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コーギーとお昼寝

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2度目の奇跡は呼ばせない

これはゾクゾクするほどにいい試合になる、と開始10分で確信した。
真剣での立ち合いのようにギリギリの鍔迫り合いの様な試合で、個人技で魅せてきたスティーラーズさんに規律と連携の徹底によって抵抗し続けたスピアーズ。
相手のミスを誘発させる技量も、個人技の極みのような華麗なキックも、全てが最上級。
「これはどっちが勝っても楽しいやつだな」
勝った方が来週の対戦相手だと思えばよりワクワクも上がっていく。
一瞬たりとも見逃したくないと思える80分の攻防戦。

制したのは今まで大舞台と無縁だったスピアーズだった。

すぐに感想を言いたくなってスマホを引っ張り出し、即通話ボタンを押した。
『はいはい?』
「さっきの試合めちゃくちゃ面白かった!」
『何、それ言うために電話してきたの?!』
「当然じゃん!面白いもん見せて貰ったお礼言いたくもなるじゃん』
『……うちの人たち、カッコいいでしょ?』
電話越しの声色はいかにも嬉しそうでドヤ顔がありありと想像できるほどだった。
「うん。うちの人たちほどじゃないけど」
『そう言うとこー!!!!!あ、スティーラーズさんが話したいって言うからハンズフリーにするね』
ピッという音とともに『もしもーし』と言う声がした。
「お疲れ様ですー」
『スピアーズくんなー、めっちゃ強なってるから寝首かかれんように気をつけなはれや!』
チャンカワイのモノマネとともにスティーラーズさんなりにスピアーズくんをたたえてくる。
普通なら勝てただろう相手に負けるのは悔しさもひとしおだけれど、ここでちゃんと相手を称えられるあたりは先輩なんだろうなあと思う。
「でも誘発抜きにしてもミス多かったと思うんですけどね」
『そう言う日もあるわ!とりあえず俺はねーさんに叱られてくるから来週サンゴリアスが落とすの楽しみにしとくわ〜ほな、またな』
『俺もドーンとそっちにぶつかってそのまま倒して決勝行っちゃうから来週よろしくね!』
「何楽しみにしてんですか!ちょ、ちょっと!!!!!!!」
俺の意見も聞かずに電話が切れる。
なんか盛大に煽られたせいか余計に勝ちたくなってきた。
「……トレーニングしてこようかな」
来週勝って最後の優勝カップをうちへ持ち帰るために。



サンゴリアスとスピアーズとスティーラーズ。
すごい……すごい試合でしたね……。

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My Way

仕事から練習までの短い隙間時間に、香椎浜に向かうとレッドスパークスは海を見ていた。
小さく何かを口ずさみながら曇りなき空と美しく輝く芝生を眺めていた。
「レッドスパークス」
「ブルース、どうしたんですカ」
「……天神で仕事があったけんお前さんの顔ば見に来た」
それは嘘じゃなかった。ただ会いに来たのは一つの気がかりが合ったせいだった。
レッドスパークスの目はいつもの底抜けの明るさと違う薄暗い色を帯びていて、その目には見覚えがあった。
この世を去った神戸の友と最後に会ったときと同じ眼差しだ。
「そうでしたカ、てっきりワタシ心配されてるのかと思いましたヨ」
無理に笑おうとして微かに口角が引きつっている。
「なんでこれからが一番楽しいときに退場しよると」
「親の命令ですからネ、だぁれも相談してくれずに突然活動休止ーって」
「誰も?」
「うちの親も向井サンも部長もだーれも言ってくれなかったんですヨ?酷いですよネー」
いつもと変わらないどこかおどけたその口ぶりは真意を感じることが難しい。
だから果たしてその相談なしで、というのが親心であったのか急すぎて余裕がなかったのかもはかり知ることは出来ない。
じわりと目から涙がにじむ。
日が暮れて空がオレンジ色に染まっていくのが、滲んだ目から見えた。
「まあもしかしたらシーウェイブスさんやファインティングブルズくんとこみたいにクラブチームって可能性もありますシ、まだ泣くには早いですヨ?」
「そげなこと、言うな」
ぐりぐりと目元を拭いてその赤い目を見る。
何かを諦めたような赤い眼差しが今だけはひどく、憎たらしい。
「それにもしもの事があっても、ブルースや先輩やナナがワタシの事覚えておいてくれるでしょウ?


ワタシの道を行き切った男として、ネ?」

夕日の向こうから船の汽笛が聞こえた。
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ブルースとレッドスパークス。
廃部報道でまだ情緒が落ち着かない。

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僕の愛するブラザーフッド

一発勝負の試合に負けた事よりも、敵としてであってもラグビーでの再会を喜びただ抱き合って泣いた2人の姿に泣いてしまう。
曇天の江戸川区立競技場で敵として再会した唯一無二の親友二人の間には誰も立ち入らせない空気があった。
「お疲れ様でした、シャイニングアークスさん」
そう言ってイーグルスがポケットティッシュを渡してくれ、それで目元と鼻をぐりぐりと拭う。
イーグルスの方も目が潤みこそしているが泣くのは堪えているようだ。
「……今になって後悔が深まってきますね」
「移籍のことですか?」
「お互い事情があったとは言え急な移籍で離れさせてしまいましたからね」
二人の関係の深さは周知のことだったし、それも一番近くで見てきたのは僕だという自負もある。
『情がなければ人を理解し切れないが人間に深く情を入れ過ぎれば辛くなる』
かつて父にはそう言われたけれどこうして二人の姿に泣いてしまう僕は情を向けすぎているのかもしれない。
「シャイニングアークスさん、友情は距離で壊されるものじゃありませんよ」
「そうですけどね」
イーグルスは二人の姿を穏やかに見守る。

