忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

祭りの後の静けさに

「ああああああああ~……」
パラリンピック閉会式中継用カメラのセッティングをしながらこぼれたため息に、隣にいたシャイニングアークスさんがこっちをにらみつけた。
「ため息がでかすぎません?」
「だって寂しいじゃないですか、夏と一緒にオリパラも終わっちゃって……」
「あなた一番ノリノリでしたもんね、毎日マスコットと試合実況してましたし」
「中継担当の手伝い名乗り出たのは確かに僕のほうですけど、実際もうすぐ終わりってなると寂しいですし」
「気持ちはわかりますけどね。カメラの準備出来ました?」
「どうぞ」
カメラ端子を繋いで特設サイトでの中継準備を進めるシャイニングアークスさんに対し、僕のほうはもうカメラの設置準備の進捗確認だけなので隣に腰を下ろす。
「これでしばらくお祭りがなくなっちゃいますねえ」
「たった半年の我慢ですよ」
「新リーグ?」
「それ以上の祭りが僕らにあります?」
シャイニングアークスさんがニヤリと悪巧みを思い付いた子供のように笑う。
「確かに」
この世界最高の祭りは今日で終わる。
だけどまだ楽しい事が僕らを待っているのだ。



-----
イーグルスとシャイニングアークス。
五輪ゴールドパートナー(親会社が)コンビでした。

拍手

PR

引っ越しおろしそば

引っ越し祝いに貰ったものを自分の部屋に積み上げながら、ふうっと小さくため息が漏れた。
乾麺のそばやお酒類、引っ越し祝いの花束、金券やカタログギフトの冊子、タオルや箱テッシュなどその量は結構なものだ。
「ワイルドナイツ生きてる〜?」
「勝手に人を殺すな」
ひょっこり顔を出したアルカスが「いや外も人が多くてすごかったから」とつぶやく。
俺の新しい拠点となるさくらオーバルフォートに拠点を移したアルカスはいわばご近所さんであり、引っ越しの合間にちょくちょく顔を出してきていた。
「結構メディアも来たからね」
「注目度が桁違いだわ、昼ごはん食った?」
「食ってないけど何?」
「いやこのそば貰っていい?」
「俺の分も作ってくれるなら、冷蔵庫の食材好きに使ってくれていいよ」
「数日分のご飯代浮いたな」
そう言いながら乾麺のそばを持って台所で早速料理を始めてくる。
太田から持ってきた荷物は一通り出したがとりあえず誰から何を貰ったかを把握し、遠方から引っ越し祝いをよこしてきた人たちには礼状の準備も要る。
花束も意外に多いので花瓶が足りるか不安になってきたが、最悪ペットボトルに刺して置けばいい。
それに明日様子を見にくると連絡してきた身内の相手や、9月以降に本格稼働する施設の担当者への挨拶は必須だろう。
「……引っ越し準備もうやだ」
「引っ越したじゃん」
「まだ開けてない荷物が積んである」
「のんびり開けてけばいいじゃん」
そう言いながらアルカスがサクサクと手を動かしていく。
湯がいたそばに大根おろしと麺つゆ、刻みネギや茗荷などの薬味類、細かくしたサラダチキンがさっと乗せられる。
「へいお待ち」
「ん」
とりあえずもう考えるのはやめよう。
日が暮れてメディアが帰ったら体を動かして、シャワーも浴びて、今夜はしっかり寝よう。
そばを思い切りかき混ぜてずるっと啜れば爽やかな味がする。
「……72点」
「微妙な点数やめて」



_____
ワイルドナイツとアルカス。熊谷へのお引っ越し編。

拍手

甘いものがある時間

北海道行きが消えた。
具体的にいうと北海道でやる予定だった10人制の大会がコロナで吹き飛んで消えたので一緒に北海道行きも消えた。
で、やってられるか!と取り寄せた北海道の食い物をちびちび食いながら新会社設立の準備に追われていたら東京五輪もろくろく見れずに8月も終わりに差し掛かろうとしていた。
「はー……」
げんなりした気持ちで天井を見上げても仕事は減らない。
ジュビロ……いや、今はブルーレヴズか。あいつもまあよく嬉々として新会社設立業務をこなせたものだ。
「まさか分社化するからって法律と経理の勉強しとかないといけないとはなあ」
親から渡されたテキストの進みは遅く、年内にはこれを一通り頭に叩き込む必要がある。
企業内の部活から独立企業になるとき商法・会社法・経理を一通り覚えておくようにしておく、というのは通過儀礼のようなもので他競技チームも同じようにしてるらしい。
もういいやという気持ちで仕事用のパソコンを閉じ、テキストもタオルをかけて無かったことにする。
「おやつにするか!」
生来は辛党だった俺だが最近は脳みそを頻繁に使うせいか、脳みそが甘いものを求めてくることが増えた。
特にチーズケーキ、うちのスタッフに無類のチーズケーキ好きがいるのもあって最近はほぼ毎日食っている気がする。
北海道から取り寄せたホールのレアチーズケーキに、サンゴリアスから最近勧められたカフェベースを牛乳で割ってカフェラテに。
レアチーズケーキは1ホールを6切れに切ってうち2切れを皿に、ミックスベリーのソースをかけて完成である。
人目を気にすることなく1切れを手掴みでガブリとかじればチーズの酸味とベリーの酸味の奥から甘さが舞い降りてくる。
「……すっかり俺も甘党になったな」
甘いものが苦手という訳じゃないけれど進んで食べる方では無かったのを思えば随分甘いものを食うようになったな、と思う。
これがいいのか悪いのかは、箱の開けてのお楽しみということにしておこう。

