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コーギーとお昼寝

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そして梅雨の日々

在宅勤務にもすっかり慣れ、むしろ必要以上に外出ずに済むからいいかもなあなんて思う今日この頃。
テレワークにと買った高い椅子でうたた寝をしている俺を叩き起こしたのは、窓の外からの強い雨の降る音だった。
「……今何時だっけ?」
スリープモードになっていたパソコンを起こすと午後6時前。
ちょっと長めの昼寝のお陰か、頭はすっきりしているけれど小腹が空いた感じがする。
冷蔵庫からよく冷えた麦茶と、ネットで購入したおせんべい詰め合わせセットから適当に一袋。
にしても、ネット通販の段ボールもいい加減捨てに行くべきだと分かっててもつい後回しにしてしまうのはなんでなんだろう?
雨のせいかひどくじめじめした空気が張り付く感じがする。
クーラーをつけて麦茶とせんべいを相棒に仕事用のメールフォルダを確認すれば、昼寝前に送信していたらしい(ちょっと寝ぼけていたのか記憶があいまいだ)書類の返事が八幡から届いている。
『確認しましたが、誤字脱字がひどいので明朝までに再提出してください』
「書類仕事は寝ぼけてするものじゃないな……」
ため息を漏らしつつ送信したファイルを開いて修正することにする。
ほとんどが変換ミスや送り仮名程度の基本的な間違いだけど、後半部分は相当寝ぼけてたのか数が多い。そりゃあ再提出と言いたくなる。
逆に寝ぼけてても完成させて送信した俺もある意味すごいと思う。
30分かけて見つかったミスはおおむね直し、ほかにも見逃したミスが無いかだけ確認して八幡に送信する。
これで今日の仕事は終わりと言っていいだろう。

「……にしても、これいつまで続くのかなあ」

在宅勤務も慣れたけれど、相変わらず外の世界はコロナ景気で厳しいまま。
サッカーは再開したしプロ野球も開幕したけれど観客はスタジアムに入れない。
まるでこの窓の外に降り続く長雨のように、世界が元に戻る日の見通しはまだ立たない。

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ある梅雨の在宅勤務な鹿島さん

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日々は続くよどこまでも

『ついに定例の高炉メーカー代表会議もテレワークになったわね……』
神戸さんがひどく真剣なまなざしでそうつぶやく。
その声には疲労とストレスが見え隠れしているのがはた目にも分かる。
『まあこのご時世ですからね』
八幡さんのほうも少々疲れてるのか濃いめのクマがあり、バリバリと堅パンをかみ砕いてはコーヒーで流し込んでいる。
『八幡さんよく歯砕けないですね……』
『和歌山、堅パンは奥歯でかみ砕けば折れませんよ。今度やってみなさい』
『俺は海南の手作りサンドあるからいいですー』
そう言いつついいでしょー?と言わんばかりに手作りのサンドイッチを見せびらかしてくる和歌山さんは実に楽しそうである。正直うらやましい。
『いいなあ、俺もそろそろここから外に出たい……』
そう言うと千葉さんのほうは椅子に全体重をかけてだらりと上を向いてしまう。
……というかこの背景なんだろう?ゲームなのはわかるけど具体的に何なのかは分からない。
『千葉、その背景なんなんですか』
『スマ〇ラだけど』
『まじめに仕事する気あるんですかそれ』
『じゃあ背景変えるー』
そう言うとなぜか背景が一面のから揚げになった。美味しそうだけど仕事感はやっぱりない。
『仕事へのやる気を微塵も感じませんけど……まあいいでしょう。ところで呉、あなたさっきから全然喋りませんけどちゃんと繋がってます?』
そうこうしてるとこちらに話が急に降られる。
「あっ、大丈夫です!」
『なら良かった、事前に送ったpdfはもう目を通してますよね?』
「はい」
『読んでるよー』
『とりあえず全部読んであります』
『……というか今日の会議内容、あのpdfに書いてある以上のことはないわよね?』
神戸さんの指摘に八幡さんはハイと軽く返した。
『とにかく全員が目を通してることが確認できればそれで良いです。あと各々言いたいことは?』
『うちは特になーし』
『あの、八幡さんそういやこのところ体がだるいんですけどやっぱバンキングの影響ですかね?』
和歌山さんがそう問えば『多分そうでしょうね』と言う。
『君津と鹿島からも同様の報告が上がってるので一時的な高炉停止の後遺症でしょうね、長期化するようなら対策練りますから別途連絡ください。
呉のほうはどうです?』
「うちはどうにか、うまくやれてるので大丈夫です」
『うちからは特になしだけど……本題からそれること一つ聞いていい?』
『どうぞ』

