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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

新しい日々が来る

会見用に整備されたイクスピアリの映画館の一番目立つ場所に、スーツを纏うレイドローが座っている。
それを配信用カメラに収めながら僕はその理知的な眼差しに期待を隠せずにいる。
(まさかスコットランドの英雄が初めて指揮するのがうちになるなんてねえ)
ニヤニヤしながらその姿を見つめていると、レイドローのヘッドコーチ就任が明かされたときの事を思い出す。
『すっかりレイドローはお前んとこの人になってもうたなあ』
電話越しに皮肉めいた一言をこぼすレッドハリケーンズに『はいはい』と僕が答える。
『せやからアッカーマンさんうちに返してくれん?』
『それはそっちで交渉してくださいよ、まあうちのアドバイザーやりながらヘッドコーチは無理でしょうけど』
『お前が連れてったんやろ』
ぶすくれながらライナーズが言い捨てる。
再編の時にハリケーンズの時に実績を上げてたアッカーマンさんがうちに来てくれて昇格まで漕ぎ着けたのは事実だが、そんな誘拐したかのような言い回しはやめて欲しい。
『そもそも全ては親の意向でしょうに』
『ならもっと早よ上にあがれんかったんか?』
そこを突かれると言い返せないのがつらいが、それはしょうがない部分もある。
まあウダウダ言っても結局僕は昇格した。その事実が消えることはない。
『ならそっちも昇格してD1でコテンパンに打ち倒してみなさいよ』
『……絶対D1あがってお前をボコボコにしたるわ』
『せいぜい楽しみにしてますよ』
殺意強めなレッドハリケーンズとの電話を切ればレイドロー来日の予定についての連絡が来ていた。
来日の日に丸をつけた後、最初のプレシーズンマッチの予定日までの日数を数えればあっという間のような心地がする。

「早く試合したいですねえ」

ようやく、僕らの季節が来る。


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Dロックスの話。
ずっとレイドローとトンプソンルークがごっちゃになってたことにこれを書いてる途中で気づきました。

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峠越え

*明治の終わりぐらいの話

釜石のところに行こうと思うと、長い峠越えがいつも待ち構えている。
軽便鉄道どころか普通の鉄道では超えるのが厳しい仙人峠を歩いて超えなければならないのだ。
索道を作るという話もあるが、この索道は貨物用だというのでどちらにせよ旅客は歩いての峠越えを強いられることには変わりない。
服装を動きやすいものに変え、峠越えの途中で飲む水を水筒に詰め、杖を一本持って行く。
(……釜石はいつもこういう準備してあの峠を越えていくんですよね)
準備を終えるとさっそく峠道に挑むことにする。
この峠道は一里、約四キロ程だからゆっくりでも一時間半もあれば超えられる。
足元の悪い山道を多くの旅客の背を見ながら登っていく。
地元の人間はもう慣れてしまっているようで話しながらすいすいと登っていくのが見え、自分が不慣れであることをつくづく実感する。
(まあ、地元じゃ歩いて峠越えなんてする機会もないですからね!)
釜石が長い山歩きを苦としないのはきっとこの峠越えに慣らされているのだろう。
九州では見ることの無い白樺に包まれた峠道を上り続けていると、遠くに海が見えてきた。
「あれが三陸の海……」
いつも見ている洞海湾や関門海峡と違い、ただただ果てしなく青い海と空が広がる景色には美しいという感想以上に見慣れなさが湧いてくる。
なんせいつも見ている海は潮の向こうに対岸が見えるのだ。見慣れないのは仕方ない。
ぼうっと海を見ながら水筒を開けて休憩していると遠くにダイナマイトの音が聞こえてくる。
(この辺まで来ると鉄鉱石の採掘音も聞こえてくるんですね)
思ったよりもはっきりと聞こえてくるのはきっと採掘によって出来た坑道が伝声管のようにこの山いっぱいに伝えてきているのだろう。
「さ、もうちょいですね」
水筒のふたを閉めて今度は峠道をのんびりと降りていく。
夏山の緑のなかを抜けていくと、遠くに鉄道の音が聞こえてきた。峠越えももう少しで終わりだ。
「八幡、」
そう声をかけてきたのは釜石本人だった。
川べりの大きな石に腰かけてずっと待ってくれていたのだとわかると、慣れない峠越えで疲れていたはずの身体から気力がわいてくる。
元気が自分の足を駆け出させてきて釜石の身体をぎゅっと抱きしめる。
「遠路はるばるよく来たな」
「すごい疲れました」
お疲れさんと言うように釜石が頭を撫でてくれるのが嬉しくて、峠越えの疲れが抜けていく。
「初めてお前のとこに呼ばれたときも同じように峠越えしてきたんだぞ?」
「きつくなかったんですか?」
「いや、むしろ楽しみだったかな。それに今回もちょっと楽しみにしてたんだぞ?なんせかわいい一番弟子がわざわざ来てくれるんだからな」
釜石がにこやかにそんな事を言う。