拍手

五輪の夏にあんみつを

世間が五輪に騒ぐ夏のさなかでも容赦なく仕事はやってくる。
親からのお使いで東京各所を回りまわってようやく一息付けたのは、日も暮れ始めた5時過ぎ。
少し食べてから帰ろうと最寄り駅である上野駅へと歩いていくとけたたましく携帯電話が鳴り響いた。
『うわああああああああああああん!!!!!!!!』
「イーグルス、その様子だとセブンスのほうで何かあったか?」
可愛い弟分は今回の五輪の応援には人一倍気合が入っていた。
なんせキャプテンがサンゴリアスの所から自分の所に来てくれた男で、その足の速さは注目を浴びていた。
『セブンス見てないんですか?!』
「今日は一日出歩いていたものだからろくろく飯も食えてない状況でな」
『ちひとくんのオリンピックがさっき終わりました』
あまりの落ち込み方に見かねて、歩きながら慰めの言葉を考える。
「……15人制代表の暗黒時代よりはマシだろう」
『15人制は五輪種目じゃないじゃないですか』
「次の五輪があるだろう、元気を出せ」
『そのタイミングだともう世代交代してますよ!うちの選手が世界一になるところ見たかったのに!!!!!』
「其れを言うならうちのボークコリンももうそろそろ年齢的に危ういことになるんだがな」
『まあそうですけどねー……』
落ち込み気味のイーグルスに何か一つ手土産でも買っていこうか、という気持ちになる。
後輩に甘すぎると言われそうだが、可愛いものは可愛いので致し方ない。
「このあと町田まで赴こう、其れでセブンスの試合を見て反省会をしつつ甘味でも食らうのはどうだ?」
『来るんですか?』
「可愛い後輩の嘆きを慰めるのも先輩の仕事だからな、ちょうど上野に居るからみはしのあんみつでも持って行こう」
この後輩は下戸だから酒よりも食い物のほうが良いだろう。
甘いものも嫌いではないはずだし、あんこにコーヒーと言うのも悪い組み合わせではない。
『……白玉あんみつを』
「分かった。移動の合間に我も今日の試合には全部目を通しておく故冷えた飲み物でも準備しておいてくれるか?」



その頃の熊谷
アルカス「男子ふがいない結果に終わったわねー」
ワイルドナイツ「一勝も出来ずに終わったのは残念だけど松井はほぼ全試合でトライもぎ取ってるし十分でしょ、女子はいつからだっけ?」
アルカス「29日だからー……明後日か。明後日の10時半」
ワイルドナイツ「その時もまたアイス持ってきてね」
アルカス「いや私はあんたんちの大画面テレビでセブンス見たいからアイス持ってきてるだけで、別にアイスあげに来てるわけじゃないんだけど」

-----
ブラックラムズとイーグルス

拍手

五輪の宴に騒ぎながら

「始まっちゃったんだな、オリンピック」
テレビをつけてそのことへの気づきで思わずため息をついた。
熊谷への転居を控え、毎日のように荷物の整理に追われていたせいで少し世俗の流れを忘れていたような気がする。
開会式も見ていないし五輪をめぐるゴタゴタに少しばかり嫌気もさしていたが、日本人の金メダルの報道を受けてみればめでたい気持ちにもなる。
福岡堅樹の諦めた夢舞台は華やかで輝かしく、誰もが自らを削り一番美しい色のメダルを目指している。
ヨシさんも出るあの景色をせめて見届けたい気持ちになって、スマホで7人制ラグビーの予定を確認する。
「……男子の予選プールは26日か」
放送時間をもとに視聴予約を入れて、小さく息を吐く。
見にいこう。彼が届くことのなかった場所の風景を。




ワイルドナイツさんと五輪

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