『……このところ白髪が増えた気がするのよね』

『あなたも年相応に老けたって事でしょう、とりあえず終了で』
『違うのよ!この二か月で急激に白髪増えたの!八幡も同じこと起きてない?』
『年取れば白髪の一つ二つ生えるでしょう?』
『西宮はこの二か月ぐらいで白髪増えたって言ってたなあ、市販の白髪染めが合わなくて苦戦してるって』
『俺も最近ちょっと抜け毛がひどいんじゃないかって言われるなあ』
「……自分も、春先辺りから急に白髪が」
元の髪があまり長くないこともあって目立ちにくいが以前はなかった白髪を指摘されることが何度かあった。
周南は白髪になっても気にしないというが、人ならざるものでもこうして白髪になるのだと思うと安心する。
『それはどう考えても合併ストレスでしょ』
『私もそう思うわ』
『呉、怒るべき時は怒らないとダメだよ』
神戸さんや千葉さん、和歌山さんにまでそうなだめられる。
『会議終了しますね』
ブツっと回線が切れた。八幡さんが終了させたのだろう。
何となくよく分からない疲れがどっと押し寄せてきて思わず机に突っ伏した。




(……周南、次屋兄さん、桜島さん、東予、堺。また全員で逢える日は来るだろうか)

暗い日々はそうすぐに終わりそうもない。


呉と八幡和歌山神戸千葉のはなし。

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ホットケーキとパンケーキ

小倉の駅前でばったりとばたに遭遇した時の第一声は「内緒にしてくれますか」だった。
自粛自粛のこのご時世だ、散歩にしては遠すぎる距離の移動を咎められるのは困ると思ったのだろう。
「……別にお前さんを困らしたい理由はない」
そう告げると安堵したように表情が緩んだ。
「なら良かった」
「むしろ俺もそこらへん歩いてるほうが怒られるだろ」
「そうですね、私も黙ってます」
お互いそう言いあいながらぶらぶらと平和通り沿いを歩いているととある古い雑居ビルに入っていく。
「なんか用事でもあるのか」
「馴染みの店があるんです」
戸畑の後ろについていくと雑居ビルの3階へと迷いなく登ってゆき、古い木の扉を開けた。
赤いじゅうたんが敷き詰められ、レトロなカーテンや古いテーブルの並ぶ底はミルクホールの雰囲気がある。
本当に馴染みなのか店主はさっそくアイスコーヒーを二人分出してきて「予約のものは少しお待ちを」を言ってくる。
「ほんとに馴染みなんだな」
「ええ」
古めかしいがよく手入れされた机やいすは座り心地がよく、ガラスの灰皿やいくつかの新聞の横に喫煙可の看板もある。
ありがたく煙草に火をつけ、スポーツ紙を開いた。
競馬欄を再確認してからスマホで馬券購入の手続きをする。
「競馬場行ってたんですか」
「ああ。でもよくよく考えたら今無観客なんだよな……もちろん黙っててくれるよな?」
「私も小倉さんを困らせる理由はないので」
お互い様という結論に至ったのちに馬券の購入手続きを終えてスマホをしまうと、遠くから何かの焼ける香ばしい匂いがした。
「お待たせいたしました、ホットケーキです」
店主が出してきたのは厚さ2センチはあろうかという分厚い3枚重ねのパンケーキだった。
こんなに分厚いのは初めて見たが店主も焼くのに一苦労しそうな代物だ、予約のものと言っていたのはおそらくこれだろうが予約制なのも察しが付く。
さっそく戸畑はざくざくとフォークで切ると何もつけずにかじりついた。
焼きたての湯気と香りは辛党の自分の目にもおいしそうに見える。
「……最近はやりだよな、ホットケーキ」
「ええ。家で作るのもいいですけど私はここの分厚いホットケーキが好きで」
どうにも我慢できなくてと戸畑が苦笑いを漏らすが、確かにこれは素人では作れそうもない。
「そういやホットケーキとパンケーキってどう違うんだろうな」
「一般的にはほぼ同じものですよ、甘さや厚みやかけるものなど細かい違いはありますけどね」
開いていた馬券購入サイトを閉じて地元のニュースサイトを開く。
八幡の高炉閉鎖前倒しの文字がトップニュースを飾っているが、その写真は俺の高炉だ。
違うのに同じものとして扱われることへの嫌悪感がかすかに胸に落ちる。
「本当に同じなのか」
戸畑は俺の手元のスマホを見て俺の意図を読んだのだろう、ひとくちコーヒーでのどを潤してからいう。
「小倉さんが自分を自分だと信ずる限りは、別物であり続けるでしょうね」
ぼんやりとした答えだが、今はもうそれにすがるほかないのだろう。



