長く味わっていてほしい。
前半の試合に負けてしまったらしいナナイロプリズムはちょっと落ち込んでいるようだったが「でもこの後の試合は頑張る!」と元気に宣言する。
その様子を選手やスタッフも微笑ましく見守っていて空気はちょっと穏やかだ。
「ナナイロ、この後の試合も楽しんどき」
「うん!」




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キューデン先輩とナナプリちゃん。
そしてしれっと初登場アルテミちゃん

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君も同じ空の下

目前の階段をバイクで駆け上がる迫力に観客が目を丸くしているのを、レヴズはにやにやと見つめていた。
「成功しましたね」
「よかったな」
レヴズの嬉しそうな声は観客の喜びを感じてるのだろう。
それを尻目に今日から女子セブンスの大会で北九州に行っているパールズの試合の様子をざっと確認していると「空返事ですね」とぼやかれる。
「ちょっと気になって」
「まあ気持ちは分かりますけどね?空返事はやめてくださいよ」
レヴズにとってのアザレアと俺にとってのパールズってだいぶ位置付け違うんだけどな、まあいいか。
「悪かったって。バイクパフォーマンス演出の受けが良くて嬉しいって話だろ?」
「分かってくれるならいいです」
「……レヴズだって、ジュビロさんやアザレアと試合被ったら様子気になるだろ?」
「そりゃ気にはなりますよ。 でも

うちの兄さんもアザレアも最高で最強だと信じてるので、僕の試合の後に本人から直接勝ったって聞く方が良いじゃないですか」

さらりとまっすぐな情愛がレヴズの口から飛び出してくる。
俺だってパールズの強さを信用してないわけじゃないけれど、どうしても心配や気がかりが湧いてくる。
(これが愛と恋の違いなんかな?)
遠く北九州の空でパールズを想う気持ちを考える。
「それに、彼女さんも自分のこと気にされて試合に負けるぐらいなら自分の事なんて微塵も考えずに試合に勝ってくれた方が良いと思いますけどね」
そう言いながらレヴズが指さすのは俺が前半無得点であることを表示した電光掲示板だ。
前半無得点の俺への挑発めいた言葉にちょっとムッとしてスマホの電源を落とす。
「後半逆転してパールズへのお土産にしてやるからな!」
レヴズは俺の言葉に満足したようににっこりと笑った。



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ヒートさんとレヴズさん。
きょうから北九州では太陽生命ウィメンズセブンスが始まります。

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