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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

冬には紅茶をなみなみと

「11月になっても試合がないってのは違和感あるわよね」
「いつもならもう試合の時期ですもんね」
私が秋摘みのダージリンの詰まったポットにお湯を淹れながらそんな話をしていると、「帰りましたー」と玄関のほうからスティーラーズ君の声がした。
「あ、ティータイム間に合った」
「お疲れ様です、今日はオータムナル・ダージリンですよ」
「秋摘みなら俺ミルクティーにしますわ、姐さんたちは?」
「ブラックで飲むから私は大丈夫」
「私も少し砂糖とミルクいれるぐらいにしようかと、オータムナルはまだ飲めてなかったですし」
ほんなら俺だけかーと言いつつも牛乳をミルクパンで沸かし始め、ついでにと鍋にプロテインの粉末をいれる準備もする。
「ミルクティーにプロテイン?」
「結構いけますよ、冬場は冷たいプロテイン飲みたない日もありますしね」
濃いめに出たダージリンを鍋に投入し、少量の砂糖とプロテインの粉末を入れてしっかり混ぜて溶かすとほかほかのプロテイン入りミルクティーが出来上がる。
果たして美味しいのかしら?と疑う姐さんと私を尻目に「これミルク風味のプロテインですから味は邪魔してませんよ」とスティーラーズ君はあくまでマイペースだ。
ミルクティーで一息つきながらバターケーキをつまむその姿はいたって満足気に見えた。
「……あとでちょっと試してみようかしら」
「冬場はおすすめですよ、冷えと空腹予防にはいいですしね。あ、そういや姐さんチケットとかどないします?1月の開幕戦ノエスタですし来ますよね?」
「行くわよ、開幕戦は加古川と行こうかと思ってたとこ。2月の山口での試合はちょっと無理そうだけど」
サラッと姉さんが私も頭数に入れてるが、まあ一日ぐらいなら日程を調整すれば行けるだろう。
前シーズンの時、姉さんがバレットの日本初試合見たさに無理やり東京出張の担当を自分に変更して秩父宮に参戦したのを思えば平和である。
「まあこのご時世ですしねー」
「本当にねえ、早く気軽にどこでも行ける状態に戻って欲しいわ」
二人の会話を適度に聞き流しながら日々寒くなる季節に思いを馳せる。
本格的なラグビーの季節は、近い。



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加古川ちゃんと神戸ネキとスティーラーズさん。
ホットプロテインはM永も推奨してたので大丈夫、たぶん。