小倉と戸畑。八幡であって八幡でない二人の話。

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一万巻の祈り

煌めく糸をひと針、またひと針と刺していく。
その間だけはすべての雑念が払われて凪いだ海にいるような心地になれる。
紫から青へと変わる布は夜空になり、黄金色に光る糸は夏の星空になり、遠くに混ざる水色は水平線になる。
星空の下にはわれらの可愛い末弟・周南とその良人である呉ののうしろ姿を。足元には果てしない白砂の大地を。
輪郭を縫い取ったところで窓の外に目を向ける。
5月、新緑と青空の季節だ。しかしそこには人気は無い。
昨今の病禍により人々は日を浴びることなく暮らしていることを思い知らされる。

(……あの二人は、どうしているのだろう)

まともに顔を合わせていないのではないだろうか。ひとりでつらく悲しんではおるまいか。
そんな風に思うのは自分にとって周南のみならずその良人、そしてその兄たちももまた自分にとって大切な人だからなのだ。
かつて国営の名を冠した人の思惑によって出会い、新たな名を得て共に働いた日々は手が届きそうなほどに近いがすでに過去のことになってしまった。
良人として選んだ呉を失う未来が定められた周南を想う。
そして二人の幸いを願って神仏に何度となく祈ったことを、その祈りが届かなかった無力さを、思う。
そして、兄よりも先に死ぬことを宿命づけられた弟のことを泣くことすらできなかった次屋のことを想う。
そのことを誰かのせいにできたらばどれだけよかっただろう。
紫の空に向かって手を延ばす二人を布に描くことは祈りであり贖罪であり供養であるのかもしれない。
「……祈りとは、無力だ」
しかし終わりのない荒行のように延々と祈りを重ねること以外に詫びる手を知らなかった。