「この石から先が釜石だ。ようこそ、三陸・釜石へ」



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はじめての仙人峠越えをする八幡の話。
現在は釜石線が仙人峠を繋いでくれるので歩かずに越えられますので釜石においでよ。
ちなみに釜石が座ってたのは地名の由来になったと言われる釜状の石です、しれっとすごいもんにすわってやがる。

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夏空を往く

ラグビー組の夏短編です

・夏祭りに行こう(ヒートとパールズ)
地元のお祭りに出る事になったので、ちょっと気合を入れて甚平を購入した。
とは言っても昼間はチームユニで行くから甚平を着るのは夕方になってからである。
(でもユニめちゃくちゃ暑い……!)
ただでさえ山車を引いてるせいで暑いのに、黒っぽいユニだから太陽光の熱を溜め込んでめちゃくちゃに暑くなるのだ。
少し休憩を挟んだらうちわ配りもあるし、楽しさよりも疲労感が先に勝ってしまうのがつらい。
「おつかれー」 「パールズ……」
冷たいスポーツドリンクを渡してくれたパールズは白地に朝顔の浴衣を着ていて、お祭りをエンジョイしてる感じが溢れている。
「かわいい」
本心が口から溢れるとパールズはちょっと困惑したような照れを見せてくれて、それがなお可愛かった。

・菅平の恋しかり(ブラックラムズとサンゴリアス)
チームで運営してるラグビーアカデミーがサンゴリアスのところのアカデミーと合同で合宿をやる事になった。
「じゃあ、アカデミーの合宿に同行するんだ」
「お互い初めての試みだからな、様子見に同行しようかと」
「俺も仕事がなければなあ、トップチームはともかくアカデミーのほうのイベントは仕事扱いにならないし」
サンゴリアスはそうぼやきながらお茶を飲む。
このところ別の仕事が詰まっていて、息抜きがてら我のところに来てアカデミーの書類を渡しに来たというが少々リラックスしすぎのようにも見える。
「其れは仕方無いと思うがな。我も夜はホテルで仕事だぞ」
「でも菅平なら東京より涼しいから捗りそう」
「最近は菅平も幾ばくか暑くなったがなあ」
けれど菅平が東京よりは涼しいのも確かな話であり、あの涼しさが恋しいのはみんなきっと同じなのだろう。

・今年もみんなで(グリーンロケッツ)
今年もファンクラブイベント花火のタイミングがいいよね、と俺が提案したら思いの外するっと話が通ってしまった。
ファンイベントのお見送りをしながら、花火も良かったねえなどと言う声を聞いていると提案が通った事が嬉しくなる。
「来年以降も花火のタイミングに合わせてファンクラブイベントが良いかなあ」
選手もスタッフも楽しかったみたいだし、来年も同じ提案をしてみようか?