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かぼちゃは食うもの飾るもの

金曜日の夕方、突然のチャイムとともに襲撃してきたのはチーバ君の着ぐるみを着た千葉とゾンビのコスプレをした鹿島だった。
「トリックオアトリート!」
「ごはんつくらなきゃいたずらするぞー」
段ボールいっぱいのカボチャを俺に押し付けながら俺に夕飯をせびってくる鹿島に俺は思わず頭を抱えたくなった。
「……俺これから夜勤なんだけど」
そう、製鉄所は土日祝日も稼働しているので土日だろうが仕事はあるのだ。
幸か不幸か飯はまだ食ってないので今から作って食べた後に仕事に行けばいいのだが、この二人が素直に帰るとは思えない。
「留守番してるから君津の仕事終わったら三人で飲もーよ!」
「いや帰れよ……」
最近は夜勤明けに飲み明かす体力がないし、やんちゃという概念の擬人化のような鹿島と千葉がこの家で大人しく留守番してるとは思えない。
「君津、この間リングフィットアドベンチャーやりたいって言ってたよね?」
千葉が出してきたのはニンテンドーswitchとリングフィットのセットだ。
「京浜さんが最近太ってきた気がするって言うから色々探してたら2つ入手できたんだよねー」
「……スマブラとスプラトゥーン入れといてくれるなら泊ってもいいぞ」
鹿島のほうを向くとしょうがないなーと苦笑いしたので、これは了承ととっていいだろう。
とりあえずカボチャを受け取り二人を家にあげると、俺はさっそくこの箱いっぱいのカボチャを料理することにした。
段ボールのなかを確認してみると、色んなサイズのカボチャ以外に固まり肉やサツマイモにキノコなども入っているようだ。
手持ちの食材と組み合わせて何とかすることにしよう。
まずは小さめのカボチャはレンジで、大きいのは扱いやすいサイズに切って鍋で蒸しあげる。
キノコやサツマイモも適当なサイズにざくざくと切って下ごしらえ。
「あ、君津この赤ワイン飲んでいいー?」
「良いけどそれあんまり旨くねえぞ」
「不味い酒も割ればそれなりに美味しくなるんだよ」
鹿島が酒を勝手に飲もうとし始めるので酒のつまみを先に用意したほうがいいようだ。
蒸しあがった小さいカボチャから中身をくりぬいて種を取り、スライサーで人参ときゅうりを細切りにして、カボチャの中身とスライスした野菜に少量のマヨネーズと黒コショウをかけてざくざくと混ぜ合わせる。
そういやこの間買ったクラッカーとチーズも少し残ってたはずなのでこれも一緒に出しておこう。
「ほれ、つまみ無いと悪酔いするぞ」
「ありがとー、後このカボチャに顔書いていい?」
「勝手にどーぞ」
「ペンとカッター借りるねー」
カクテルを片手にカボチャに顔を書き始めた鹿島と千葉を横目に二品目にかかる。
鍋で蒸したかぼちゃをミキサーでペーストにして、半分は小麦粉としっかり混ぜておく。
「千葉、ちょっと手が空いてんなら手伝え」
「なにー?」
「このかぼちゃの生地を1センチぐらいの玉にしてフォークでギザギザ付けといてくれ」
「はーい、鹿島も終わったら手伝えよー」
残り半分は玉ねぎやコンソメ・牛乳を入れてトロリとするまでミキサーにかける。あとはこれをレンジで温めればかぼちゃのポタージュだ。
サツマイモは半分を素揚げにして砂糖と味噌で合わせて塩気の強い大学芋、残り半分はレンジで蒸しあげて荒めにつぶした後に小麦粉・卵・牛乳と合わせて炊飯器で焼き上げればサツマイモのケーキに。
そして最後はキノコと豚肉。これは一緒に炒め合わせてジェノベーゼソースと混ぜる。これをかぼちゃのニョッキと合わせれば食べ応えのある食事になる。
(……なんか炭水化物多い気がすんなこれ)
しかしこれはもうしょうがない。
冷蔵庫に入ってたレタスをざくざくと荒めにちぎってグリーンサラダも足しておこう。
酒を片手に部屋をハロウィン仕様にしていた鹿島が満足げに俺のほうを見る。
二人の分もあるよーとカリモーチョのグラスの淵に赤いシロップを塗って千葉に差し出してくる。
「あ、君津はこれから仕事だしザクロシロップのサイダー割りね」
「うちにザクロシロップなんてあったかね……」
「なんか漁ってたら未開封のがあったよ?」
そうこう言ってると千葉がさっそくスマホのカメラを立ち上げて写真の準備を始める。
「じゃ、ハロウィンだしチーズの代わりにあれね!せーの!」



「「「ハッピーハロウィン!」」」

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グッドデザインな広畑さんの日

「祝:FeLuce2020年グッドデザイン賞取得!ってことでケーキ持ってきました」
「ワインとジュースもあるよー」
久しぶりに遊びに来てくれた呉と周南は、ワンホールのケーキを手にうちにやってきた。
「……俺グッドデザイン取ったの?」
とりあえず立ち話も難だからと 二人をうちに迎え入れると「連絡来てません?」と聞いてくる。
「ごめん、俺今日ずっと寝てたから」
「広畑はマイペースだねえ」
周南が笑いながら机にケーキを並べ、ワインを注いでくれる。
そういえば候補になったと聞かされた気はするが本当に取ったのかまでは聞いていない。
「せっかくだしマスカットのケーキにしたんだけど、マスカット好き?」
嫌いではないのでこくりと頷くと良かったと呟いてカメラを設置しだす。
「どこかに繋ぐの?」
「瀬戸内のみんな」
あんまり大人数で集まるのもねーと言いながら瀬戸内製鉄所の面々をネット電話で呼び出すと、画面に次々と瀬戸内製鉄所のメンツが現れてくる。
元日新製鋼の面々はこの春の合併で一緒に仕事するようになったばかりで、呉と周南以外はまだそこまで親しくはないがせっかくの祝い事だと妙に乗り気なように見えた。
「次屋、桜島、聞こえる?」
『聞こえている』
『こっちも大丈夫だよー』
瀬戸内組全員がオンラインで集まると、その手には思い思いの酒が並ぶ。
俺も呉に渡された祝い酒のワインを持たされるとまだ見慣れぬ瀬戸内製鉄所の面々の視線や声が飛んでくる。
「広畑、せっかくだし乾杯の音頭とってよ」
「えっ……」
「今日の主役ですから」
呉がにこやかにそういうので結局俺はあらがえず、その酒を手に即興であいさつすることになった。