桜島さんのはなし。

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夜明けまで語れたら

外出自粛のこの頃、とにかく人との雑談が恋しくなりがちで気づくと誰かに連絡してしまう。
特に酒が入るといやに寂しくなっててきとうに連絡をつなげてみる。
今日は西宮と神戸のほうと連絡がつながって「ひさしぶり」と声をかける。
『久しぶりって程じゃないわよ、3日ぶり』
「そんな頻繁に連絡してたっけ」
西宮が何かを確認すると『今月半ばからほぼ3~4日おきに連絡もらってますね……』と言う。
人恋しくなってる自覚はあるがそこまでやってたのかと思うと「なんかごめん」としか言いようがない。
『そういえばお気に入りの飲み屋が閉まってるとか言ってたわね』
「緊急事態宣言出てすぐに閉まっちゃって、いちおう配達はしてくれるんだけど人と話さないと飲んだ気しなくて」
『今いろんなもので前で頼めますもんね』
「ほんとになー、西宮いまなに食ってるの?」
『お取り寄せした北海道のカチョカバロと山梨の無添加ワインです、これがすっごい美味しくて……』
液晶画面に映されたワインの瓶と焼いたチーズの画像はいかにも美味しそうだ。
『ホットプレートでお野菜も一緒に焼いてるんですけどこのお野菜もおいしいんですよ』
『完全に酒飲みねえ』
「神戸は?」
『木曜は休肝日にしてるのよ。代わりにチャイを淹れてもらってるとこ』
そう言ってると神戸の横から小さめのマグを持った手が伸びてきた。
『スティーラーズ、挨拶』
『ああ、いつもお世話んなってますー』
いつもの赤毛をナイトキャップにしまい込みゆったりしたパジャマのスティーラーズがへらりと笑って手を振った。
「スティーラーズか、こっちは本格的に久しぶりだな」
『そうですねえ、姐さんがここでお茶する時しかお会いしませんもんねえ』
「ラグビーも休みだし暇してるだろ」
『そりゃーそうですよぉ』
「サッカーも中止だしなあ、千葉とかも泣いてるだろ」
『うん、本当はこの連休に遠征がてら顔見に来てくれる約束だったんだけど試合が中止になっちゃったからやっぱりさみしいわね』
『ラグビーも中盤のいいとこでリーグ戦終わっちゃったからほんと嫌よね』
『こればっかりはどうにもなりませんって。お二人もお体気を付けて、俺はここで退散さしてもらいますねー』
そう言ってスティーラーズが画面から消えていくのを手を振って見送れば『ま、あの子がすねてこないぶんましなのかしらね』と神戸が言う。
「拗ねてるのは神戸のほうだろ」
『べつにすねてないわよ』
『そういう人のほうがすねてるように見えたりしますよね』
「西宮もこう言ってるぞ」
『すねてないわよ』
不機嫌そうに神戸がチャイを飲むと、西宮がそういえばと話を切り出す。
『私チャイって飲んだことないんですけどスパイス入ってるんですよね?』
『そうよ、生姜とシナモンとカルダモンを紅茶と煮だして牛乳と砂糖を入れてね。生姜入ってるから指先の冷えに効くし、寝る前に飲むとよく寝られる気がするのよね』
『へえ、私も試してみようかな』
『茶葉はニルギリで作ると美味しくできるわよ、水も硬めのミネラルウォーターを沸かしてね。
スパイスは粉末のを使うんだけど私は粉を買っても使いきれないから普通のひね生姜を薄切りにして使っちゃうのよね。あ、シナモンとかカルダモンも買ったやつ余ってるから今度あげるわ。
あとはー……「長いな!」
思わず私が渾身の突っ込みを淹いれると『いいじゃない別に』と不満を漏らす。
「ほんとに紅茶好きだよな」
『そうね、此花はあんまり飲まないわよね』
「出されれば飲むけど高い紅茶を少量より安い麦茶がぶ飲みしたいだけ」
『あなたそういうタイプよね、量より質というか』
『それはちょっとわかりますね』
「西宮ー……もどっちかと言えば神戸タイプか」
『そうですね。私たくさん食べるタイプじゃないですし多少高くてもおいしいもの食べたいじゃないですか』
『一人だからこその自由ね』
「味方がいない……」
『まあそういう日もあるわよ』
終わりのない雑談をグダグダと続ければちょっとは寂しさも消えていく。
新しい酒に口をつけてると神戸がおすすめの茶葉の話をしだすので、それをぬるく眺めながら終わらない夜を過ごしている。


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