「ナキに日本最高の舞台、見せてあげてくださいね」

それは僕の心からの願いであった。
事情から手放した男への最後の花向けと言い換えてもいい。
「当然ですよ」
イーグルスの声には覚悟が滲んでいた。

_____
シャイニングアークスとイーグルス。
試合後に抱き合うナキさんとしょけさんに泣かされたオタクいっぱいいると思うんすよ。

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ラストゲームはあの人に

あの人はラストゲームになったその試合を観客席から見つめていた。
今シーズン限りで現役を終える人を最後の晴れ舞台に立たせることのできなかった己の弱さに、涙を滲ませながらスピアーズの元へ挨拶に行く。
「お疲れ様でした」
「そっちこそお疲れ様、俺もうちのキャプテンとゴローさん戦わせてあげたかったな」
スピアーズはポツリとそうつぶやいた。
「あの二人仲良いですもんね」
「うん、まあ俺のいう事じゃないけどね」
「……最後のトップリーグ決勝をあの人の花道にしてあげたかったのになあ」
それでも僕が泣くわけにはゆくまい。
1番決勝の舞台に立てた事はきっとあの人だろうから。

「俺たちにできるのは、せめて心からのお疲れ様とありがとうだけじゃない?」

スピアーズが観客席の方をちらりと向いてそう告げた。
その言葉は僕ではなくきっとあの人に向けられているのだろう。
「スピアーズもそういうこと言うんですね」
「ジュビロは俺をどういう存在だと思ってるのさ!」
「ラグビーと米以外のものに興味がないと思ってたので」
「人でなしみたいにいうのやめてよね〜」
あの人へ美しい花道を捧げられなかったけれど、心からの感謝と愛情をここから捧げよう。




———
ジュビロとスピアーズ。
この敗北はジュビロにとって本当に悔しいだろうけれど、今となってはお疲れ様しか言えないな……。

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ごちそうにしよう!

「聞いてよ!きょうの劇的勝利!」
上機嫌のグリーンロケッツが大量の荷物を抱えたシャイニングアークスを引き連れてうちに来た。
遠征の荷物とスーツもそのままにこっちへ寄ってきてくれたのだろうか。
「開始早々の先制ゴールに最後の最後でもぎ取ったポイントゴールのあの曲線!かっこよかったでしょ?」
「テレビで見てたよ、よかったね」
「そんなミラクルセブンのために美味しいお米を炊いて欲しいんだけど!おかずはあるよ!」
疲れのにじむシャイニングアークスの荷物をもぎ取って出してきたのは、大阪名物のイカ焼きやちりとり鍋のセット。
さらに豚まんやチーズケーキにお酒の飲み比べセットも出てきて、上機嫌で大阪土産を買いあさったのだろうなと言うことは察しが付く。
「このミラクルセブンのために作っといて!あ、三人分あるから安心して!」
そう言ってちゃっかりテレビの前に陣取ってチーズケーキとワインを開けると他会場でのリーグ戦を見始める。
「チーズケーキにワインって美味しいのかな」
「……ツッコミどころそこですか?」
よれたビジネススーツを身にまとった疲れ気味のシャイニングアークスが呟いた。
その疲れ具合から、職場からそのまま訳も分からず連れてこられましたという状況がありありと想像できる。お疲れさまとしか言いようがない。
「別にご飯作るの嫌いじゃないしね。ちりとり鍋は普通の鍋で良いのかな?
あ、ごはんは冷凍のがあるから好きなだけ解凍して食べちゃっていいよ。シャイニングアークスも食べてきなよ。冷蔵庫の残りものだけど鯖味噌あるよ、好きでしょ?」
鯖味噌と聞いて一瞬ピクっと表情が動いた。
仕事による多忙で普段は粗食気味のシャイニングアークスだが、和食党で最近は鯖が好きなことを俺は知っている。
「いただいてもいいんですか」
「うん、だいいち繁忙期はプロテインとカロリーメイトで生き延びてる人をほっとけるほど冷血じゃないしね」
「じゃあ、甘えさせてもらいます」
そう言って冷蔵庫からご飯と鯖味噌を電子レンジで温める。
遠くからグリーンロケッツの「肉まんもあっためといてー」と言う声がする。
「自分でやりなさい」
「えー?このミラクルセブンのお祝いなのに~」
「祝われに押しかけてくるのは世界広しと言えどもグリーンロケッツぐらいでしょうね」
「まあまあ、俺があっためとくよ」
たぶんグリーンロケッツにとって一番の勝利のごちそうは、こうやってみんなで食べてるときなのかもしれない。
そう思えばこのちょっと奔放すぎる振る舞いも許せる気がする。



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スピアーズとグリーンロケッツとシャイニングアークス。
800日ぶり&今季初公式戦勝利おめでとう!

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