「俺は旧日新製鋼の皆さんから、めっき鋼板についていろんなことを教わりました。今回のグッドデザイン賞受賞は瀬戸内製鉄所全員の力です。本当にありがとうございました。
そして、これからもどうぞよろしく。」

乾杯と画面にグラスを向けると、横にいた呉と周南がグラスを合わせてくれる。
グラスには十五夜の満月が氷のようにまるく落ちている。
『月見酒であり祝い酒、だな』
画面越しに桜島が呟くと次屋が『祝い事が多くていいですね』と笑う。
少しはこの面々に溶け込めているだろうか。
そう思いながら甘口のワインをくいっとあおった。



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広畑と旧日新製鋼組。

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ビジネスカジュアルにも程がある

9月に入っても未だ残暑厳しいこの頃、まだまだ暑さはしんどい。
神戸に来るのはコロナによる県またぎ移動の規制前だから半年以上来ていないことになる。
パソコンの前での話し合いが多かったから実際に会うのはかなり久しぶりになる。
「此花!」
「……神戸、おまえ何その浴衣」
手を振る神戸は花火大会にいそうな白と藍色の浴衣に日傘を指している。
立ってるのが会社の看板の横でなければ、どう考えても花火大会に行く女性である。
「今度うちの会社で服装規定の自由化が決まったから私も自由な服装しようと思って」
「だとしてもそれで浴衣?」
「だって涼しいじゃない、今は浴衣も晴れ着だしね」
明治の頃は浴衣というと寝間着だったが最近は夏のイベントごとに着るものになった。
確かに理屈としてはあってる気がするが色々問題がある気がする。
「……社内はいいけど八幡あたり『舐めてます?』ってキレられると思うから社外はやめとけよ」
「そうねえ」
八幡のガチギレスマイルが想像できたのか苦笑いをしつつ本社へと迎え入れる。
「でも浴衣出社は快適だからもっと涼しくなるまでこうしようかと思って」
「せやな」
もう何もいうまいと思いながら本社の冷房をぼんやり浴びるのだった。




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此花と神戸

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もしもは幾らも言えるだろう

「ああ、今日はあの玉音放送の日でしたか」
八幡さんはポツリとカレンダーを見て呟いた。
いつもこの人は終戦記念日を『あの玉音放送の日』と呼ぶ。
終戦・敗戦と呼ばないのはこのひとの持つささやかな抵抗であることを、私は知っている。
「そうですよ、この頃はバタついててすっかり忘れていましたが」
「仕事による多忙はいいですけど病気だ不景気だのによる多忙はろくなもんじゃないですね」
冷たい麦茶を飲みながら酷暑で火照る体を冷まし、壁に架けられたカレンダーを見ながら私たちはしばし黙した。
私たちはあの焼け跡になったこの町の景色をを覚えている、そしてそこから立ち直った人々のこともはっきり覚えている。
今はもう記憶する者も少なくなった日々の記憶は薄まる事なく残されている。
「もしも、もしもですよ?もう少し耐え忍ぶ事が出来たのなら私たちは屈辱もなく生き延びられたと思いませんか」
「……それ、いつもおっしゃいますよね」
「そうでなければ私のあの努力の日々どころか、釜石や室蘭の負った傷までも無意味だった事になるじゃありませんか」
現代的倫理観に照らせばアウトな発言だが、どうせ私以外に聞く者のない言葉だ。私の胸の内にしまい込めばいい。
「でも、もうあれから70年以上過ぎたんですよ」
「許せと?」
「もう時効です、あの日々に関わった人はほとんど死んだんです」
私たちにとっての70年と人間にとっての70年には雲泥の差がある。
その事実から逃げるように八幡さんは恨み言を吐く。当事者を密かに呪う。
私は八幡さんの怒りと呪いを永遠に鎮める事が出来ないと分かっているので、ただその言葉を受け止めるのみなのだ。



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戸畑と八幡の終戦記念日。

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