・炎天下を駆け抜けて(ライナーズ)
「もうこんな季節なんやなあ」
新しいチームが始まる前に、彼らのために新しい練習着やトレーニング用の道具などを発注しながらついそんな言葉が漏れる。
秋冬のスポーツであるラグビーはチームが夏頃に始まるのでそれに合わせて準備をしている。
古い道具の買い換え、新しく来た選手やスタッフのサポート、あとはリーグ戦に向けた準備もぼちぼち始めておく必要がある。
窓の外では炎天下の中を汗だくで走る選手たち。
そのうちの数人と不意に目が合ったので、「気張りや」の気持ちを込めて手を振ってみたりなどすると選手達もニコリと微笑み返してくれる。
(まあ気張るのは選手だけやのうて俺もなんやけどねえ)
今年のシーズン開幕まではまだ半年くらいはあるけれど、日々の仕事に追われていればあっという間だ。
また今年もラグビーの季節が忍び寄ってくる。


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水出し茶を手に

久しぶりに宝山が日本に来ると言うので、今朝から水出し茶を準備して待つ事にした。
白牡丹の茶葉をミネラルウォーターのボトルに入れて半日置いておいたので淡くお茶の色もついている。
「你好,好久不见了(こんにちは、お久しぶりですね)」
「我已经很久没有来这里了,宝山(こちらこそ久しぶりだな、宝山)」
立ち話も何だからと部屋にあげてから一番によく冷えたお茶を出せば「白牡丹の水出しですね」と薄く笑う。
「今日も暑いから水出しがいいかと思って。でもなんで日本に?」
「君津老師にはちゃんと話しておきたかったので」
再びお茶に口をつけてから切り出されたのはある事実だった。
「弊社と日本製鉄はこの度提携を終了する事になりました」
「……そうか」
「あの人にとって今の中国は市場として魅力が無いんでしょうね。会社としての付き合いは多分これで終わりでしょう」
宝山が来日したのはたぶんそれ絡みの話し合いなのだろう。
いずれそういう事はあるだろうと思いつつも、兄弟同然であった宝山とほぼ会えなくなるだろうことは淋しく思える。
(まあ八幡と宝山が決めた事だし俺がどうこう言う権利も無いけどな)
この寂しさを例えるなら、子の独り立ちを見守る親だろうか?まあ俺の親であるはずの八幡は個人としてはあんまり俺に情を掛けてる印象ないけど。
「別にこれが今生の別れではないので、また東京に来る時には個人として遊びに来ますよ」
「それは知ってる、ただ少し会う機会が減るのが寂しいってだけだ」
「元から多くないですけどね」
困ったように笑いながらよく冷えたお茶に口をつける。
空になったグラスにお茶を注いでやれば宝山は嬉しそうに笑う。
名目上の繋がりが消えたところで、半世紀かけて作られた関係性が消える訳でもない事は幸いなのだろう。
「まあ、なんだ。お前も頑張れ」
「当然です。そうだ、お土産あるんですよ」
カバンから中国茶のお茶請けを出してくるので「谢谢」と受けとった。



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君津と宝山の話。日鉄が中国から手を引くらしいと聞いて。
この二社はガチで殺りあってない印象あったので寂しいけどまあしょうがねえわな……と言う気持ち。

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妹が泊まりに来たもので

「なんか随分買い込んでません?」
近所のスーパーで遭遇した職員の人が俺にそんなことを聞いてきた。
「明日水島と福山さんが泊まりにくるから買い置き多めに買っとこうと思って」
「へえ、鹿島さんとか君津さんじゃないんだ」
あの2人は他社だけで時々遊びに来てそのまま泊まる事が多いからみんな慣れてるけど、水島と福山さんはだいたい近くのホテルを取るから泊まりに来ることはあまりない。
「君津は直接行けるしねえ」
「直接……そっか、明日社会人野球の1回戦ですもんね」
「野球見に来たのはいいけど宿取り損ねたらしくてさ」
色々言いつつ荷物を放り込んだらもうカゴがいっぱいになってきたな、と思ったら職員さんが自分のカートに載せた空いてるカゴをくれたのでありがたくいただく。
「まあ水島も、水島を大事にしてくれてる福山さんも、別に嫌いじゃないしいいんだけどね」
「兄妹仲良くていいですね。じゃ、俺行きますね」
そう言って別れてから、そうかな?とちょっと考える。
よその兄妹仲については良く知らないけど君津の妹分だった東京は君津のとこに時々泊まってた記憶がある。
(まあ仲良いって言われる分にはいいか)
そう考え直してアイスのコーナーで水島の好きな箱アイスを放り込んだ。


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千葉と水島の話。明日の社会人野球はJFE東西が揃うらしいので。

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